BBCが解説記事を載せていた。「香港デモ:中国本土ではどう報じられている?」 香港デモのネット検索をブロックしたり、虚偽報告を重ねる中国政府には明るい未来があるようには思えない。
2025製造世界1に向けてチャクチャク進展している中国だが、それは実現されるだろうが、その先は中国が技術の先端を開発して行かねばならないが、そのためには自由闊達な意見交換を支えなければ最先端技術が生まれるわけはない。
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犯罪容疑者の中国本土引渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案への抗議が開始して以降、香港は国際社会からの注目を集めている。一方で、中国本土では、抗議デモに関するニュースが取り上げられるまでにはしばらく時間がかかった。さらに、国民に伝えられる内容は厳選されており、時には誤解を招くものとなっている。
中国国営メディアは、デモ参加者について、国外の政権によって企てられたもので、地元の人々から嫌われている、分離主義者による小規模で暴力的な集団にすぎないとはねつけている。
ここ数日の間、国営メディアは、香港の空港で参加者に殴られた本土のジャーナリストを英雄に仕立て上げるなど、最も暴力的な衝突の瞬間の映像を集中的に報じている。
中国本土で、どのような報道が展開されているかを、以下にまとめた。
規制された報道
中国語で「香港」をググると、最初の検索結果には、BBCやニューヨーク・タイムズなどの西側メディアや、国営の中国中央テレビ(CCTV)による報道に関連した、「香港デモ」が表示される。
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しかし、中国国内でのグーグルへのアクセスはブロックされている。
当局によるフィルターがかけられた、国内で最も利用されている検索エンジン「百度(バイドゥ)」で検索してみると、「香港発着便が通常運行を再開」や「香港で最近何が起きているのか」といった結果が表示される。
こうした検索結果が、国外勢力が内政干渉すべきではないとの駐英中国大使の発言や、デモ参加者の座り込みによる空港の麻痺で生じた損失へとつながった。
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6月9日に初めて抗議行動が勃発した際には、中国政府によって厳しく規制されている国営メディアは、政府支持者らによる集会や、「国外政権による干渉」を非難する報道を除き、沈黙を続けた。
国家主義的な中国紙・環球時報(グローバル・タイムス)のある見出しは、「香港の保護者らが、米国の干渉に抗議する行進を行なった」となっていた。
7月1日夜に、デモ参加者が立法会(議会)の庁舎内に突入し、占拠すると、国営メディアがデモについて初めて報じた。
国営・新華社通信は、香港にある中国政府の出先機関「香港連絡弁公室」の発言を引用し、「衝撃的で、悲惨で腹立たしい大量破壊をもたらした、不法行為」を批判した。
7月29日に、香港連絡弁公室がデモ参加者によって包囲されたことを受け、国営メディアは再びデモについて報じた。
中国政府は表向きには、衝突や暴徒、暴動といった言葉を用いて、暴力行為を強調し、本土の人々の怒りをあおっている。
この1週間では、デモ参加者が火炎瓶を投げつけ、警察官にけがを負わせたことばかりが報じられている。
香港メディアが大いに注目しているのは、今月11日の警察との衝突で、目から出血した女性抗議者のことだ。
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11日のデモでは、デモ参加者と警察、双方が物を投げていたため、女性の目の負傷がどちら側の行為によるものなのかは不明だ。
デモ参加者が警察を非難する一方で、CCTVは12日、女性のけがは他の抗議者によるものだと、厳しい論調で報じた。さらに、紙幣を数える女性の写真を公開。この女性は負傷した女性と同一人物で、金で雇われた工作員だと伝えた。
国営メディアは、深セン市の近隣に集った武装警察の映像や、国務院香港マカオ事務弁公室(HKMAO)による、デモ行為は「テロ」の基礎を構築したとの警告を拡散した。
これは、武装警察を含む、中国政府による弾圧の可能性を念頭に、国民へ心構えをさせるためのものだとの声が一部で上がっている。
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13日のデモ参加者による香港国際空港での座り込みでは、中国本土からの2人が縛られ、殴られるなど、異例の混乱を招いた。
このうちの1人、グローバル・タイムスの付国豪記者は、「香港警察を支持する」と叫んだ。この記者は、本土では「英雄」とされている。
オンライン上に掲載されたあるコメントは、1989年の天安門事件の際、中国共産党が「冷酷な支配」を用いて、どのように抗議者を排除したのか、警察はそこから学ぶべきだと述べた。当時、天安門広場に戦車や軍隊が投入され、数百人の抗議者が死亡した。
国営メディアはさらに、とりわけアメリカやイギリスからの、「国外からの干渉」を主張する政府の立場を報じているが、証拠は示されていない。
香港デモ関連の投稿が削除
中国には、チャットアプリ「微信(ウィーチャット)」や中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」などで活動する、個人ブロガーが大勢いる。こうしたブロガーの意見は、微妙な問題に関するものの場合は、限られた人にしか届かない。そして、数時間以内に、投稿が削除される可能性もある。
先週、微信上のある投稿が、一時的に拡散された。この投稿は、香港デモの詳細な時系列や、なぜこの問題が勃発したのかという歴史的背景など、国営メディアが避けてきた内容に触れていた。
この投稿は、中国の大規模な検閲システムにより、数時間後には削除された。
本土の人々は抗議をどう思っているのか
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中国国内でのオンライン上の閲覧を規制する「グレート・ファイアウォール」(万里の長城「グレート・ウォール」をもじったもの)を潜り抜ける方法は存在する。若い世代は、VPN(仮想プライベートネットワーク)を使い、外部からニュースを得ている。こうして手に入れた情報から、本土の人々は何を思うのだろうか。
本土の若者の1人は、国内と国外のニュースを読んでいるにも関わらず、同情はしていないという。こうした騒動の背景には、政治ではなく経済的理由があると主張した。
「香港の急成長期はとっくに過ぎ、若者は社会的地位を向上させる方法を見つけられずにいる。高い住宅費やうだるように暑い気候、隣人である本土がどんどん裕福になっていく環境に苦しんでいる」
本土に住む別の人物は、「香港の若者は本土の人々を見下している。それと同時に、私たちのことを恐れている。私たちに追い越されたくないからだ」と述べた。
さらに、自分たちにとって香港は大して重要ではないため、香港のデモについて、友人と話すことはほとんどないという。
「抗議行動が北京や上海で起きるとしたら、もっと心配になるだろう」
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これは、何世代にもわたって経済成長はほかの懸念事項を上回ると教えられてきた本土の人々の、極めて典型的な考え方だ。
「役に立たない若者」という言い回しを使う者もいる。この言い回しは、2014年の香港反政府デモの際、批判すること以外では社会に貢献していない抗議者を軽蔑する呼び名として誕生した。
別の本土の住民は、BBCに対し、この呼び名は誤解によって誕生したと感じているという。香港の若者は自分たちの夢を持っている、中国と香港の間でもっとオープンな対話を持つべきだと述べた。
香港在住の本土出身者は
現在香港で暮らす本土出身の人々は、どう考えているのだろうか。
多くは、抗議者への支持を表明している。香港で10年以上暮らす男性は、6月9日のデモに参加し、デモに関する国際的な広告キャンペーンのためのクラウドファンディングに寄付をしたという。
しかし、この男性は、一部の抗議者によるもっと過激で暴力的な行為は、好まないという。男性は、報道内容が偏っている可能性があることから、香港メディアに対して批判的だった。
香港で暮らす別の本土出身者は、「抗議者の不安や怒り、疑念」は理解できるとした一方で、「人々を暴行することは許されない。顔を殴られる側が犯罪者だとするならば、暴力行為によって、抗議者側も犯罪者になる」と述べた。