日経の調査によると「忍びよる米農業不況、米中摩擦が世界の農産物需給変える」として、ブラジルやロシアが農産物輸出の対象として中国を狙っていると言う。
しかし、多くの経済評論家が指摘していることは、中国は貿易収支が急激に悪化して、世界から今までの様に大量の食糧を買えなくなるという。また、多くの気象研究者が指摘しているのは、地球温暖化が、南極・北極・アルプスの永久氷河が溶け出しているし、海温上昇で大気温が急上昇しているなど、雪崩現象を起こして地上の70億人が維持できなるのではないかと言う。今や、如何に自己の命を維持するかを考える時期に来てしまったのではなかろうか?
トランプ支持が揺れてきた(大豆畑の土壌をチェックするイリノイ州農家のロン・ムーアさん)
米中貿易摩擦の激化がトランプ米大統領の票田である米農家を崖っぷちに追い込んでいる。関税への対抗措置として米農産物の輸入停止を決めた中国にはブラジルやロシアなどの農業大国が接近し、供給の拡大を通して商品価格に下押し圧力をかける。終わりの見えない米中の経済戦争は世界の農産物需給を揺さぶり、トランプ氏の2020年大統領選の戦略にも影を落としている。
12日、シカゴ。午前11時に米農務省が8月の穀物需給を発表すると、トウモロコシが値幅制限いっぱいまで急落した。同省の調査では米中西部を襲った洪水の被害が市場の見立てより軽く、生産量は前月比で引き上げられた。市場は減産を見込んでいただけに虚を突かれた格好。価格は5月中旬以来の安値をつけ、3カ月ほどかけてじりじりと上昇してきた上げ幅を瞬時に吹き飛ばした。
米農家を直撃しているのは相場下落だけではない。米国は中国に2016年に214億ドル(約2兆2500億円)の農産物を輸出したが、米中対立の激化を受けて18年にはこれが91億ドルに半減。追加関税を計画するトランプ氏に報復するため、中国は最近、米農産物の輸入停止に動いた。農産物は政争の具となり、長い時間をかけて中国市場を開拓してきた米農家の努力を水の泡にした。
戸惑う米農家の間隙を縫うかのように中国市場の開拓に動くのがブラジルやロシアなどの農業大国だ。すでに大豆の輸出実績で米国を抜いたブラジルは農産物の増産にまい進する。「来年にはトウモロコシの輸出も米国を抜く」とシカゴの穀物調査会社アグリソースのダン・バッシ氏は語る。
小麦輸出で世界一のロシアも機を逃すなといわんばかりに中国にすり寄る。背景にあるのは輸出の柱の一つである穀物産業を拡大する思惑だ。35年までに700億ドルを投じて大規模増産体制を整えようとしている。
一方の中国も農産物の調達先多様化を通して米国依存の是正を急ぐ。米農務省の「中国の海外農業投資」によると、16年には1300を超える中国企業が計260億ドルを投じた。その対象は100カ国に及ぶ。様々な国が中国の巨大な胃袋をあてにして増産に動いている格好だ。米中対立の激化はこのチャンスを広げるが、同時に増産基調は国際商品価格に長期的な下押し圧力もかけている。
「近隣農家の半数は破綻するかもしれない」。暗い表情でこう語るのはイリノイ州農家ジェームス・マキューンさん(55)だ。商品価格の下落に加えて、米農家は自然災害にも見舞われている。襲っているのは前代未聞の洪水。農地が水に沈み、作付けを諦めた農家は少なくない。農機具購入の返済に窮する人が相次ぐ可能性がある。
米中対立の激化や自然災害を踏まえてトランプ大統領は農家支援策を打ち出した。18年には120億ドル、今年5月には160億ドルの救済策を発表し、来年に再び策を講じることも匂わせている。もっとも、支援金は助けにはなるが十分ではない。損失を100%補償するものではないためだ。
振り返ると、農産物が政争の具に使われる度に、米農家は穀物輸出の世界シェア低下を余儀なくされてきた。1973年のニクソン米大統領による大豆の禁輸措置は、大豆輸入の9割を米国に依存していた日本に調達先のシフトを迫った。当時、ドアをたたいた先はブラジル。日本の巨額投資はブラジルが世界最大の大豆生産国にのし上がる素地を作った。80年のカーター米大統領によるロシアへの小麦禁輸措置も、多くの米農家の倒産と農業大不況を招いている。
そして今、農家は再び似たような苦境に直面している。米農務省によると、農家の資産に占める負債の割合は19年に13.86%と17年ぶりの水準に高まる見通しだ。負債を返済できず破綻するリスクは拡大傾向にある。「農家の財政は確実に悪化している」と米農務省のエコノミスト、キャリー・リトコウスキー氏は言う。トウモロコシ相場の急落を受け、12日の米株式市場では農機世界最大手、米ディアの株価も5%下落した。
トランプ信者の多い農家は来秋の大統領選で再選を目指す現大統領にとって重要な票田だ。だが、厳しい環境に直面する一部の農家には心変わりする向きもみられる。「次期大統領選びは民主党候補の農業政策を見極めてから決める」。前回の大統領選ではトランプ支持者だったイリノイ州の農家、ロン・ムーアさんはこう語る。
愛国心からトランプ氏の対中強硬政策を支持してきた農家だが、我慢の限界が近づいている。