日経のIT誌、XTECHによると、アリババクラウド、アジア太平洋地域では、シェアー1位になったと言う。SynergyResearchGroupの市場調査でも、アリババのみならず、テンセントも市場シェア10位以内に入っている。いったい、日本のIT 企業、どうしたのだろうか?後進国入りは秒読みではないか!
以下、XTECHの記事:::::::::::
中国アリババクラウド(Alibaba Cloud)がアジア市場で攻勢を強めている。サービスを提供するデータセンターを、中国を中心にマレーシア、インドネシア、日本、インドなどへ拡大。米ガートナー(Gartner)の調査によれば、アジア太平洋地域に限って見ると、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)や米マイクロソフト(Microsoft)を抑え、アリババクラウドはIaaSおよびIUS(インフラストラクチャー・ユーティリティー・サービス)分野で2017年、18年と2年連続で市場シェア1位を取っている。
アリババクラウドの特徴の1つが、独自に構築したAI(人工知能)プラットフォームだ。その上では、ECサイト「淘宝(Taobao)」や物流サービス「菜鳥網絡(Cainiao)」などアリババグループの各種サービスが稼働している。そうしたサービスから得た大量のデータをAIで分析し、各種サービスを改善すると同時に、AIプラットフォームも強化する。このエコシステムの存在がアリババクラウドの強みである。
アリババクラウドに集めるデータは増えるばかりだ。増え続ける大量のデータを高速に分析するにはコンピューティングパワーも継続的に高める必要がある。
中国浙江省杭州市で2019年9月25日から3日間にわたって開催された、アリババクラウドの年次イベント「Apsara Conference(雲栖大会) 2019」では、同社にとって第6世代となる仮想マシンサービス「Elastic Compute Service(ECS)」を発表した。アーキテクチャーの見直しなどによって処理性能を向上させた。
Apsara Conference 2019の展示会場の様子
(出所:アリババクラウド)
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イベントの基調講演では新旧のECSでオープンソースのリレーショナルデータベースソフト「MySQL」を動作させたベンチマーク結果を紹介し、第6世代の性能をアピールした。第6世代は第5世代に比べてCPUパワーを20%向上、メモリーの遅延時間を30%削減、ストレージI/Oの遅延時間を70%削減したとみられる。
同社は第6世代のECSを、合わせて発表した第3世代のクラウド基盤「X-Dragon Architecture」に基づいて開発した。ECSをはじめとしてベアメタル(OSや仮想化ミドルウエアなどを導入していない物理サーバーのクラウドサービス)やコンテナといったアリババクラウドのコンピューティングサービスを今後この新アーキテクチャーに移行していくという。
アリババクラウドの今後の展開はどうか。
中国国内のIaaS市場でアリババクラウドは40%以上のシェアを持っているとみられる。ダントツの1位だ。同社は2019年3月の自社イベントで、中国国内のIaaS市場のリーダーであり、2位から8位のクラウド事業者の合計よりも大きなシェアを持っていると発表している。
今回のApsara Conference 2019では、アリババクラウドのさらなるシェア拡大を狙った新製品の一般提供を開始した。データベースソフトの「POLARDB」とハードウエアを一体にしたアプライアンス「POLARDB Box」だ。当初は中国国内向けに販売する。
独自データベースのアプライアンス製品「POLARDB Box」
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POLARDBはアリババクラウドの特性に合わせて独自に開発したリレーショナルデータベースソフトである。同ソフトとサーバー、ストレージをPOLARDB Boxに一体にして提供する。顧客は同製品を購入しオンプレミス(自社所有)環境などに設置して利用する。
アプライアンスの最小構成はサーバー3台(合計で288vCPU、2.25テラバイトのメモリー)、ストレージ1台(9.86テラバイトのSSD)。最大構成はサーバー12台(合計で1152vCPU、9テラバイトのメモリー)、ストレージ3台(同118.33テラバイトのSSD)だ。
中国とアジアに軸足
アリババグループは2036年までに世界で20億人のユーザーと1000万社の顧客企業を獲得する目標を掲げている。アリババクラウドのグローバル展開もかなり進んできた。世界20の地域に61のアベイラビリティーゾーン(独立性の高いデータセンター群)を設置。カバーするエリアは中国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、日本、オーストラリア、インド、中東、欧州(イギリス、ドイツ)、米国(東西海岸)に及んでいる。
ただしライバルのAWSやマイクロソフトのような世界全域への事業展開は現在のところ考えていないという。まずは中国国内のローカルマーケットとアジアに軸足を置きビジネスを広げていく計画だ。
アリババクラウドの日本向けサービスの販売やサポートは日本のSBクラウドが担う。SBクラウドはアリババグループとソフトバンクの共同出資により2016年に設立された。
日本には2つのアベイラビリティーゾーンで構成される東京リージョンを設けている。アリババクラウド全体では200程度のサービスがあるが、東京リージョンで提供しているのは3分の1に当たる60程度にとどまっているという。
これまで日本企業は「中国に事業展開する際に中国のリージョンにシステムを配置したり、中国から日本のシステムに安全にアクセスできるようにしたりするためにアリババクラウドを利用するケースが多かった」(SBクラウドの阿部真人マーケティング企画課広報担当)。アリババクラウドのコンソール画面で5分ほど操作するだけで、日中間をつなぐネットワークインフラを構築できるという。
阿部広報担当は「今後は日中をつなぐ案件だけでなく日本国内で完結する案件を増やしたい」と話す。ターゲットとする顧客は小売業やECサイト運営業者、ゲーム事業者などだ。
一例がニトリの商品画像検索システムである。ニトリはアリババクラウドのECサイト向け画像検索サービス「Image Search」を活用し、ユーザーがスマートフォンで撮影した写真から同一または類似の商品を検索するサービスを開発する。2019年秋に刷新する「ニトリ公式スマートフォンアプリ」(iOS版、Android版)で使えるようにする予定だ。
アリババグループはImage Searchを以前から淘宝や天猫(Tmall)で使っており、継続的に機能を強化してきた。例えば出店者などが商品画像データをImage Searchに登録すると、自動で商品識別タグが付与される。
日本企業はアリババクラウドの活用を検討する際、重要なデータを預ける使い方に心理的な抵抗を感じるかもしれない。一方でImage SearchのようなAIを中心とする先進サービスには魅力がある。アリババクラウドにとってこうした先進サービスは日本で販売を拡大する突破口になるだろう。