興味深い数字が公表された。日本の言論NPOと中国国際出版集団が8~9月に日中の両国民を対象に実施した共同世論調査だ。
日本に「良い」印象を持つ中国人は「どちらかといえば」を合わせて42.2%。05年の調査開始以来、最高となった。
一方、中国に対する印象が「良い」と答えた日本人は「どちらかといえば」を合わせて13.1%。「良くない」という人は「どちらかといえば」を合わせて86.3%に上る。
調査結果はある意味、日本人のクールな処世術を物語っている。中国は世界第2位のGDPを誇る大国になったが、覇権主義的な振る舞いをする指導者と観光客のマナーが日本で反感を買っている。訪日客が急増していた数年前には東京・銀座を闊歩しながら唾を吐き、植え込みに排泄する姿が話題になった。
ニューズウィークが、安倍首相の訪日の機に、日本の対中政策を論じていた。
日本人は中国人民ならともかく、人民元を熱烈歓迎し続けている。中国の指導者が愛用する「もっと文明的な行動を取るように」といった言い回しで、安倍首相は習近平(シー・チンピン)国家主席に要請してくれないか、と訪中に期待する日本人もいるかもしれない。
「安倍首相はもっと戦略的な話を中国政府とするだろう」と夢を抱く人々もいるはずだ。ウイグル人を弾圧し、100万人規模で「再教育センター」と称する強制収容所に送り込むなどの蛮行を中止するよう人権外交を進めてほしい、と願う人も大勢いる。
実際はどちらも期待薄だ。日本の経済界を代表する経団連は親中派で固まっており、銀座で金を落としてもらうだけでは満足しない。9月12日、中西宏明会長率いる経団連と日中経済協会、日本商工会議所の合同訪中団は、中国の首都北京で李克強(リー・コーチアン)首相と会談。自由貿易の堅持が必要との認識で一致したという。
会談の冒頭、深々と頭を下げる日本の財界人と無表情の李首相との会見の様子は皇帝に謁見する前近代的な「朝貢使節」のようだった。それにも懲りず、10月10日にも中西会長は福田康夫元首相と北京を再訪して李首相と会談した。
経団連と日中経済協会は中国が推進する「一帯一路」巨大経済圏構想に乗って、ユーラシアからアフリカまで世界を席巻しようとの空論を信じているのだろうか。
経営者たちはいまだに、欧米から「エコノミック・アニマル」と揶揄された頃の野心に突き動かされているかのようだ。
今回の安倍訪中も財界に突き動かされた感じは否めない。日本が第二次大戦後に構築してきた民主主義の理念を独裁国家に伝授することなく、ひたすら金儲けの話に終始しそうだ。
日米の分断を狙う習政権
そもそも習近平が主導する一帯一路は世界各地で拒否されるようになっており、日本は中国のジュニアパートナーとして道連れにされるだろう。中国は、日本が今まで築き上げてきた信用を利用して、「日中合作」という仮面をかぶって中国のプロジェクトを展開したいだけだ。
確かにアメリカの対中貿易政策で相当な影響があるであろうから、中国政府も大きな政策変更に迫られているであろう。