第88回国展を六本木の国立新美術館で見た。
今年はたまたま初日に行けたので、工芸の講評会を途中からだが見れた。それも「織」のグループについて行けたのでラッキーだった。
表彰式が14時からなので、時間が従来より少し繰り上がって12時ごろにスタートするそうだ。およそ30-40人くらいのツアーだがほぼ全員女性だった。向こうの方を歩いている木工のグループはほぼ全員男性なので対照的である。
まず作家本人が作品について短いスピーチを行い、講評者が少しコメントするかたちで進行する。作家は、たとえば素材が麻か木綿かウールか絹かといったことや、モチーフの説明(たとえば秋の落ち葉、桜、孔雀の動きなど)、苦心した点、工夫した点、従来の作風との違いなどを2-3分語る。
なかには、計算違いがありこうなったと裏話をする人もいる。
だれが参加しているかその場にならないとわからない。「○○さん、いらしてますか?」と声がとぶ。審査をしているので名前や作風はわかっていても、顔はわからない人が多いようだった。
講評は主として寺村祐子さんと祝嶺恭子さんがなさった。とくに沖縄の祝嶺さんのコメントの印象が強いので少し紹介する。
「帯を活かす」「着る人を生かす」ということを考えたほうがよい。
「着物には用途というものがある。『どこに行くとき着る服か』『お母さんのプレゼントにする服』などと意識してつくるとよい」
講評の総まとめの言葉だったが「『先生がいうことが昨年と今年で違う。私はいったいどうすればよいのか』という人がいる。しかしまずは自分だ。自信や誇りをもてば作品そのものに力が出てくる。作品がものをいう」。たしかにもっともな話だ。
その他、「この作品をみて、こういうピンクを使う人はきっと若い人だと思った。わたしのように年をとるととても使えない」「こういうふうに横の線を一直線にそろえることはとても自分にはできない。もしかするとA型ですか? やっぱり。わたしはO型だから」など、率直な人柄がにじみ出て、ときにはギャラリーの笑いを誘った。
話のなかには、平織と綾織の組合せ、染料の原料がインド茜か西洋茜か、糸の染め方、絣(かすり)など技法に関する専門的なトピックスも混ざり、その部分はほとんどわからなかった。しかしいろんな苦心があるということは、自分にもなんとなく伝わった。
自作を前に解説する祝嶺恭子さん
作家も、あまり人前でしゃべることに慣れていないのでドキドキしながら話していることがよくわかる。一方先生のほうも、そんなに慣れているわけではないので、だんだん調子が上がっていく様子がよくわかった。
ちょっと意外な話としては、小幅のほうが広幅より入賞率が低く厳しいと聞いた。
またアーティストやクリエイターの方々の集団なので、和服の人はもちろん洋服の人も色のアンサンブル、服のスタイル、靴やバッグ、ショールなどとのコーディネイトなどながめていて楽しい。
私は途中から参加したが、それでも2時間弱かかり結構疲れてしまった。
そのあとも3-4人のグループになり、講評しあっている人もいた。若い人に親切にアドバイスしている人もいた。
小島秀子さんの「Morning mist」
作品としては、今年もルバース・ミヤヒラ吟子さんや小島秀子さん、村江菊絵さんの作品がわたしは好きだった。
なお今年も残念ながら、人間国宝・宮平初子さんの作品は出品されていなかった。
写真、彫刻、絵画、彫刻も駆け足でながめた。工芸だけで2時間半かかったので本当に駆け足だった。
絵画では、女性の顔を30ほど並べた稲垣考二「ひな壇」のインパクトが強かった。顔はほどんど同じ、つまり同一人物。髪型もロングでほぼ同じ、服も3種類だけ。こういう作品もなかなか力強かった。
国展とは関係ないが、兵庫県立美術館でコレクション展「ノアの方舟」をみた。澤田知子「ポートレイト」は街なかのスピード写真で撮った写真(4点で1組)を材料に、10列10行つまり400点並べた作品だった。これはすべて自分の顔なのだが、迫力があった。
絵画は結構その年の時代の特色が出るのだが、昨年や一昨年のような原発関連のものや社会的な作品は少ないようだった。よくいえば平和な時代の作品である。
☆「ノアの方舟」で、森村泰昌「なにものかへのレクイエム(独裁者はどこにいる2)」をみた。もちろん森村氏がヒトラーのポーズをとっている作品だが、窓の外には高層ビルがそびえているので、まるで安倍晋三が自民党総裁室で「最高責任者は私だ」と気勢を上げているようにみえた。2007年の作品ということだが、この年の9月安倍は「お腹が痛い」といって辞任した。今回はいつごろ「独裁者」の椅子を下りてくれるのだろうか。
☆本筋とは離れるが6月15日(木)夕方官邸前に行った。ちょうど安倍首相が「解釈改憲」の記者会見をやっている時間である。空は、まるで憲法9条のお通夜であるかのようにどんよりしていた。数百人並んだ人々は「解釈改憲反対!」「戦争反対!」「安倍首相は憲法を守れ!」「安倍首相は死の商人をやめろ!」とシュプレヒコールの声を上げた。
今年はたまたま初日に行けたので、工芸の講評会を途中からだが見れた。それも「織」のグループについて行けたのでラッキーだった。
表彰式が14時からなので、時間が従来より少し繰り上がって12時ごろにスタートするそうだ。およそ30-40人くらいのツアーだがほぼ全員女性だった。向こうの方を歩いている木工のグループはほぼ全員男性なので対照的である。
まず作家本人が作品について短いスピーチを行い、講評者が少しコメントするかたちで進行する。作家は、たとえば素材が麻か木綿かウールか絹かといったことや、モチーフの説明(たとえば秋の落ち葉、桜、孔雀の動きなど)、苦心した点、工夫した点、従来の作風との違いなどを2-3分語る。
なかには、計算違いがありこうなったと裏話をする人もいる。
だれが参加しているかその場にならないとわからない。「○○さん、いらしてますか?」と声がとぶ。審査をしているので名前や作風はわかっていても、顔はわからない人が多いようだった。
講評は主として寺村祐子さんと祝嶺恭子さんがなさった。とくに沖縄の祝嶺さんのコメントの印象が強いので少し紹介する。
「帯を活かす」「着る人を生かす」ということを考えたほうがよい。
「着物には用途というものがある。『どこに行くとき着る服か』『お母さんのプレゼントにする服』などと意識してつくるとよい」
講評の総まとめの言葉だったが「『先生がいうことが昨年と今年で違う。私はいったいどうすればよいのか』という人がいる。しかしまずは自分だ。自信や誇りをもてば作品そのものに力が出てくる。作品がものをいう」。たしかにもっともな話だ。
その他、「この作品をみて、こういうピンクを使う人はきっと若い人だと思った。わたしのように年をとるととても使えない」「こういうふうに横の線を一直線にそろえることはとても自分にはできない。もしかするとA型ですか? やっぱり。わたしはO型だから」など、率直な人柄がにじみ出て、ときにはギャラリーの笑いを誘った。
話のなかには、平織と綾織の組合せ、染料の原料がインド茜か西洋茜か、糸の染め方、絣(かすり)など技法に関する専門的なトピックスも混ざり、その部分はほとんどわからなかった。しかしいろんな苦心があるということは、自分にもなんとなく伝わった。
自作を前に解説する祝嶺恭子さん
作家も、あまり人前でしゃべることに慣れていないのでドキドキしながら話していることがよくわかる。一方先生のほうも、そんなに慣れているわけではないので、だんだん調子が上がっていく様子がよくわかった。
ちょっと意外な話としては、小幅のほうが広幅より入賞率が低く厳しいと聞いた。
またアーティストやクリエイターの方々の集団なので、和服の人はもちろん洋服の人も色のアンサンブル、服のスタイル、靴やバッグ、ショールなどとのコーディネイトなどながめていて楽しい。
私は途中から参加したが、それでも2時間弱かかり結構疲れてしまった。
そのあとも3-4人のグループになり、講評しあっている人もいた。若い人に親切にアドバイスしている人もいた。
小島秀子さんの「Morning mist」
作品としては、今年もルバース・ミヤヒラ吟子さんや小島秀子さん、村江菊絵さんの作品がわたしは好きだった。
なお今年も残念ながら、人間国宝・宮平初子さんの作品は出品されていなかった。
写真、彫刻、絵画、彫刻も駆け足でながめた。工芸だけで2時間半かかったので本当に駆け足だった。
絵画では、女性の顔を30ほど並べた稲垣考二「ひな壇」のインパクトが強かった。顔はほどんど同じ、つまり同一人物。髪型もロングでほぼ同じ、服も3種類だけ。こういう作品もなかなか力強かった。
国展とは関係ないが、兵庫県立美術館でコレクション展「ノアの方舟」をみた。澤田知子「ポートレイト」は街なかのスピード写真で撮った写真(4点で1組)を材料に、10列10行つまり400点並べた作品だった。これはすべて自分の顔なのだが、迫力があった。
絵画は結構その年の時代の特色が出るのだが、昨年や一昨年のような原発関連のものや社会的な作品は少ないようだった。よくいえば平和な時代の作品である。
☆「ノアの方舟」で、森村泰昌「なにものかへのレクイエム(独裁者はどこにいる2)」をみた。もちろん森村氏がヒトラーのポーズをとっている作品だが、窓の外には高層ビルがそびえているので、まるで安倍晋三が自民党総裁室で「最高責任者は私だ」と気勢を上げているようにみえた。2007年の作品ということだが、この年の9月安倍は「お腹が痛い」といって辞任した。今回はいつごろ「独裁者」の椅子を下りてくれるのだろうか。
☆本筋とは離れるが6月15日(木)夕方官邸前に行った。ちょうど安倍首相が「解釈改憲」の記者会見をやっている時間である。空は、まるで憲法9条のお通夜であるかのようにどんよりしていた。数百人並んだ人々は「解釈改憲反対!」「戦争反対!」「安倍首相は憲法を守れ!」「安倍首相は死の商人をやめろ!」とシュプレヒコールの声を上げた。