勝鬨橋をわたり、晴海通りを少し東に進み交番を左折し橋を渡ると、もんじゃストリート(月島西仲通り商店街)の地図がある。図上だけでも50店以上のもんじゃ焼き屋があり、それ以外に清澄通りとのあいだの路地に結構店がある。ただしこの看板の先には左右に比較的新しいマンションがあり、すぐもんじゃ商店街が始まるわけではない。両側とも元は石井鐵工所の工場だったそうだ。左はいまも石井鐵工所の本社が入っている。そのブロックを越えると月島西仲通り四番街の看板がかかっている。北東から南西へ400mほどの商店街で一番街から四番街があり、岸田屋のある四番街は勝どきに近い南のほうである。
岸田屋の左隣には西仲通り商店街事務所・中央スタンプ月島支部事務所、右にはもんじゃ焼屋が4軒並んでいる。
この店に来るのは4回目、前回は2015年9月末の火曜だった。今回は月島在住の方に連れて行っていただいた。この店への来訪歴50年を超える大ベテランだ。
わたくしが初めて訪れたのは20年以上前だが、この店の存在は太田和彦「完本・居酒屋大全」(小学館文庫 1998年)で知っていた。他の居酒屋とは別格扱いで「究極の居酒屋」として、大阪・天王寺の明治屋、和歌山・白浜の長久酒場と並ぶ日本三大酒場として紹介されている。
「居酒屋料理のすべてがここにあるといってよい。平均価格は500円か」、「背後に築地市場という絶好の場所を得て、とにかく新鮮な魚を安く、モツは一にも二にも下ごしらえ」と、ベタ褒めである。鱈どうふ、まぐろかけじょうゆ、さらし鯨、はまつゆ、白魚玉子とじ、そして煮込みを紹介している。客のスタイルも描写されているが、店の人について「主人と奥さんは台所でけんめいに料理をつくり、我々が月島のジャンヌ・ダークとよぶようになった娘さんも必死でお運びしているが、なにせこの客の多さで(以下略)」と紹介されている。最後に小さい字で約70種の全メニューと価格まで記載されている。
5時の開店の時間には満席で、もしかすると入れなかった人もいたかもしれない。一度目に来たときは夏の7時過ぎで、やはりいっぱい、連れて来ていただいた門前仲町のA先輩としばらく外を散歩して店に入れるのを待った記憶がある。月曜の夕方でこんなものなので、連日似たような風景だと思う。一巡目に入れなければ、1時間は待つことになるだろう。
店内はコの字型のカウンター + 壁に向かったカウンターの3列になっている。席数は25-26か。客は意外に若いグループが多かった。
同行した方の話では、昭和20年代後半にはすでに店があったそうだ。
親父さん夫婦と息子夫婦でやっており、太田さんが「ジャンヌ・ダーク」と呼んでいるのは下の娘さんだそうだ。その後親父さんと息子が亡くなり、メニューから「まぐろかけじょうゆ」「赤貝さしみ」など生(なま)物がなくなった。そして「ジャンヌ・ダーク」の姉の子どもたちが手伝うようになったそうだ。もちろん家族でない従業員もいるが、基本は家族経営のようだ。
2回目に来たのは2010年12月で、たまたま隣に並んで待った客から「この店は店内で写真は撮れない」と聞いた。しかし今回聞いてみると、他の客が写っていなければかまわないとのことだった。なおその客は東京中の有名居酒屋に詳しく、赤羽の店を教えていただき、その後行くと、やはり開店時間から満席の店だった。
牛にこみと菊正宗のぬる燗
まず注文したのは、菊正宗のぬる燗と名物・牛にこみ(500円)。初めのお猪口の一杯目はじつにうまかった。
次に二階堂のお湯割りに切り替えて肉どうふ(680円)を食べた。ネギがとてもうまかった。2人でひとつ頼んだが、一人なら豆腐だけでも十分な量があった。
らっきょう(250円)は大粒で酢の味がしっかりしていた。竹の子煮(450円)は旬の時期は少し過ぎていたが、木の芽の香りがしておいしかった。お新香(350円)もおいしかった。肉や魚はもちろんうまいが、この店は野菜も意外においしいことがわかった。
また干しホタル(400円)というものを注文した。ホタルイカなら食べたことはあるが、いったいどんなものかと思った。考えるより実物をみて食べたほうが早い。アジの干物など干物のジャンルなのだが、なかなかうまかった。珍味といってよいだろう。
干しホタル、お新香、竹の子煮
太田さんにならって、全部ではないが、その他のメニューを紹介する。トマト300、もろきゅう300、くらげときゅうり450、そら豆400、ポテトサラダ 300、めかぶ350、ズワイガニ酢の物500、ぬた500、にこごり350、シラス沖漬400、辛子めんんたい450、もずく300、干ホタル400、クサヤ520、こまい生干し450、焼はま700、いかげそ焼450、いか焼450、竹の子煮450、れん草おひたし250、はまつゆ450、なめこ汁350、いわしつみれ吸物350など。たしかおにぎりもあった。
酒は、焼酎では麦が二階堂、いもは薩摩こく紫、日本酒は看板には新泉とあるがたしか菊正宗と松竹梅の2種類だったと思う。もちろん生ビール(中)650、瓶ビール大650などはある。
肉どうふ
料理も酒もうまく、店のスタッフなど店の雰囲気もよい。いい居酒屋の条件を備えている。何よりいいのは、いっしょに行った人と話がしやすくなる店であることだ。3回目に行ったときは、3人で訪れ、そのなかのBさんはわたしは初対面の方だったが大いに話がはずんだ。残る一人はじつは1回目に連れて行ってもらったA先輩で、その人の知合いだったが、半年ほどたったころにA先輩が突然亡くなった。そのことをまず伝えたのもたった一度しか会っていないBさんだった。また今回同行した人も、飲みに行くのは初めての方だったが、話が大いに盛り上がった。そういう店は最高だ。
7時半ころ店を出ると待っている人が8人いた。入ったときはシャッターを開けたばかりで外観をよく見なかったが、真ん中に大きく「酒」、左に「岸田屋」右に「大衆酒場」と、まさに決まっている。
☆太田和彦「完本・居酒屋大全」には店探しで大変お世話になった。このブログでも取り上げたことのある、虎の門・升本、甘酒横丁の笹新、秋葉原の赤津加、根岸の鍵屋、赤羽まるます家、三軒茶屋の味とめ、中野の第二力酒蔵、宇田川町・佐賀、築地の魚竹、などはこの本で知った。書いていないが、いい店では湯島のシンスケ、自由が丘の金田、道玄坂の芝浜、大塚の江戸一、門前仲町の魚三酒場、銀座の三州屋、千住の大はしにも、機会があればまた行って書いてみたい。ご主人がガンで亡くなった幡ヶ谷のたまははきなどもなつかしい。
太田さんの本は、ほかにも「居酒屋味酒覧」「東京 大人の居酒屋」など何冊か買って持っている。八重洲のふくべ、中目黒の藤八、自由が丘の銀魚など、たいてい書かれたとおりいい店なので、信頼している。
岸田屋の左隣には西仲通り商店街事務所・中央スタンプ月島支部事務所、右にはもんじゃ焼屋が4軒並んでいる。
この店に来るのは4回目、前回は2015年9月末の火曜だった。今回は月島在住の方に連れて行っていただいた。この店への来訪歴50年を超える大ベテランだ。
わたくしが初めて訪れたのは20年以上前だが、この店の存在は太田和彦「完本・居酒屋大全」(小学館文庫 1998年)で知っていた。他の居酒屋とは別格扱いで「究極の居酒屋」として、大阪・天王寺の明治屋、和歌山・白浜の長久酒場と並ぶ日本三大酒場として紹介されている。
「居酒屋料理のすべてがここにあるといってよい。平均価格は500円か」、「背後に築地市場という絶好の場所を得て、とにかく新鮮な魚を安く、モツは一にも二にも下ごしらえ」と、ベタ褒めである。鱈どうふ、まぐろかけじょうゆ、さらし鯨、はまつゆ、白魚玉子とじ、そして煮込みを紹介している。客のスタイルも描写されているが、店の人について「主人と奥さんは台所でけんめいに料理をつくり、我々が月島のジャンヌ・ダークとよぶようになった娘さんも必死でお運びしているが、なにせこの客の多さで(以下略)」と紹介されている。最後に小さい字で約70種の全メニューと価格まで記載されている。
5時の開店の時間には満席で、もしかすると入れなかった人もいたかもしれない。一度目に来たときは夏の7時過ぎで、やはりいっぱい、連れて来ていただいた門前仲町のA先輩としばらく外を散歩して店に入れるのを待った記憶がある。月曜の夕方でこんなものなので、連日似たような風景だと思う。一巡目に入れなければ、1時間は待つことになるだろう。
店内はコの字型のカウンター + 壁に向かったカウンターの3列になっている。席数は25-26か。客は意外に若いグループが多かった。
同行した方の話では、昭和20年代後半にはすでに店があったそうだ。
親父さん夫婦と息子夫婦でやっており、太田さんが「ジャンヌ・ダーク」と呼んでいるのは下の娘さんだそうだ。その後親父さんと息子が亡くなり、メニューから「まぐろかけじょうゆ」「赤貝さしみ」など生(なま)物がなくなった。そして「ジャンヌ・ダーク」の姉の子どもたちが手伝うようになったそうだ。もちろん家族でない従業員もいるが、基本は家族経営のようだ。
2回目に来たのは2010年12月で、たまたま隣に並んで待った客から「この店は店内で写真は撮れない」と聞いた。しかし今回聞いてみると、他の客が写っていなければかまわないとのことだった。なおその客は東京中の有名居酒屋に詳しく、赤羽の店を教えていただき、その後行くと、やはり開店時間から満席の店だった。
牛にこみと菊正宗のぬる燗
まず注文したのは、菊正宗のぬる燗と名物・牛にこみ(500円)。初めのお猪口の一杯目はじつにうまかった。
次に二階堂のお湯割りに切り替えて肉どうふ(680円)を食べた。ネギがとてもうまかった。2人でひとつ頼んだが、一人なら豆腐だけでも十分な量があった。
らっきょう(250円)は大粒で酢の味がしっかりしていた。竹の子煮(450円)は旬の時期は少し過ぎていたが、木の芽の香りがしておいしかった。お新香(350円)もおいしかった。肉や魚はもちろんうまいが、この店は野菜も意外においしいことがわかった。
また干しホタル(400円)というものを注文した。ホタルイカなら食べたことはあるが、いったいどんなものかと思った。考えるより実物をみて食べたほうが早い。アジの干物など干物のジャンルなのだが、なかなかうまかった。珍味といってよいだろう。
干しホタル、お新香、竹の子煮
太田さんにならって、全部ではないが、その他のメニューを紹介する。トマト300、もろきゅう300、くらげときゅうり450、そら豆400、ポテトサラダ 300、めかぶ350、ズワイガニ酢の物500、ぬた500、にこごり350、シラス沖漬400、辛子めんんたい450、もずく300、干ホタル400、クサヤ520、こまい生干し450、焼はま700、いかげそ焼450、いか焼450、竹の子煮450、れん草おひたし250、はまつゆ450、なめこ汁350、いわしつみれ吸物350など。たしかおにぎりもあった。
酒は、焼酎では麦が二階堂、いもは薩摩こく紫、日本酒は看板には新泉とあるがたしか菊正宗と松竹梅の2種類だったと思う。もちろん生ビール(中)650、瓶ビール大650などはある。
肉どうふ
料理も酒もうまく、店のスタッフなど店の雰囲気もよい。いい居酒屋の条件を備えている。何よりいいのは、いっしょに行った人と話がしやすくなる店であることだ。3回目に行ったときは、3人で訪れ、そのなかのBさんはわたしは初対面の方だったが大いに話がはずんだ。残る一人はじつは1回目に連れて行ってもらったA先輩で、その人の知合いだったが、半年ほどたったころにA先輩が突然亡くなった。そのことをまず伝えたのもたった一度しか会っていないBさんだった。また今回同行した人も、飲みに行くのは初めての方だったが、話が大いに盛り上がった。そういう店は最高だ。
7時半ころ店を出ると待っている人が8人いた。入ったときはシャッターを開けたばかりで外観をよく見なかったが、真ん中に大きく「酒」、左に「岸田屋」右に「大衆酒場」と、まさに決まっている。
☆太田和彦「完本・居酒屋大全」には店探しで大変お世話になった。このブログでも取り上げたことのある、虎の門・升本、甘酒横丁の笹新、秋葉原の赤津加、根岸の鍵屋、赤羽まるます家、三軒茶屋の味とめ、中野の第二力酒蔵、宇田川町・佐賀、築地の魚竹、などはこの本で知った。書いていないが、いい店では湯島のシンスケ、自由が丘の金田、道玄坂の芝浜、大塚の江戸一、門前仲町の魚三酒場、銀座の三州屋、千住の大はしにも、機会があればまた行って書いてみたい。ご主人がガンで亡くなった幡ヶ谷のたまははきなどもなつかしい。
太田さんの本は、ほかにも「居酒屋味酒覧」「東京 大人の居酒屋」など何冊か買って持っている。八重洲のふくべ、中目黒の藤八、自由が丘の銀魚など、たいてい書かれたとおりいい店なので、信頼している。