3 紙上討論授業の感想
この学年の生徒は、紙上討論への感想を、3年生紙上討論1(2年生の学年末に書いたもの)で5人、3年生紙上討論2(3年生の6月29日~7月6日に書いたもの)で3人、卒業生からの手紙(卒業式の前後に書いたもの)で9人、合計17人が書いている。
大別すると、(1)異なる意見を知った。いろんな意見を聞き世界が広がった、(2)だんだん自分の意見を持てるようになった、今後も自分なりの意見を考えていきたい、といった自分の意見をもつことの重要性、(3)社会への関心が高まった、に分けられる。
2008年12月の都庁第二庁舎前ビラ撒き
異なる意見を知った
2A●紙上討論をして、本当におもしろかったです。「普天間基地問題」「イラク戦争」「北朝鮮問題」「ガンディー(植民地支配)」「原爆」などについて賛否両論さまざまな意見が出ていて、「あ、こういう考え方もあるんだな」という新しい発見がたくさんありました。ぜひ、3年生になっても、紙上討論をたくさんやってほしいと思います。
2B●紙上討論について。僕は先生がビデオを見せてくれる授業が大好きです。そして、この紙上討論も大好きです。学年の人の考えを知ることができるからです。
2B●紙上討論について。僕は小林よしのり氏の『ゴーマニズム・・・』とかいう漫画を読んだことがあります。僕は、そこに書かれていることをすべて信じ、「南京大虐殺は中国人が作ったデマだ」と思ってました。しかし、増田先生の授業や紙上討論出の説明で「虐殺があった事実に変わりはないのだ」と分かりました。『一つのこと』なのに、まったく逆の意見が出るのは面白いな、と思いました。2つの相反する意見から、自分なりの意見を出すのが大事だ、と思いました。
2B●最後に、この一年間、紙上討論をして、いろいろな人の意見を聞いたことによって、自分の世界が広がった気がします。紙上討論は、そんなに嫌いじゃありませんでした。そして、毎回、こんなにたくさんプリントを作ってくれた先生、お疲れさまでした。3年生になっても、よろしく、お願いします。
3A●実は、以前、私は、この紙上討論があまり好きではなく、非協力的(?)でした。でも、今、思うと、やっぱり紙上討論はみんなの意見や先生からの答えが聞けて、とても良い授業だと思ってきました。一度、日本の生徒と韓国の生徒とディベートっぽいの、やりたいです。韓国の生徒が思っていることが知りたいからです。
卒●社会の先生への手紙に、こんなこと書くのもなんですが、私は社会はとてつもなく苦手でした。だからいつもテストの点数では平均点以下や平均点ぐらいしか取っていませんでした。だけど、私の行きたかった高校(都立)の入試ではとても良い点数を取りうれしかったです。(略)私の社会の授業での思い出は紙上討論です。それはいろいろな人の意見が読めたり、自分でいろいろな意見が書けてうれしかったです。
卒●社会の苦手な私にも、再テストや補習の時間を設けてくれ、増田先生には感謝しています。また、社会の授業で行った紙上討論も、自分のためになったと思います。自分の名前を公表しないので、意見が書きやすかったです。私は、紙上討論を通して、一つのものに対し、さまざまな意見があるということがわかり、その一つのことから、さらに意見をふくらますことができたと思います。
自分自身の意見を持つようになった
卒●先生の紙上討論が一番なつかしいです。最初は全然意味が分からなくて、なんでこんなことしなきゃならないんだ!! って感じだったんですが、時がたつにつれて、だんだんおもしろくなってきて、紙上討論の時間がとても楽しみになってきていました。意見を率直に書けるのが、とても気楽でよかったです。
卒●紙上討論は、文章が苦手な私にとっては、とても辛いものでした。戦争や原爆のビデオを見たりして涙したこともありました。でも、そのときは大変でも、今、振り返ってみると、紙上討論のおかげで、自分の意見が言えるようになり、友達の考えを知ることができました。あれらのビデオを見たおかげで、教科書では学べない真実を知ることができました。先生の授業で無駄になったことは一つもありません。
卒●最初に「紙上討論」という形式に出会ったとき、全く考えもしなかった方式に、少なからず驚きました。今もそれは変わっていません。何回も行われたそれは、私にいろんなことを教え、自覚させてくれました。
自分の意見を他人とぶつけあうことの気持ち良さ、それに自分の意見に責任を持つことの重大さなどです。名前が無いからと思って、中傷的な意見を書いている人もいました。それを見て私は「他人のふり見て我がふり直せ」という言葉を噛み締めたのでした。
社会への関心が高まった
3A●僕の家は産経新聞を取っています。しかし、今までテレビ欄しか見てなかったので、そんなに「戦争、賛成」みたいな新聞とは知りませんでした。今後は、毎日、この新聞の内容を読み、気になる記事や変な記事があったら、それに対して、自分なりの意見を考えたいと思います。
(略)最後に紙上討論のみんなの意見は、どれも読んでいて面白かった。
卒●中でも一番印象に残っていること、それは『紙上討論』です。私はずっと自分の意見を言うことが苦手だったので、始めはあの白い紙に書くことにとまどっていました。みんなで、意見を読み合いアンダーラインを引く作業も正直嫌でした。しかし、回を重ねるごとにたくさんの人のいろいろな考え方が出ている意見を読むのが楽しくなりました。とても参考になる意見や共感できる意見、自分と正反対な意見など、いろいろな人の意見を読むことで学んだことはたくさんあったし、だんだんと自分自身の意見を持つこともできるようになりました。紙上討論をきっかけにして社会に興味をもつようにもなったりしました。
卒●私は、社会があまり好きではなくて、歴史も興味を持てなかったのですが、増田先生の紙上討論をしているうちに、みんなの意見を聞いて、自分の意見も、しっかりとした意見を持ちたいと思うようになり、積極的に勉強するようになりました。(略)受験科目に社会はありませんでしたが、先生のおかげで、自分には公民が合っている、自分は公民にすごく興味があって、公民を勉強したいんだ、ということが分かったので。入学してからも公民を選択しようと思っています。今まで、自分は帰国子女といっても、トルコなので、英語が特別話せるわけではないし、自分の経験はあまり役に立たないのではないかと思っていたのですが、公民の授業で世界のことを勉強しているうちに、トルコでの生活で見てきた貧しい人たちの生活はめったに見られないものだし、この経験は今すぐに、とはいえなくても、将来、何かの役に立つことがあるかもしれないと、考えるようになりました。
まさに「多様な意見を発表し合い、他者と対等に意見交換しながら、良く考え判断し、自分の言葉で自分なりの意見を作り上げ表現していくことのできる生徒を支援していく」紙上討論の目的をよく達成していることがわかる。
とりわけ「紙上討論を通して、一つのものに対し、さまざまな意見があるということがわかり、その一つのことから、さらに意見をふくらますことができた」「2つの相反する意見から、自分なりの意見を出すのが大事だ」「紙上討論をきっかけにして社会に興味をもつようにもなった」「毎日、この新聞の内容を読み、気になる記事や変な記事があったら、それに対して、自分なりの意見を考えたい」という感想から判断して、増田教諭の紙上討論授業が1998年12月14日
に改定された中学校学習指導要領の社会科の目標「広い視野に立って,社会に対する関心を高め,諸資料に基づいて多面的・多角的に考察し」「国際社会に生きる民主的,平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」授業方法であったことは明らかである。
紙上討論は、98年改定のポイントである「自ら学び,自ら考える力を育成する」に合致する教育方法であり、帰国子女受け入れ指定校・九段中学の生徒にとって「豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成する」教育であったことは特筆に価する。
卒業生からの手紙でここに掲載した8人中4人が、当初は文章を書くのが苦手な生徒にとって「つらかった」り、「とまどい」を感じる授業だったという。それが7回紙上討論授業を受けた結果、他人の意見を読んだり自分の意見を書くことが楽しくなったと書いている。また意外なことに、卒業式前後の忙しい時期にわざわざ手紙を書いてくれた生徒のうち3人は社会が苦手だったと書いている。それが増田教諭の授業を受けた結果、積極的に勉強するようになったり高校入試で高得点を取れたと述べていることに注目したい。これこそ教育的成果そのものである。
もちろん、紙上討論授業が足立十六中学と同様に九段中学での実践例をみても「公正な判断力を養う」(2005年時点の学校教育法36条3号)授業方法であったことは言うまでもない。
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この学年の生徒は、紙上討論への感想を、3年生紙上討論1(2年生の学年末に書いたもの)で5人、3年生紙上討論2(3年生の6月29日~7月6日に書いたもの)で3人、卒業生からの手紙(卒業式の前後に書いたもの)で9人、合計17人が書いている。
大別すると、(1)異なる意見を知った。いろんな意見を聞き世界が広がった、(2)だんだん自分の意見を持てるようになった、今後も自分なりの意見を考えていきたい、といった自分の意見をもつことの重要性、(3)社会への関心が高まった、に分けられる。
2008年12月の都庁第二庁舎前ビラ撒き
異なる意見を知った
2A●紙上討論をして、本当におもしろかったです。「普天間基地問題」「イラク戦争」「北朝鮮問題」「ガンディー(植民地支配)」「原爆」などについて賛否両論さまざまな意見が出ていて、「あ、こういう考え方もあるんだな」という新しい発見がたくさんありました。ぜひ、3年生になっても、紙上討論をたくさんやってほしいと思います。
2B●紙上討論について。僕は先生がビデオを見せてくれる授業が大好きです。そして、この紙上討論も大好きです。学年の人の考えを知ることができるからです。
2B●紙上討論について。僕は小林よしのり氏の『ゴーマニズム・・・』とかいう漫画を読んだことがあります。僕は、そこに書かれていることをすべて信じ、「南京大虐殺は中国人が作ったデマだ」と思ってました。しかし、増田先生の授業や紙上討論出の説明で「虐殺があった事実に変わりはないのだ」と分かりました。『一つのこと』なのに、まったく逆の意見が出るのは面白いな、と思いました。2つの相反する意見から、自分なりの意見を出すのが大事だ、と思いました。
2B●最後に、この一年間、紙上討論をして、いろいろな人の意見を聞いたことによって、自分の世界が広がった気がします。紙上討論は、そんなに嫌いじゃありませんでした。そして、毎回、こんなにたくさんプリントを作ってくれた先生、お疲れさまでした。3年生になっても、よろしく、お願いします。
3A●実は、以前、私は、この紙上討論があまり好きではなく、非協力的(?)でした。でも、今、思うと、やっぱり紙上討論はみんなの意見や先生からの答えが聞けて、とても良い授業だと思ってきました。一度、日本の生徒と韓国の生徒とディベートっぽいの、やりたいです。韓国の生徒が思っていることが知りたいからです。
卒●社会の先生への手紙に、こんなこと書くのもなんですが、私は社会はとてつもなく苦手でした。だからいつもテストの点数では平均点以下や平均点ぐらいしか取っていませんでした。だけど、私の行きたかった高校(都立)の入試ではとても良い点数を取りうれしかったです。(略)私の社会の授業での思い出は紙上討論です。それはいろいろな人の意見が読めたり、自分でいろいろな意見が書けてうれしかったです。
卒●社会の苦手な私にも、再テストや補習の時間を設けてくれ、増田先生には感謝しています。また、社会の授業で行った紙上討論も、自分のためになったと思います。自分の名前を公表しないので、意見が書きやすかったです。私は、紙上討論を通して、一つのものに対し、さまざまな意見があるということがわかり、その一つのことから、さらに意見をふくらますことができたと思います。
自分自身の意見を持つようになった
卒●先生の紙上討論が一番なつかしいです。最初は全然意味が分からなくて、なんでこんなことしなきゃならないんだ!! って感じだったんですが、時がたつにつれて、だんだんおもしろくなってきて、紙上討論の時間がとても楽しみになってきていました。意見を率直に書けるのが、とても気楽でよかったです。
卒●紙上討論は、文章が苦手な私にとっては、とても辛いものでした。戦争や原爆のビデオを見たりして涙したこともありました。でも、そのときは大変でも、今、振り返ってみると、紙上討論のおかげで、自分の意見が言えるようになり、友達の考えを知ることができました。あれらのビデオを見たおかげで、教科書では学べない真実を知ることができました。先生の授業で無駄になったことは一つもありません。
卒●最初に「紙上討論」という形式に出会ったとき、全く考えもしなかった方式に、少なからず驚きました。今もそれは変わっていません。何回も行われたそれは、私にいろんなことを教え、自覚させてくれました。
自分の意見を他人とぶつけあうことの気持ち良さ、それに自分の意見に責任を持つことの重大さなどです。名前が無いからと思って、中傷的な意見を書いている人もいました。それを見て私は「他人のふり見て我がふり直せ」という言葉を噛み締めたのでした。
社会への関心が高まった
3A●僕の家は産経新聞を取っています。しかし、今までテレビ欄しか見てなかったので、そんなに「戦争、賛成」みたいな新聞とは知りませんでした。今後は、毎日、この新聞の内容を読み、気になる記事や変な記事があったら、それに対して、自分なりの意見を考えたいと思います。
(略)最後に紙上討論のみんなの意見は、どれも読んでいて面白かった。
卒●中でも一番印象に残っていること、それは『紙上討論』です。私はずっと自分の意見を言うことが苦手だったので、始めはあの白い紙に書くことにとまどっていました。みんなで、意見を読み合いアンダーラインを引く作業も正直嫌でした。しかし、回を重ねるごとにたくさんの人のいろいろな考え方が出ている意見を読むのが楽しくなりました。とても参考になる意見や共感できる意見、自分と正反対な意見など、いろいろな人の意見を読むことで学んだことはたくさんあったし、だんだんと自分自身の意見を持つこともできるようになりました。紙上討論をきっかけにして社会に興味をもつようにもなったりしました。
卒●私は、社会があまり好きではなくて、歴史も興味を持てなかったのですが、増田先生の紙上討論をしているうちに、みんなの意見を聞いて、自分の意見も、しっかりとした意見を持ちたいと思うようになり、積極的に勉強するようになりました。(略)受験科目に社会はありませんでしたが、先生のおかげで、自分には公民が合っている、自分は公民にすごく興味があって、公民を勉強したいんだ、ということが分かったので。入学してからも公民を選択しようと思っています。今まで、自分は帰国子女といっても、トルコなので、英語が特別話せるわけではないし、自分の経験はあまり役に立たないのではないかと思っていたのですが、公民の授業で世界のことを勉強しているうちに、トルコでの生活で見てきた貧しい人たちの生活はめったに見られないものだし、この経験は今すぐに、とはいえなくても、将来、何かの役に立つことがあるかもしれないと、考えるようになりました。
まさに「多様な意見を発表し合い、他者と対等に意見交換しながら、良く考え判断し、自分の言葉で自分なりの意見を作り上げ表現していくことのできる生徒を支援していく」紙上討論の目的をよく達成していることがわかる。
とりわけ「紙上討論を通して、一つのものに対し、さまざまな意見があるということがわかり、その一つのことから、さらに意見をふくらますことができた」「2つの相反する意見から、自分なりの意見を出すのが大事だ」「紙上討論をきっかけにして社会に興味をもつようにもなった」「毎日、この新聞の内容を読み、気になる記事や変な記事があったら、それに対して、自分なりの意見を考えたい」という感想から判断して、増田教諭の紙上討論授業が1998年12月14日
に改定された中学校学習指導要領の社会科の目標「広い視野に立って,社会に対する関心を高め,諸資料に基づいて多面的・多角的に考察し」「国際社会に生きる民主的,平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」授業方法であったことは明らかである。
紙上討論は、98年改定のポイントである「自ら学び,自ら考える力を育成する」に合致する教育方法であり、帰国子女受け入れ指定校・九段中学の生徒にとって「豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成する」教育であったことは特筆に価する。
卒業生からの手紙でここに掲載した8人中4人が、当初は文章を書くのが苦手な生徒にとって「つらかった」り、「とまどい」を感じる授業だったという。それが7回紙上討論授業を受けた結果、他人の意見を読んだり自分の意見を書くことが楽しくなったと書いている。また意外なことに、卒業式前後の忙しい時期にわざわざ手紙を書いてくれた生徒のうち3人は社会が苦手だったと書いている。それが増田教諭の授業を受けた結果、積極的に勉強するようになったり高校入試で高得点を取れたと述べていることに注目したい。これこそ教育的成果そのものである。
もちろん、紙上討論授業が足立十六中学と同様に九段中学での実践例をみても「公正な判断力を養う」(2005年時点の学校教育法36条3号)授業方法であったことは言うまでもない。
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