東中野駅北口に、駅前飲食店ムーンロードという25軒ほどの飲み屋街がある。大政小政はその中ほど、道がカーブしているあたりにある。開店したのはマスターが20代のころで1970年代の終わりごろだった。
この店を訪れたのは3回目。1度目は10年くらい前、その当時山形の酒・十四代が一世を風靡していたが、この店は全種類そろえているというので訪れた。そのときに酒だけではなく料理もしっかりしていることを知り、次は高校時代の友人2人を誘い訪れた。ところがそのとき、料理の順番や酒についてマスター得意の「薀蓄」があまりにも激しく、言われる相手がわたしだけならまだ我慢するが、友人たちにも容赦なかったので、その後長く敬遠していた。
この店では自分が食べたい料理のみメニューから選び、その順番も、合わせる酒もマスターにお任せした方が無難である。
ここがこの店で気持ちよく飲むうえでの重要ポイントだと思う。
この日は、前回とてもおいしかった豆腐と鮭のハラスを注文した。酒は燗酒をお願いした。そしてマスターが選んでくれたのは美冨久酒造の純米酒・三連星だった。わたくしはまったく知らない酒だった。美冨久酒造は滋賀県甲賀市水口町にある創業94年の蔵だ。
汲み上げ豆腐は、福豊の豆乳に瀬戸内のにがりを加え12-13分火を入れてつくる。それを目の前で実演して見せてくれる。湯気を立てている豆腐は、湯豆腐以外には見たことがなかった。しばらくして冷めてからのほうが、大豆の味が出てよいと聞いた。たしかに15分くらいたつと徐々にうま味のあるいい味になってきた。
鮭が出てきたところで三連星を飲み終えたので、ふたたびマスターに合う酒をオーダーすると、同じ美冨久酒造の山廃仕込みを出してくれた。鮭のハラスのように脂っこいものには、しっかりした酒がよいそうだ。山廃は自然発酵を促す日本古来の伝統的な酒仕込みの方法で、いわれて気づいたが無色透明ではなく、少し山吹色がかっている。
マスターの話を紹介する。日本酒は生き物なので変わっていくそうだ。だから子どもと同じようにどういう環境をつくるかが問題になる。偶然うまくなるのではダメで、何度も同じことを再現できるのがプロだそうだ。冷蔵庫に入れることはいくつかある条件のひとつで必要条件ではあるが、十分条件ではない。なお家庭用の冷蔵庫はドアを開けてから設定温度に戻るまで時間がかかるので、やはり業務用冷蔵庫は優れている。
酒の種類は本当に豊富で、別のときには亀齢酒造（東広島）の酒を勧められた。常時約80種類計300本冷蔵保管しているそうだ。私自身は日本酒の味はあまりわからないのでネコに小判だが、好きな人にとっては垂涎のブランドが多くあることと思う。
焼酎は、醸造酒でなく蒸留酒であり、死んだ酒なのであまり出したくないとのことだ。ただしこの店には魔王や吉四六など多くの焼酎を置いており、以前来たとき最後に飲んだのが焼酎のお湯割りで、とてもおいしかったので意外だった。
その他、マスター手打ちの二八そばも名物である（ただし夏はやっていないようだ）。そして、クリームチーズの大吟醸酒粕漬、フランスパンの和風フォアグラのせ、酒盗のクリームチーズ寄せといった珍味も置いている。
マスターは東中野生まれの東中野育ち、この店のある場所が実家だった。理科系の学校を出て小料理屋で修行し、27歳のとき5歳下の弟さんと二人でこの店を出した。それで店名は「大政小政」になった。開店当時は木造2階建ての建物に5-6軒の飲食店が入っていたが、1年たったころ、そのなかの1軒がボヤを出し、鉄筋の建物を新築した。それが現在の店舗ですでに30年近くになる。
蛇足かもしれないが、マスターは理系出身なのでHPやメールマガジン作成が得意である。MMは原則として毎週木曜発行、最新の8/4号のNMは「而今 純米吟醸」の紹介（写真付）、東京各地の試飲会紹介、夏休みの日程、宴会コースの宣伝などの記事が掲載されている。年に何度か食事会「大政小政会」を開催しているそうだ。
電話: 03-3371-0019
住所: 東京都中野区東中野4-2-25
営業: 17:00～00:00、日祝休
サッポロ黒ラベル生 中 600、エビス生 中 600、日本酒・焼酎多数
☆マスターと雑談していて年が同じであることが判明した。東京ではオリンピックを境にまちが変わったという話をよく聞くが、東中野はそれほど変化はなかったそうだ。1964年10月10日、国立競技場の上でジェット機が五色の五輪を描いたのがよく見えたそうだ。
東中野駅西口には、立飲み焼きとんで有名な丸小がある。偶然だがここのマスターも同い年で、開店して30年近くになる点も同じだ。
この店を訪れたのは3回目。1度目は10年くらい前、その当時山形の酒・十四代が一世を風靡していたが、この店は全種類そろえているというので訪れた。そのときに酒だけではなく料理もしっかりしていることを知り、次は高校時代の友人2人を誘い訪れた。ところがそのとき、料理の順番や酒についてマスター得意の「薀蓄」があまりにも激しく、言われる相手がわたしだけならまだ我慢するが、友人たちにも容赦なかったので、その後長く敬遠していた。
この店では自分が食べたい料理のみメニューから選び、その順番も、合わせる酒もマスターにお任せした方が無難である。
ここがこの店で気持ちよく飲むうえでの重要ポイントだと思う。
この日は、前回とてもおいしかった豆腐と鮭のハラスを注文した。酒は燗酒をお願いした。そしてマスターが選んでくれたのは美冨久酒造の純米酒・三連星だった。わたくしはまったく知らない酒だった。美冨久酒造は滋賀県甲賀市水口町にある創業94年の蔵だ。
汲み上げ豆腐は、福豊の豆乳に瀬戸内のにがりを加え12-13分火を入れてつくる。それを目の前で実演して見せてくれる。湯気を立てている豆腐は、湯豆腐以外には見たことがなかった。しばらくして冷めてからのほうが、大豆の味が出てよいと聞いた。たしかに15分くらいたつと徐々にうま味のあるいい味になってきた。
鮭が出てきたところで三連星を飲み終えたので、ふたたびマスターに合う酒をオーダーすると、同じ美冨久酒造の山廃仕込みを出してくれた。鮭のハラスのように脂っこいものには、しっかりした酒がよいそうだ。山廃は自然発酵を促す日本古来の伝統的な酒仕込みの方法で、いわれて気づいたが無色透明ではなく、少し山吹色がかっている。
マスターの話を紹介する。日本酒は生き物なので変わっていくそうだ。だから子どもと同じようにどういう環境をつくるかが問題になる。偶然うまくなるのではダメで、何度も同じことを再現できるのがプロだそうだ。冷蔵庫に入れることはいくつかある条件のひとつで必要条件ではあるが、十分条件ではない。なお家庭用の冷蔵庫はドアを開けてから設定温度に戻るまで時間がかかるので、やはり業務用冷蔵庫は優れている。
酒の種類は本当に豊富で、別のときには亀齢酒造（東広島）の酒を勧められた。常時約80種類計300本冷蔵保管しているそうだ。私自身は日本酒の味はあまりわからないのでネコに小判だが、好きな人にとっては垂涎のブランドが多くあることと思う。
焼酎は、醸造酒でなく蒸留酒であり、死んだ酒なのであまり出したくないとのことだ。ただしこの店には魔王や吉四六など多くの焼酎を置いており、以前来たとき最後に飲んだのが焼酎のお湯割りで、とてもおいしかったので意外だった。
その他、マスター手打ちの二八そばも名物である（ただし夏はやっていないようだ）。そして、クリームチーズの大吟醸酒粕漬、フランスパンの和風フォアグラのせ、酒盗のクリームチーズ寄せといった珍味も置いている。
マスターは東中野生まれの東中野育ち、この店のある場所が実家だった。理科系の学校を出て小料理屋で修行し、27歳のとき5歳下の弟さんと二人でこの店を出した。それで店名は「大政小政」になった。開店当時は木造2階建ての建物に5-6軒の飲食店が入っていたが、1年たったころ、そのなかの1軒がボヤを出し、鉄筋の建物を新築した。それが現在の店舗ですでに30年近くになる。
蛇足かもしれないが、マスターは理系出身なのでHPやメールマガジン作成が得意である。MMは原則として毎週木曜発行、最新の8/4号のNMは「而今 純米吟醸」の紹介（写真付）、東京各地の試飲会紹介、夏休みの日程、宴会コースの宣伝などの記事が掲載されている。年に何度か食事会「大政小政会」を開催しているそうだ。
電話: 03-3371-0019
住所: 東京都中野区東中野4-2-25
営業: 17:00～00:00、日祝休
サッポロ黒ラベル生 中 600、エビス生 中 600、日本酒・焼酎多数
☆マスターと雑談していて年が同じであることが判明した。東京ではオリンピックを境にまちが変わったという話をよく聞くが、東中野はそれほど変化はなかったそうだ。1964年10月10日、国立競技場の上でジェット機が五色の五輪を描いたのがよく見えたそうだ。
東中野駅西口には、立飲み焼きとんで有名な丸小がある。偶然だがここのマスターも同い年で、開店して30年近くになる点も同じだ。
