彼がガラス戸の前でぐずぐずしていたのは、彼女が誰かと話をしていることが見て取れたからであった。カウンターのすぐ後ろのドアが開けっ放しになっており、その向こうには別の部屋があるらしく、彼女はその部屋にいる誰かと話をしている様子だった。その相手が誰なのか、シュパンはなんとか一目だけでも見られないかといろいろやってみたが無理だった。仕方がないので中に入ろうとしたそのとき、彼女が突然立ち上がり、何か気に入らぬ様子で二言三言喋りかけるのが見えた。彼女の視線は奥の部屋でなく、目の前の店の隅っこに注がれていた。
「おや、あそこに誰かいるのかな?」とシュパンは訝しく思った。
彼は立つ位置を変え、爪先立って覗いてみると、確かに三、四歳の小さな男の子が見えた。やせ細り、青白い顔にぼろ着を身に着け、同じくぼろぼろになった紙製の馬で遊んでいた。
この姿を見てシュパンは飛び上った。
「子供が……!」と彼は呻った。「あの悪党野郎は妻を見捨てただけでなく、自分の息子まで置き去りにしたんだ! このことはしっかり覚えておくからな、おっさん、俺たちが対決するときには、きっちり落とし前つけさせてやる!」
この脅しの文句を吐くと、彼はいきなり店に入っていった。
「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」と女主人が尋ねた。
「いえ、買い物じゃないんです、奥さん、手紙をお届けに来ました……」
「わたしに? なにかのお間違いでしょう」
「失礼ですが、マダム・ポールでいらっしゃいますね?」
「はい、そうですけど」
「それならば、この手紙はあなた様宛です」
そして彼はフロランから預かった手紙を差し出した。
若い女主人はやや躊躇いながら手を延ばし、驚きの表情で使者をじっと見た。それから手紙の筆跡に気がつくと叫び声を上げた。
「まぁ! これって……」
そしてすぐ、背後の開け放したままのドアの方を振り返ると、大声で呼びかけた。
「ムションさん、ムションさん! あの人からの手紙ですわ、夫からの。ポールから手紙が来たんです!
早くこっちへ来て!」12.4
「おや、あそこに誰かいるのかな?」とシュパンは訝しく思った。
彼は立つ位置を変え、爪先立って覗いてみると、確かに三、四歳の小さな男の子が見えた。やせ細り、青白い顔にぼろ着を身に着け、同じくぼろぼろになった紙製の馬で遊んでいた。
この姿を見てシュパンは飛び上った。
「子供が……!」と彼は呻った。「あの悪党野郎は妻を見捨てただけでなく、自分の息子まで置き去りにしたんだ! このことはしっかり覚えておくからな、おっさん、俺たちが対決するときには、きっちり落とし前つけさせてやる!」
この脅しの文句を吐くと、彼はいきなり店に入っていった。
「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」と女主人が尋ねた。
「いえ、買い物じゃないんです、奥さん、手紙をお届けに来ました……」
「わたしに? なにかのお間違いでしょう」
「失礼ですが、マダム・ポールでいらっしゃいますね?」
「はい、そうですけど」
「それならば、この手紙はあなた様宛です」
そして彼はフロランから預かった手紙を差し出した。
若い女主人はやや躊躇いながら手を延ばし、驚きの表情で使者をじっと見た。それから手紙の筆跡に気がつくと叫び声を上げた。
「まぁ! これって……」
そしてすぐ、背後の開け放したままのドアの方を振り返ると、大声で呼びかけた。
「ムションさん、ムションさん! あの人からの手紙ですわ、夫からの。ポールから手紙が来たんです!
早くこっちへ来て!」12.4
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