突然すばやい動作でパスカルは男爵を遮った。彼の目に希望が輝いていた。
「そうです、男爵」と彼は叫んだ。「ド・ヴァロルセイ氏の身辺にある男を送り込むのです。観察眼があって、使える男だと思わせることが出来、必要ならば彼の役に立つこともできる男を……。僕にやらせてください、男爵、お願いします。たった今あなたのお話を聞いて思いついたのです。ド・ヴァロルセイ氏のもとに僕を使いに出してください。あなたが彼のもとに遣わすと約束なさった代理人というのに僕をならせてください。向こうは僕を知りませんし、僕は見破られないように応答できる自信があります。あなたから言われて来たと自己紹介すれば、向こうも僕を信用するでしょう。あなたからのお金か約束手形を持っていけば、快く迎えてくれるでしょう。そうです、すっかり計画ができました……!」
と言って彼は途中で言いさした。
ドアをノックする音が聞こえ、下男が表れ、ある緊急事態のために使用人が一人やってきて面会を求めていると告げた。
「入るよう伝えろ」と男爵は命じた。
入って来たのは、マダム・リア・ダルジュレの忠実な召使ジョバンであった。彼は恭しく一礼すると、謎めいた口調で言った。
「男爵様を探して至る所を駆け回りました……マダムから、男爵をお連れするまでは帰ってきてはならぬ、と厳命されております」
「分かった。一緒に行こう!」
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