「ヴァロルセイはもはや一銭の金も持ってはいない、と証明できますよ。この一年彼は警察沙汰になってもおかしくない怪しげな弥縫策に頼って生計を保ってきたのです」
「そうなのですか!」
「彼が真っ赤な偽物の書類を見せてド・シャルース氏を騙そうとしたことを証明できます。また彼がフェライユール氏を陥れるためド・コラルト氏と共謀したことを明らかにすることが出来ます。どうです、お嬢様、ちょっとしたものではございませんか?」
マルグリット嬢は微笑んだが、その笑い方はフォルチュナ氏の虚栄心を大層傷つけるものであった。彼女は、信じがたいがまぁ大目に見ようという口調で言った。
「口では何とでも言えますでしょう」
「それを実行することだって可能です」とフォルチュナ氏は素早く言い返した。「私が出来るとお約束するときには、それを可能にする方法を手中にしているということです。人はなにか悪事を企んでいるときにはペンなど持つべきではありません。自分の悪しき計画を詳しく書き残すなどという愚か者はどこにもおりませんでしょう。が、人は四六時中警戒しているというわけには行きません。手紙を書く際、うっかり一言漏らしてしまうこともあり、別の機会には何らかの文言を、また別の場合に仄めかしを言ってしまうことも……。で、これらの片言隻句を集め、較べ合わせ、整理し、配列し直しますと、糾弾するに十分な完璧かつ決定的な記録となります……」
ここで彼は言葉を止めた。今の彼の不用意な発言に、マルグリット嬢の表情が変わったことにハッとし、口をぽかんと開けた。
彼女は不快感を覚えたように身を引き、彼をまじまじと凝視していた。
「ということは、あなたはかなり前からド・ヴァロルセイ侯爵の信任を得て親しくしておられたのですね!」と彼女は言った。「あなたが彼の一味として働いていなかったと断言お出来になれますか?」
沈黙の立会人として、この場から忘れられていたヴィクトール・シュパンだったが、内心大喜びしていた。
「うわっ、やったね! まさに痛いところをズバリと。凄いや! ボスの方は窮地に追い込まれたぞ、やられましたね!」
実際、フォルチュナ氏はまさに図星を指されたので、否定しようにも出来なかった。少なくとも全面的に否定することは出来なかった……。
「その、正直申し上げまして」と彼は答えた。「ド・ヴァロルセイ氏の相談役としてかなり長い間務めてきたことは事実です……2.28
「そうなのですか!」
「彼が真っ赤な偽物の書類を見せてド・シャルース氏を騙そうとしたことを証明できます。また彼がフェライユール氏を陥れるためド・コラルト氏と共謀したことを明らかにすることが出来ます。どうです、お嬢様、ちょっとしたものではございませんか?」
マルグリット嬢は微笑んだが、その笑い方はフォルチュナ氏の虚栄心を大層傷つけるものであった。彼女は、信じがたいがまぁ大目に見ようという口調で言った。
「口では何とでも言えますでしょう」
「それを実行することだって可能です」とフォルチュナ氏は素早く言い返した。「私が出来るとお約束するときには、それを可能にする方法を手中にしているということです。人はなにか悪事を企んでいるときにはペンなど持つべきではありません。自分の悪しき計画を詳しく書き残すなどという愚か者はどこにもおりませんでしょう。が、人は四六時中警戒しているというわけには行きません。手紙を書く際、うっかり一言漏らしてしまうこともあり、別の機会には何らかの文言を、また別の場合に仄めかしを言ってしまうことも……。で、これらの片言隻句を集め、較べ合わせ、整理し、配列し直しますと、糾弾するに十分な完璧かつ決定的な記録となります……」
ここで彼は言葉を止めた。今の彼の不用意な発言に、マルグリット嬢の表情が変わったことにハッとし、口をぽかんと開けた。
彼女は不快感を覚えたように身を引き、彼をまじまじと凝視していた。
「ということは、あなたはかなり前からド・ヴァロルセイ侯爵の信任を得て親しくしておられたのですね!」と彼女は言った。「あなたが彼の一味として働いていなかったと断言お出来になれますか?」
沈黙の立会人として、この場から忘れられていたヴィクトール・シュパンだったが、内心大喜びしていた。
「うわっ、やったね! まさに痛いところをズバリと。凄いや! ボスの方は窮地に追い込まれたぞ、やられましたね!」
実際、フォルチュナ氏はまさに図星を指されたので、否定しようにも出来なかった。少なくとも全面的に否定することは出来なかった……。
「その、正直申し上げまして」と彼は答えた。「ド・ヴァロルセイ氏の相談役としてかなり長い間務めてきたことは事実です……2.28
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