「ド・コラルトは彼の過去の悪行をわたしが人に洩らしたと知った途端、彼の方でも秘密を暴露するでしょう」
「それなら、そうするがいい。勝手に喋らせておきなさい」
マダム・ダルジュレは身震いした。
「そうなるとド・シャルースの名前に瑕が付きます」と彼女は言った。「ウィルキーは母親が誰なのか知ってしまいます……」
「いや、そうはさせない!」
「でも……」
「いいですか、最後まで言わせてください、リア、私に考えがある。この上もなく簡単なことだ。早速今夜、貴女はロンドンの連絡先、パターソン氏とかいいましたかね、に手紙を書いて、貴女の息子をイギリスに呼び寄せて貰うのです。何らかの口実を設けて……お金を渡すから、とでも言えばいいでしょう。ウィルキーは当然飛んで行くでしょう。そしてその地に引き留めて貰うのです。一方コラルトは彼の後を追ったりはしない。で、我々はこちらでゆっくり事を構えればよい、と」
「まあ」 とマダム・ダルジュレは呟いた。「わたし何故思いつかなかったのかしら……」
すっかり動転していた男爵も、次第に冷静さを取り戻しつつあった。
「貴女に関しては、リア」と彼は尚も言葉を続けた。「話はもっと簡単だ……。一つ芝居を打つんです。貴女の家財道具を売り払ったら、どれぐらいの価値がありますか? 数十万フランというところではありませんか? よろしい、貴女は私の使っている名義人の一人に当てた前日付の借用証書にサインをするのです……で、期限日が来たら、仮に月曜としておきましょう、貴女は証書を突きつけられますが、支払いを拒否するのです。貴女は催促されますが、されるがままになっておきます。差し押さえられても、そのままにしておく。うまく説明できているかどうか、分からんのですが……」
「ああ、とてもよく分かりますとも!」1.11
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