そう、この私、トリゴーは大事にされ、甘やかされ、ちやほやされる、でなければ、残念ながら金は出さぬ。このやり方を教えてくれたのは、私の古い友人でしてな、私と同じ成り上がり者で、彼の幸福な家庭を私は長年羨ましく思っておったのです……。この友人が私にこう言いました。『友よ、聞いてくれ。わしは妻や子供たち、それに娘婿たちに囲まれて暮らしておる。居酒屋に居座った貴族みたいに。わしは一か月につきこれこれの値で自分に最高級の幸福を注文する。注文どおりの品が出てくれば、金を払う。そうでなければ、わしは現金窓口をピシャっと閉めるというわけだ。ときに何かちょっとした追加のサービスをつけてくれたりすれば、そのときは別途で払う。値切ったりはしない。ギブアンドテークだよ……。わしのやり方を見習うんだ、そしたら上手く行く。料金だと思うのだ。それ以上のものだと思っちゃいかん』とね。
で、私は彼の真似をすることにしましたよ、フェライユールさん。それは良いやり方だし、実際的で、いわゆる『ご時勢』にも合っていますしね。ここに至るまでには、私もいろいろと考えましたよ。今までさんざん言いなりのお人好しを演じてきましたがね、余生は家長としての生き方をしようと。でなければ、神かけて申しますが、自分の家族が飢え死にするなら勝手にそうさせておきます!」
彼の顔は紅潮し、額の血管は膨張していた。が、それは怒りのためか、声を低めて話さねばならぬ、と自分を抑えていたためか、どちらとも分からなかった。彼はふうっと長い息を吐き出し、今までより落ち着いた声で続けた。
「しかし貴方は事を成功させねばなりません、フェライユールさん。しかも素早く。そして貴方の愛する……その、娘さんが父親の遺産を受け取れるように……。ド・シャルース伯爵の遺産がいかに悪辣な者の手中に今まさに落ちようとしているか、貴方はご存じない……」
男爵は、マダム・ダルジュレとその破廉恥な息子ウィルキー氏の話をパスカルに話して聞かせようとしていた。そのとき、玄関の方から騒々しく言い争う声が聞こえてきたので、それは遮られてしまった。
「おや! 私の家に勝手に上がり込んできたのは一体誰なんだ……」と彼は呟いた。
彼の書斎のドアが開けられる音が聞こえ、その後すぐに甲高いしわがれ声が聞こえた。
「なんだ! ここにも居ないのか、何ということだ!」
男爵は怒りの身振りをした。
「カミ・ベイだ」と彼は言った。「あのトルコ人と私はくだらぬ賭けをしたのです……悪魔にでも攫われてしまえ! だが、彼は今にもここまで来て我々を捕まえる気です……こちらから会いに行きましょう、フェライユールさん」
書斎に戻ると、貧弱な髭をした太った男がパスカルの目に入った。鼻は平たく、真っ赤で、ひどく小さい目が斜めについており、肉感的というより動物的な分厚い唇をしていた。一種の黒いチュニック・コートのようなものを着てきちんとボタンをかけ、トルコ帽(赤い円錐台形で黒い房が付いている)を被っていた。その様子は赤い蝋で封をされた中央の膨らんだ瓶を思わせた。
これがカミ・ベイだった。外国からの金を一杯に載せて運ぶガリオン船のような男。パリに惹きつけられはするものの、それはこの街の煌めきや栄光にではなく、その退廃や恥ずべき面に引き寄せられる野蛮人であり、文明に触発されることは殆どなく、何でも金で買えると思い込んでやって来ては、また同じ思いを抱いて帰って行く男である。ただ、このような奇怪な男たちの中でも、このカミ・ベイという男は更に恥知らずで冷笑的かつ傲慢であった。大層金持ちであるということで、彼は常に人々に取り巻かれ、もてはやされ、へつらわれ、ちやほやされていた。また彼は様々な策を弄する下衆どもや高級娼婦たちによって、大いにぼったくられるカモでもあった。彼はまぁまぁのフランス語を話したが、それはむしろ特殊な私室や怪しげな溜まり場で使われる隠語の類であり、いずれにせよ酷い訛りがあった。7.24
で、私は彼の真似をすることにしましたよ、フェライユールさん。それは良いやり方だし、実際的で、いわゆる『ご時勢』にも合っていますしね。ここに至るまでには、私もいろいろと考えましたよ。今までさんざん言いなりのお人好しを演じてきましたがね、余生は家長としての生き方をしようと。でなければ、神かけて申しますが、自分の家族が飢え死にするなら勝手にそうさせておきます!」
彼の顔は紅潮し、額の血管は膨張していた。が、それは怒りのためか、声を低めて話さねばならぬ、と自分を抑えていたためか、どちらとも分からなかった。彼はふうっと長い息を吐き出し、今までより落ち着いた声で続けた。
「しかし貴方は事を成功させねばなりません、フェライユールさん。しかも素早く。そして貴方の愛する……その、娘さんが父親の遺産を受け取れるように……。ド・シャルース伯爵の遺産がいかに悪辣な者の手中に今まさに落ちようとしているか、貴方はご存じない……」
男爵は、マダム・ダルジュレとその破廉恥な息子ウィルキー氏の話をパスカルに話して聞かせようとしていた。そのとき、玄関の方から騒々しく言い争う声が聞こえてきたので、それは遮られてしまった。
「おや! 私の家に勝手に上がり込んできたのは一体誰なんだ……」と彼は呟いた。
彼の書斎のドアが開けられる音が聞こえ、その後すぐに甲高いしわがれ声が聞こえた。
「なんだ! ここにも居ないのか、何ということだ!」
男爵は怒りの身振りをした。
「カミ・ベイだ」と彼は言った。「あのトルコ人と私はくだらぬ賭けをしたのです……悪魔にでも攫われてしまえ! だが、彼は今にもここまで来て我々を捕まえる気です……こちらから会いに行きましょう、フェライユールさん」
書斎に戻ると、貧弱な髭をした太った男がパスカルの目に入った。鼻は平たく、真っ赤で、ひどく小さい目が斜めについており、肉感的というより動物的な分厚い唇をしていた。一種の黒いチュニック・コートのようなものを着てきちんとボタンをかけ、トルコ帽(赤い円錐台形で黒い房が付いている)を被っていた。その様子は赤い蝋で封をされた中央の膨らんだ瓶を思わせた。
これがカミ・ベイだった。外国からの金を一杯に載せて運ぶガリオン船のような男。パリに惹きつけられはするものの、それはこの街の煌めきや栄光にではなく、その退廃や恥ずべき面に引き寄せられる野蛮人であり、文明に触発されることは殆どなく、何でも金で買えると思い込んでやって来ては、また同じ思いを抱いて帰って行く男である。ただ、このような奇怪な男たちの中でも、このカミ・ベイという男は更に恥知らずで冷笑的かつ傲慢であった。大層金持ちであるということで、彼は常に人々に取り巻かれ、もてはやされ、へつらわれ、ちやほやされていた。また彼は様々な策を弄する下衆どもや高級娼婦たちによって、大いにぼったくられるカモでもあった。彼はまぁまぁのフランス語を話したが、それはむしろ特殊な私室や怪しげな溜まり場で使われる隠語の類であり、いずれにせよ酷い訛りがあった。7.24
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