今日は5月5日。GW休暇が今日までの方も少なくないのではないでしょうか・・・。明日から仕事、でもまたすぐに週末・・・。ちなみに、私は明日からいよいよ・・・疾風怒濤の日々が始まりそうです。
さて、今日は「温度風の関係」を取り上げることにしましょう。当初は温度風の性質と「水平風の鉛直シアー」とかいう定義を暗記していましたが・・・後述の図3のような傾圧性に基づく力学的なイメージを構築できたことで、ようやく本質を掴む事ができました。今こうして、気象学を独学で学んだ日々を振り返ってみると・・・温位と温度風は特に難解な概念でしたね・・・。
図1.大気大循環と転移層・ジェット気流のモデル図
図1に示すように二つの循環が隣接する領域では、異なる循環の、互いに性質の異なる大気同士がぶつかり合うため転移層が形成されます。この領域では温度も急変するため、その水平傾度(∂Tm/∂y)も大きくなります。
この時、後述する温度風の関係に基づいて、この転移層の上を強い偏西風の流れであるジェット気流が走向します。極循環とフェレル循環の間の転移層上空を走るジェット気流は寒帯前線ジェット気流(ポーラージェット)と呼ばれ、フェレル循環とハドレー循環の間の転移層上空を走るものは亜熱帯ジェット気流(サブジェット)と呼ばれます。中緯度地方の日々の天気はこれらのジェット気流の動きによって大きな影響を受けているのです。
ここからは(北半球の)中緯度地方に限定して考えていきましょう。
図2.上空のジェット気流・転移層と地上前線の関係
転移層の上空には偏西風ジェット気流が走向している一方で、転移層は地上では前線の形で現れます。この構造を模式的に示したのが図2です。中学校の理科(第二分野)では、二つの異なる性質を持った大気がぶつかり合う接触面を前線面、そして前線面が地上に達する領域を前線と履修した筈です。実は、この前線面はある程度の厚みを持った層状の構造となっており、これが転移層なのです。
転移層の北側は相対的に低温、南側は相対的に高温となるため、両者の間の温度差が大きくなればなるほど(寒暖のコントラストが強まるほど)、その転移層における水平傾度(∂Tm/∂y)は大きくなります。この温度傾度に比例して上空の西風が強まる事が理論的に知られており、これを温度風の関係と言います。上空に昇るにつれて水平風のu成分の変化量(温度風)をutと表記すると次のような関係があります。
つまり、温度風の性質としては次の4点を挙げることができます。
(1)等温線に平行に吹く
(2)暖気側を右手に見る方向に吹く
(3)気温傾度(∂Tm/∂y)に比例する
(4)上空に行けば行くほど大きくなる(p1:地上気圧、p2:上空の気圧→上空へ行く程小さい)
従って、転移層を挟む寒暖のコントラストが強化されると、温度風の関係により上空の西風がより強化されていきます。この結果、このコントラスト(∂Tm/∂y)が特に顕著な転移層の上空ではジェット気流が形成されています。
図3.温度風の関係
温度風の関係についてさらに考察してみましょう。図3のように転移層を挟む寒気と暖気の気柱を考えると、転移層上空では暖気側から寒気側へと下る等圧面の坂道が形成されます。いま、この坂道の上を運動する空気の塊を考えましょう。この空気の塊は坂道の斜面上にあるため、坂道に沿って暖気側から寒気側に向かって運動させようとする力が考えられる。これはジオポテンシャル傾度力と呼ばれ、傾圧性によってもたらされるものです。その一方で、この空気塊には地球の自転に伴うコリオリの力が働いている。すなわち、この二つの力が釣り合う事で、空気塊は水平方向(西向き)に運動するのです。これは地衡風の関係と良く似ていますね。
転移層を挟む高緯度側の寒気と低緯度側の暖気の寒暖コントラスト(∂Tm/∂y)が強化されると、暖気側と寒気側の高低差が増す事に伴って、等圧面の坂道勾配が急となるため、傾圧性が強化されます。そして、力の釣り合いの関係からコリオリの力も強化されていきます。この結果、空気塊の速度はさらに増加する・・・という一連の仕組みが働くのです。
(p.s.)
「層厚と温度風のイメージ」では、さらに詳しく図解しています。
さて、今日は「温度風の関係」を取り上げることにしましょう。当初は温度風の性質と「水平風の鉛直シアー」とかいう定義を暗記していましたが・・・後述の図3のような傾圧性に基づく力学的なイメージを構築できたことで、ようやく本質を掴む事ができました。今こうして、気象学を独学で学んだ日々を振り返ってみると・・・温位と温度風は特に難解な概念でしたね・・・。
図1.大気大循環と転移層・ジェット気流のモデル図
図1に示すように二つの循環が隣接する領域では、異なる循環の、互いに性質の異なる大気同士がぶつかり合うため転移層が形成されます。この領域では温度も急変するため、その水平傾度(∂Tm/∂y)も大きくなります。
この時、後述する温度風の関係に基づいて、この転移層の上を強い偏西風の流れであるジェット気流が走向します。極循環とフェレル循環の間の転移層上空を走るジェット気流は寒帯前線ジェット気流(ポーラージェット)と呼ばれ、フェレル循環とハドレー循環の間の転移層上空を走るものは亜熱帯ジェット気流(サブジェット)と呼ばれます。中緯度地方の日々の天気はこれらのジェット気流の動きによって大きな影響を受けているのです。
ここからは(北半球の)中緯度地方に限定して考えていきましょう。
図2.上空のジェット気流・転移層と地上前線の関係
転移層の上空には偏西風ジェット気流が走向している一方で、転移層は地上では前線の形で現れます。この構造を模式的に示したのが図2です。中学校の理科(第二分野)では、二つの異なる性質を持った大気がぶつかり合う接触面を前線面、そして前線面が地上に達する領域を前線と履修した筈です。実は、この前線面はある程度の厚みを持った層状の構造となっており、これが転移層なのです。
転移層の北側は相対的に低温、南側は相対的に高温となるため、両者の間の温度差が大きくなればなるほど(寒暖のコントラストが強まるほど)、その転移層における水平傾度(∂Tm/∂y)は大きくなります。この温度傾度に比例して上空の西風が強まる事が理論的に知られており、これを温度風の関係と言います。上空に昇るにつれて水平風のu成分の変化量(温度風)をutと表記すると次のような関係があります。
ut = ( R / f )( ∂Tm / ∂y ) ln(p1 / p2 )
つまり、温度風の性質としては次の4点を挙げることができます。
(1)等温線に平行に吹く
(2)暖気側を右手に見る方向に吹く
(3)気温傾度(∂Tm/∂y)に比例する
(4)上空に行けば行くほど大きくなる(p1:地上気圧、p2:上空の気圧→上空へ行く程小さい)
従って、転移層を挟む寒暖のコントラストが強化されると、温度風の関係により上空の西風がより強化されていきます。この結果、このコントラスト(∂Tm/∂y)が特に顕著な転移層の上空ではジェット気流が形成されています。
図3.温度風の関係
温度風の関係についてさらに考察してみましょう。図3のように転移層を挟む寒気と暖気の気柱を考えると、転移層上空では暖気側から寒気側へと下る等圧面の坂道が形成されます。いま、この坂道の上を運動する空気の塊を考えましょう。この空気の塊は坂道の斜面上にあるため、坂道に沿って暖気側から寒気側に向かって運動させようとする力が考えられる。これはジオポテンシャル傾度力と呼ばれ、傾圧性によってもたらされるものです。その一方で、この空気塊には地球の自転に伴うコリオリの力が働いている。すなわち、この二つの力が釣り合う事で、空気塊は水平方向(西向き)に運動するのです。これは地衡風の関係と良く似ていますね。
転移層を挟む高緯度側の寒気と低緯度側の暖気の寒暖コントラスト(∂Tm/∂y)が強化されると、暖気側と寒気側の高低差が増す事に伴って、等圧面の坂道勾配が急となるため、傾圧性が強化されます。そして、力の釣り合いの関係からコリオリの力も強化されていきます。この結果、空気塊の速度はさらに増加する・・・という一連の仕組みが働くのです。
(p.s.)
「層厚と温度風のイメージ」では、さらに詳しく図解しています。
温度風が相対的な風といわれても今までピンとこず、
理解に苦しんでいましたが、これを読んですっきりしました。
力学的なアプローチをとても理解しやすく説明してくださりとても助かりました。
一点だけわからなかったところがありまして、
温度風の関数において"f"が何を指しているのか教えて頂けないでしょうか><;
このようなイメージを描くことが出来て、それまでバラバラだった知識が色々とつながってきました。
さて、ご質問の件ですが、fはコリオリ・パラメーターで「f=2Ωsinφ」の事です。気象力学ではこのような表記を多用するようです。
コリオリ力ですね。
この式を見て、これは寒帯ジェットが冬季に南下することに関連しているように思いました。
冬季は圏界面高度が低くなり、Rが小さくなる、
力学的エネルギー保存則があるとすると、
Uを保存するためにsinφが小さくなるため、
寒帯ジェットが南下する。
(極と赤道の温度差は、夏季と冬季において定性的に変化がないということから、転位層の厚さの変化を省いています)
他のページも気になる内容ばかりでとても勉強になります。
いろいろな現象が、実は相互につながっている、ということが、数式を通じて見えてきます。
これもまた面白いところですね。