計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

4種類の線状降水帯

2022年06月20日 | お天気のあれこれ
 暦も6月に入り、梅雨前線の季節が近づいてきました。豪雨などの大雨に伴う被害が未然に防止されることを願って止みません。

 梅雨の時期はやはり「大雨」が気になります。集中豪雨のような大雨において重要な要因は、下層約1kmまでの範囲内に含まれる水蒸気量です。また、大雨がもたらされた結果、その上空3km程度の高さで湿舌が形成されます。

 さて、暖かく湿った空気が流れ込む等の要因で、大気の状態が非常に不安定になると、活発な対流が起こりやすくなります。このような場において、地形の影響等から誘発された上昇気流に伴って積乱雲が発生します。

 そして、様々な条件が重なると、積乱雲が列を成すような線状の激しい降水域(線状降水帯)が形成されます。今回は、線状降水帯の主な4つのパターンについて簡単なイメージを描いてみました。

(1) バックビルディング型

 下層の風と中層の風の向きが同じ場合、発生した積乱雲は中層の風に伴って風下側に移動します。そして、この背後には新たな積乱雲が発生します。

 このように同じ場所(後方)で積乱雲が次々に発生するパターンを「バックビルディング型」と言います。なお、バックビルディング型の線状降水帯については、過去にこちらの記事にも書きました。




(2) バックアンドサイドビルディング型

 下層の風と中層の風の向きが直向する場合、発生した積乱雲は中層の風に伴って風下側に移動します。ただ、下層の風が側方から加わるので、積乱雲の移動方向は少しずつ斜めに傾いていきます。そして、この積乱雲の背後や側方で新たな積乱雲が発生します。

 このように後方に加えて側方でも積乱雲が次々に発生するパターンを「バックアンドサイドビルディング型」と言います。上から見ると、雲や雨の領域は細長い三角形(ニンジン型)を形成しています。(中層の風の)風下側を頂点とし、風下に向かって横幅が広がるためです。




(3) スコールライン型

 下層の風と中層の風の向きが逆向きの場合、両者のぶつかり合う領域(収束帯)で上昇気流を生じます。この上昇気流に伴って積乱雲が発達するため、収束線収束帯)に沿って幾つもの積乱雲が列を成すような形となります。このようなパターンを「スコールライン型」と言います。


(4) 破線型

 局地前線上に暖かく湿った空気が流入することで、前線上に積乱雲が発生します。もともとは、前線上に個々の積乱雲が生じるため、破線を描くような形となります。これらの積乱雲の発達に伴い、その領域が広がることで線状の降水帯となります。



 日本で多く見られるのは、「バックビルディング型」と「破線型」と言われています。

 ※以上、4つのパターンについて紹介しましたが、実際の雲列を取り巻く風の流れはとても複雑です。その詳しい立体構造については、この記事では割愛しています。


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