計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

層厚を用いた「高気圧の2段重ね」のイメージ

2018年07月21日 | お天気のあれこれ

 夏季の厳しい猛暑の折、その要因として「太平洋高気圧の上にチベット高気圧が重なって『高気圧の2段重ね』となる」という解説を良く見聞きします。簡単な絵に表すとこんな感じです。


 それでは、どうして暑さが厳しくなるのか。「層厚」の考え方を基に考えてみたいと思います。今回は、層厚のイメージについては、記事「層厚と温度風のイメージ」を前提として考えます。主なポイントは次の5点です。

1.空気の層を柱に見立てます。これを気柱と言います。
2.気柱は、ブロック状の空気の塊(空気塊)を縦に積み上げたものと考えます。
3.空気塊はその上に載っている空気の重さを受けて、断熱圧縮されます。
4.このため、気柱の上の方では空気塊は膨張し、下の方の空気塊は圧縮されます。
5.つまり、気柱の上から下に向かって、空気塊の温度は次第に上昇します。

 この考え方に基づいて、チベット高気圧と太平洋高気圧の層厚のイメージを模式的に描いてみます。

 チベット高気圧は、大陸の標高の高い所で形成され、次第に東へ広がってきます。一方、太平洋高気圧は海面上から上空にかけて厚みをもっており、西へ広がります。これを踏まえて、二つの高気圧を高さの異なる気柱として描いています。

 また、気柱の上端から下端に向かって空気塊の温度が上昇する様子を、色分けして表しています。



 二つの高気圧はやがて、部分的に重なります。太平洋高気圧の気柱の上にチベット高気圧の気柱の重さが圧し掛かります。このため、太平洋高気圧の気柱は圧縮され、さらに温度が上がります。



 この結果、この二つの気層は一つの重厚な気層になります。気柱の上から下に向かって、空気塊の温度は次第に上昇する構造が出来上がります。この時、気柱の底面の温度は、重なる前の太平洋高気圧の底面の温度よりも高くなっています。



 このようにして、太平洋高気圧だけに覆われる場合に比べて、太平洋高気圧とチベット高気圧の2段重ねの方が、より暑さが増すと考えることが出来ます。


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