アヴァターラ・神のまにまに

精神世界の研究試論です。テーマは、瞑想、冥想、人間の進化、七つの身体。このブログは、いかなる団体とも関係ありません。

錬金術師マリア・プロフェティサの公理

2023-02-15 07:03:11 | 両性具有or天国と地獄の結婚

◎第四のものとして全一なるものの生じ来る

 

マリア・プロフェティサは、3世紀アレクサンドリアの錬金術師。『一は二となり、二は三となり、第三のものから第四のものとして全一なるものの生じ来るなり』という錬金術1700年の歴史を貫く公理を呈示した女性。

 

この公理について見事に説明し得た文が以下にある。

『さらに、ユングが述べるのは、三位一体が男性的な数、三の象徴に基づいているのに対して、錬金術は神が四一性の(quaternarian) 観点 (四は女性的な数)に傾いているという事実です。続けて、次のような結論を述べます。

 

それゆえ、三位一体は決定的に男性的な神性であり、キリストの両性具有(アンドロギュノス)、そして、神の母に授けられた特別の地位と尊崇はその男性的神性に十分対等のものではない。

 

〔キリストやマリアの位置づけは〕いわば、女性的な側面へのわずかな譲歩であって、真実、同等のものとはなっていないということです。

 

このような断言を読者は奇妙に思うかもしれないが、これによって、錬金術の中心をなす公理の 一つに到達するのである。つまり、マリア・プロフェティサの命題にである。「一が二となり、二が三となる、第三のものから第四のものとして一なるものが生じる。」

本書は、書名からわかるように錬金術の心理学的意義が問題となっている。・・・・・・ごく最近まで、錬金術に学問的関心がもたれたのは、化学の歴史で果たした役割に対してでしかなかった。・・・・・・歴史上の化学の発展に対する、錬金術の意義は明白である。それにひきかえ、精神史上の意義は依然としてあまりにも知られておらず、その意義がどこに存するかをわずかな言葉で述べるのはほとんど不可能と思われる。

そのこともあって、この序文で、宗教的、心理学的問題の概説を試みたのである。······ポ イントは、錬金術が表層で支配的であったキリスト教に対する低層流のようなものを形成している、ということである。錬金術のこの表層との関係は夢の意識との関係に相当する。ちょうど、夢が意識の葛藤を補償するように、錬金術はキリスト教の対立物の緊張によって開かれたままになっている亀裂を埋めようと努める。

おそらく、この事態を表現するもっとも意味深長なものは、先に引用したマリア・プロフェティサの公理である。・・・・・・このアフォリズムにおいては、キリスト教教義の奇数のあいだに偶数がはさみこまれている。偶数は女性的なるもの(女性原理)、大地、地下的なるもの(地下領域)、〔それどころか〕悪そのものをも意味している。これらは「メルクリウスの蛇(セルペンス・メルクリー)」、つまり、自らを創造し、破壊する、「第一質料―プリママーテリア」をも表す龍として、人格化される・・・・・・・。

世界史上で、意識が「男性的な」側へと移行したことが補償されるのは、〔なによりも〕 無意識の地下的、女性的なるものによってである。キリスト教以前の諸宗教のなかには、すでに男性原理が父・息子の特殊化したかたちでの分化を開始していた宗教が存在する。』

(ユング思想と錬金術/M-L.フォン・フランツ/人文書院P47-49から引用)

(文中の引用部分は、ユングの心理学と錬金術ⅠのP40付近)

 

一は、主なる神。これがマーヤ、無明、現象に分化して二。父なる神と聖霊とイエス(男性なる人間)が出現して三。これで家父長的な三位一体は成る。

 

ここでマリア・プロフェティサは、キリストが脇腹から女を引き出して山頂で交わった幻視を得た(出典:錬金術の世界/ヨハンネス・ファブリキウス/青土社P343)というが、これが四。

 

M-L.フォン・フランツは、男性原理が父・息子の特殊化したかたちでの分化を開始していた宗教の例としてエジプトを挙げる。

 

我が日本神話では、天の安の河原での誓約で天照大神の霊と、素盞嗚尊の霊とが一緒になって両性具有たる伊都能売神となったのが、三位一体の外での四位一体の完成。これでも女性原理の復活はまだ不足だったのか、さらに山幸彦である火遠理命が地より更に下の竜宮にまで落ちて後、地に復帰して世界統一をするのが太母の体験を経て、四位一体を更に完成する姿にも見える。

 

似たようなモチーフが二重三重に繰り返されることがあって、はぐらかされがちだが、それでも真理を見ようとする目があれば、わかる場合があるのではないか。

 

なおユングは、キリスト教の四位一体を次のように示している。

       聖霊(鳩)

キリスト    +     父なる神

       聖母マリア

(出典:結合の神秘Ⅰ/ユング/人文書院 P237)

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