8月15日に既に放送が終わっていますが、NHKプレミアムドラマ「ライオンのおやつ」が全8回にわたって放送されていました。
このドラマは小川糸による小説をドラマ化したもので、2020年度の第17回本屋大賞第2位を受賞した作品です。
内容は、ひとり暮らしをしていた海野雫が医師から余命宣告を受け、最後の日々を過ごす場所として瀬戸内の海が見えるホスピス「ライオンの家」を選び、そこで暮らし始めるのですが、雫と仲間たちの命の輝き、出会いの素晴らしさを描いた感動のドラマでした。
7月6日に放送されたその第2回目で、鈴木京香演じるマドンナが、主演の土村芳演じる海野雫に「酥(そ)」というお菓子を渡し、それができる過程を説明するシーンがありました。
「酥(そ)」
その時のセリフは、「酥(そ)」は「牛乳を火にかけてず~と煮込んだものです。」
と言い、続いて「牛より乳(にゅう)を出し、乳より酪(らく)を出し、酪より生酥(しょうそ)を出す、生酥より熟酥(じゅくそ)を出し、熟酥より醍醐を出す。醍醐は最上なり」。
更に続けて「酪(らく)」は今でいうヨーグルト、「生酥(しょうそ)」は生クリーム、「熟酥(じゅくそ)」はバター、「醍醐」は乳よりできる最上級の美味しいものです。
と説明していました。
そこで今日は最上級と言われる醍醐の由来について、もう少し詳しく調べてみました。
「醍醐味」
醍醐味とは、仏教用語の五味の一つで「最高の美味」を意味する言葉です。
そこから転じて、現在では「物事の本当の面白さ」「深い味わい」を意味する言葉となっています。
「醍醐の由来」
仏教では牛や山羊のミルクを精製する過程を5段階に定めていました。それを「五味」と言います。
五味は「乳」から「酪(らく)」「生蘇(しょうそ)」「熟蘇(じゅくそ)」へ変化し、そして「醍醐(だいご)」になります。
そのなかでも醍醐は一番上質なものとされ、現在のヨーグルトやレアチーズ、バターなどの濃厚な味わいの食品だったそうです。
「大般涅槃経(だいはつねはんきょう)の一節『五味相生の譬』の一部」
その仏教用語の「五味」の成り立ちの過程をドラマではマドンナが説明していたのです。
大般涅槃経の一節には次のような譬(たと)えが載っています。
『牛より乳を出し、乳より酪(らく)を出し、酪より生蘇(しょうそ)を出し、生蘇より熟酥(じゅくそ)を出し、熟酥より醍醐を出す。醍醐は最上なり。もし服するものあらば衆病皆除く。あらゆる諸薬はことごとく其の中に入るがごとし。
仏の教えもまた同じく、仏より十二部経(じゅうにぶきょう)を出し、十二部経より修多羅(しゅたら)を出し、修多羅より方等経(ほうどうきょう)を出し、方等経より般若波羅蜜(はんにゃはらみつ)を出し、般若波羅蜜より大涅槃(だいねはん)を出す』
と続いています。
数々の経典を経た最終形態が大涅槃経という内容の例えとして、乳製品の最上級品である醍醐が使われているのです。
「幻の食品・醍醐」
醍醐とは、平安時代に皇族や貴族に食されていた超高級な乳製品でした。
酪農文化は飛鳥時代より始まり、肉食が禁じられた後は人々の貴重な動物性タンパクの摂取源となっていました。
その醍醐はバターとヨーグルトの中間のようなものと言われていますが、製法を失ってしまっており’、現在では幻の食品と’なっています。
しかし「蘇」という醍醐の1つ手前の乳製品は製法も現存し、食べることもでき、濃厚な味わいでワインともよく合うのだそうです。