名古屋するめクラブ

~名古屋発くうみるあそぶ~

<映画>「ラスト・コーション(色・戒)」

2008年02月11日 23時24分20秒 | 観る(映画・TV)
『LUST・CAUTION(「色・戒」)』。

最初は一体アン・リーがこの映画で何を言わんとしたのか理解できませんでした。

が、これはラブストーリーですね。究極のラブストーリー。



極々簡単に言ってしまえば、

「殺人を企ててた敵に女スパイが徐々に心を奪われていくという、
笑いもオチも撃ち合いもないノアール的Mission Impossible」。

わかりにくいかな(笑)。

舞台は日本占領下の中国、上海・香港。

メインキャストは、トニー・レオン、タン・ウェイ、ワン・リーホンの3人。

トニー・レオンは日本人の犬?的体制側役人の役回り、タン・ウェイ&
リーホンはトニー・レオンの殺害を企てようとする理想主義愛国運動家。



ワン・リーホン


日本人にとっては決して心地よいテーマではないかもしれませんが、
その込み入った時代背景下でも、そんな複雑な人間関係下でも、
ある意味「真実の愛」が存在した、、、と。

つまり、むしろ「世界の中心で愛を叫ぶ」なのです。

そのシンプルなプロットが全くありきたりのものになっていないのは、
ひとえにトニー・レオンの存在感と、


トニー・レオン


彼を支える(実際は支えられた)タン・ウェイ、リーホン2人のピュアな美しさ、




そして、

たぶん時代を忠実に再現させた映像美、細部に渡る例えば
麻雀シーンや当時の観音開きドアの車(たぶんフォード?)、
仕立屋、宝石屋等の細心に気を配られた演出の上手さでしょうか。

アン・リー監督は撮影に入る前、言葉以外に書道・麻雀等を習わせ、
当時の音楽や映画に浸らせたりして、まずは当時の雰囲気に馴染ませる
ところから演技指導を始めたらしいのですが、なるほど、俳優のちょっとした
仕草や映像の端々ににじみ出る空気感には、見るものをも知らず知らず
のうちに1940年初頭へタイムスリップさせるほどの臨場感がありました。


ラスト、コーション 色・戒
アイリーン・チャン
集英社
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 映画(原作)のタイトルは、「色・戒」。

「論語(李子編)」、「君子有三戒」より。





タイトルは、この『三戒』と、作品中とても重要なモチーフとして
使われている『戒(中国語で指輪の意)』にかけて付けれたようです。

売国者を愛してしまうというテーマも華人社会では忌み嫌われる
ものらしいのですが、他にもきっと文化時代背景的モチーフが
随所に盛り込まれているはずですから、わかる人が見れば、
そんな意味でも見所は満載なんでしょうね。





ところでこの映画、

海外ではその大胆な性描写について様々な物議をかもしたらしいですが、
あのシーン、私にはなぜかジョン・レノンとオノ・ヨーコに見えました。

つまりあの、

ジョン・レノンが暗殺される直前に撮影した
オノ・ヨーコとのツーショットを髣髴させる

『思想(愛)に裏付けされつつ、
巧妙に計算された構図の下撮影されたフォトグラフィー』

みたいな。

わかりにくいね、やっぱり(笑)。



「ラスト、コーション(色・戒)」2007年(158分)
アメリカ・中国・台湾・香港
配給 : ワイズポリシー
監督 : アン・リー
  原作 : アイリーン・チャン
  出演 : トニー・レオン、タン・ウェイ、ワン・リーホン他


PS1.何度も自慢気にくどくど書いてますが、去年台湾に行った時、この映画のキャンペーンのため訪台してた、アン・リー監督と主演のタン・ウェイ、リーホン君と運命的な出会いを果たしました。監督は思いの外小柄という印象でしたが、タン・ウェイもリーホンも独特なスターオーラを全身から発していました。この、台湾最後の夜の、偶然のようできっと必然だった運命の出会いがいかに私を狂喜させたかは言うまでもありません。その狂喜振りについて「旅の恥はかき捨て!」と言い放ちたいところですが、残念ながら2人の友人と地元テレビ局に目撃されてしまいました。というわけで、いつもより長め、少々興奮気味にコメント書かせていただいております(笑)。。。あしからず。



PS2.E-chan,パンフ読んでいろいろ勉強になりました。リーホン君がマサチューセッツのWilliams College卒業後Barkleeに進んだ(彼はインテリだ!)こととかね(笑)。それから美味しいシャケのおにぎりとお茶もありがと!謝謝!


映画「ラスト、コーション」
ユニバーサル ミュージック クラシック
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『論語(李子編) 「君子有三戒」』
「君子に三戒あり。
少(わか)き時は、血気いまだ定まらず、これを戒むること色に在り。
その壮なるに及んでは、血気まさに剛なり、これを戒むること闘に在り。
その老いるに及んでは、血気すでに衰う、これを戒むること得に在り。」
(意訳)
1.血気定まらぬ青年時代には、色欲を自重する。2.血気盛んな壮年時代には、闘争欲を自重する。3.血気衰える老年期には、物欲を自重する。
色、闘、得、この三つはいずれも、ほどほどに発揮すると、人生を生きる活力になるが、これが過剰に出てくると自分を破滅させる元になる。