どんもーこんばんは。そうだいです。2月も始まりましたが、先月から引き続いて天気がいいですね~。ずっと乾燥しているのがちょっと気にかかりますが。
散歩したいね~! でも、ここ数日は外に出たら仕事だし、帰ってきたら眠るだけだし……たぶん、もうちょっとして時間に余裕ができたら、今度は外の天気がくずれだすんだろうなぁ! 世の中そんなもんよ……
ともかく、最近はカゼをひくことも許されない日々が続いております。そんなこと言っても、半日働くだけであと半日は自由時間なわけなんですが、とにかく自由に休める時間のほうも、なるべく体調をととのえて心身ともにすこやかにしていなければならないんですね。特に今は、カゼとかインフルエンザが流行してるらしいから。
しかし……ここのところ私は、明らかに精神によくない影響をあたえるマンガにハマッてしまっております。あぁ~、ヤだなぁ、このマンガぁ。でも、ついつい読んじゃうんです。
読んでいるのは、ちょっと前のマンガです。中山昌亮(まさあき)の『不安の種+(プラス)』。
2007年から翌08年まで『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載していたもので、コミックスが全4巻発売されています。
いや~。嫌なマンガだね、ホントにこれは! でも、それこそがこの『不安の種+』の最大の魅力。「読んでいて実に嫌な気分になる」という感想こそが、この作品に対する最大のホメ言葉となるのです!
要するに、ジャンルでいうと「ホラー」に入るマンガなんですが、作中に登場する恐怖の対象は、「恐い」も充分にありつつ、それ以上に「いたらイヤだ!」という感情にうったえる存在なのです……
『不安の種+』は、「+」とあることからもおわかりの通り、もともとは同じ秋田書店から発刊されているマンガ雑誌『月刊チャンピオンRED』で連載されていた『不安の種』が週刊誌に移籍したというものだったのですが、『不安の種』も『不安の種+』も、ほとんど同じ一話完結オムニバス形式の短編集となっています。
読んでビックリほんとに短編で、1話あたりたったの2~12ページしかありません。2ページで終わってる話もあるんだぜ!? しかし、職人芸的な手際のよさで、猫の額ほどのスペースに恐怖がギッチギチにつまっておる!
内容は完全に「実話恐怖体験の報告」形式で、学生やサラリーマンなどの何の変哲もない一般人が突如として「理屈で説明できない何か」に遭遇してしまうといったエピソードが集められています。
作品がどの程度「実話」でどの程度「作者の創作」なのか。その配分のほどは明らかになっていないのですが、とにかく、いったいどうしてその話の主人公が「それ」に出くわすことになってしまったのか? 「それ」はなぜそこにいるのか? そもそも「それ」はなんなのか? そして、「それ」に見つけられてしまった主人公はそれからどうなってしまったのか? すべてが明らかにされないまま、そのエピソードは終わってしまうのです……
ただし、そのエピソードが確実に伝えているのは、主人公が「それ」に出会った時に感じた「恐怖」と、「いやだな」という生物的に正直な反応! そこだけは毎回毎回、中山先生がおのれの全キャリアをそそいで描ききっています。
つまり、『新耳袋』や『ほんとにあった!呪いのビデオ』のように、ストーリーの流れを丁寧に説明するよりも、まず第一に体験者が感じたショックを伝えることに重心をおいている作品なんだと思います。
ところで、私は今さらになってなぜ、とっくに連載も終了していた『不安の種+』を手に取るようになったのか?
こりゃもう、理由は簡単。「手に取る勇気がなかなかわかなかったから」でございます……超ビビリ。
最初に私がこのシリーズの存在に気づいたのは、数年前に本屋さんで立ち読みをした時でした。
正確には、その時に私が出会ったのは『不安の種+』ではなくその前作にあたる『不安の種』のコミックスだったのですが……
とにかくまぁ1話1話が短いので、パラパラめくってみただけでもオチにあたる恐怖描写がつるべ打ちで目に入ってくるんですね! しかも、絵柄がリアルで恐すぎる~。
私、ギャグマンガがおもしろすぎて立ち読みできないという経験はあったのですが、ホラーマンガが恐すぎて立ち読みできないというのは初めてでした。
その時はもう、「買って家でじっくり読む」という選択肢はなかったですね。家に入れたくもないくらいにイヤだったんです。これはものすごい作品ですよ!
しかしまぁ、いつまでも怖がっているばかりでは何も進展しません。食ってみなけりゃあ、おいしいかどうかはわかんねぇんだ!
かつて、こわくて大嫌いだったホラー映画を克服しようとして『サスペリア』あたりをムリヤリレンタルし、それ以来ホラー映画が逆に大好きになってしまったという経歴のある私の血が再びさわぎました。
「やったろうじゃねぇか! おばけでもなんでもかかってきやがれ!」
つうことで、満を持して今回『不安の種+』を購入したわけだったのですが(前作『不安の種』は残念ながら見あたりませんでした)……
ンギャ~! やっぱこえぇよ~。
もうダメです……いちいち、オチにやってくるビックリ描写に「こわい~!」「イヤ~!」の連発ですよ。
ただ、ここで大事なのは、作者の中山先生の筆が非常にストイックにひとつひとつの「不安の種」と向き合っているというところです。そこにある種の「闘いの姿勢」があるからこそ、およそ100篇はあるこの作品集を最後まで読み通す勇気が、読者である私にもわいてくるのです。
たぶん、作者が「恐いでしょ、ホラ、恐いでしょ?」といわんばかりにズンズン迫ってくるマンガだったら、こっちも怖さの押し売りに早々にウンザリしてしまったかもしれないんですが、中山昌亮という漫画家のペンには、特有の「クールさ」があって、その冷めた距離感が絶妙なんですねぇ。
なんらかの関係があるのかどうかはわからないのですが、私の印象としては、中山先生の絵のタッチは、『ヒストリエ』や『寄生獣』で有名な岩明均に似ているような気がします。特に、人間の顔を描いた時の「眼」と「口」の感じね!
どっかドライなんだなぁ。でも、描く線は岩明先生ほど細くもなく、全体的にもっと少年漫画っぽいあたたかみもあるんですが。そこらへんの温度のバランスがいいんですね。
体験者の日常に寄り添うようにあったかく始めておきながら、非日常の空気が流れた瞬間に冷徹なタッチに豹変する……キィーッ、この、意地悪!
ええーい、このまま「あ~、こわかった。」で終わっては気が済まぬ。こうなったら、『不安の種+』の「こわさ成分」を分析してやる!
ということで、今回読んだ全112話の「オチとなったもの」の描かれ方を分類分けしてみました~。
大きく3種類にわけました。それぞれのエピソードで主人公が体験した「こわ~い不安の種」が、オチで「ハッキリと描写されるパターン」と、「直接には描写されないで雰囲気だけでジンワリくるパターン」、そして「こわくはないが常識では説明のつかない現象と出くわすパターン」の3つでございます。
ことわっておきますが、これは私そうだいがあくまでも主観で判定したものです。他の方が読んだらもうちょっと違う結果になるかもしれません。
それぞれのパターンの横に並んでいる4つの数字は、第1巻・2巻・3巻・4巻での該当するエピソードの話数です。
こわいものがハッキリ描写される話 …… 17・12・11・8
こわいものが直接には描写されない話 …… 11・19・14・7
こわいというより不思議な話 …… 5・1・3・4
いやぁ、調べてみるもんですね! 『不安の種+』の1年にわたる連載の中での、「こわさ」の傾向がおわかりでしょうか?
ちょっと最終の第4巻のトータル話数だけ少なくなっているんですが、全体的に3パターンの配分がほぼ一貫していることがわかりますね。
私がビックリしたのは、あんなに「恐い!恐い!」と感じておきながら、そのこわさの「正体」が実際にコンニチワしているオチの数は、全体の半分にも達していないってことなのね。
やられた! つまり私は、中山先生の創り出した世界の雰囲気に完全にのまれてしまって、勝手に恐いものの「正体」を想像してこわがっていたのです。やっぱビビリだわ、私!!
うーん、調べてなおさらわかった、中山昌亮と『不安の種+』のスゴさ。てぇしたもんだ。
ほんとに全エピソード粒ぞろいなんですけど、私としては、その中でも特に気に入ったものがいろいろありました。
第1巻はやっぱり「おちょなんさん」のヴィジュアルインパクトが反則すぎなんですが、第1話「日課」は想像するだにこわい。第25話「みんない」も、コンビニでアルバイトをしたことのある人なら誰でもゾッとするんじゃないでしょうか。でも、恐くはないですが第9話「時間差?」と第27話「ポスター」の不思議な浮遊感は大好き! 第6話「早朝の珍事」で、『ダウンタウンのごっつええ感じ』の名作コントを想起される方も多いのでは? 恐怖と笑いは紙一重。
第3巻は、約束破りの「あれ?」なラストが秀逸な第71話「催促」がいいですねぇ。第74話「人混み」の強引すぎる力わざ感も素晴らしい。第78話「タクシー」は……なんか、不景気な昨今ホントにありそうな話だったので、恐いというよりむしろ哀しくなってしまいました。第88話「ある朝」は大好きですね。いい顔してるなぁ~、あの人。
第4巻はなんといっても、都市伝説みたいなにおいがプンプンする第96話「目撃証言」がベタすぎていいです。思わず『伝染るんです。』の単行本を思い出してしまった第100話「昨日の目」はおいといて……第102話「留まる」もシンプルな構成がきれい。
でもまぁ、すべてのシメとなる最終話「終章に代えて…」が、私としては全話中もっとも恐かったのには一本とられました。イヤ~んバカんス! 中山先生ってたぶん、「焦点のあっていない眼」が嫌いなんだろうな。
今回、『不安の種+』を通読して感じたこと。
「納得のいかないものごとには、素直に怒りをぶつけよう。」
『不安の種+』の中のいくつかには、明らかに「非日常なもの」がおびえる一般人を見て「悪ノリ」しているケースがありました。
特にひどいのは、第2巻の「ネジ目男」シリーズと第65話「高架下」ね。お前ら、ただの変態じゃねぇか!! どうせてめぇら、好みの女の子じゃなかったら襲わねぇんだろ。差別してんじゃないよ!
ほんとに、おばけと変態はつけあがらせたらタチが悪いです。
要するに「不安の種」は、見る人の心に定着できる土壌があるからスクスク育ってしまうんだな。そんな種、見つけしだい口に入れてヒマワリの種みたいにかみ砕いちまえ!
最後に、私が昔、今以上にビビリだった時になにかの本で読んで「へ~、そんなもんなんだ!」と感心してしまった怪談をひとつ。
ある夜。受験生のTくんは自分の部屋で勉強をしていた。
午前2時をまわり、疲れてきたTくんがふと顔をあげると、正面の窓の外に緑色の顔をした男がいて、Tくんを凝視していた。
一瞬ぎょっとしたTくんだったが、なぜか恐怖よりも先にムラムラと怒りの感情がこみ上げてきた。
「こいつはこの世界にいては絶対にいてはいけないヤツだ。しかもこいつは、勉強で疲れているところにつけこんで出てきて、俺を驚かそうとしている。許せない!」
Tくんは緑色の顔をにらんでこう念じた。
「見てないでお前も勉強しろ、バカヤロー!」
緑色の顔をした男は哀しそうな表情をして消え去り、Tくんはそれ以後、二度と彼に会うことはなかったという……
病は気から!! 気合いだ~、オイ、オイ、オイ~!
今度は、前作の『不安の種』のほうも買ってみーようっと。
散歩したいね~! でも、ここ数日は外に出たら仕事だし、帰ってきたら眠るだけだし……たぶん、もうちょっとして時間に余裕ができたら、今度は外の天気がくずれだすんだろうなぁ! 世の中そんなもんよ……
ともかく、最近はカゼをひくことも許されない日々が続いております。そんなこと言っても、半日働くだけであと半日は自由時間なわけなんですが、とにかく自由に休める時間のほうも、なるべく体調をととのえて心身ともにすこやかにしていなければならないんですね。特に今は、カゼとかインフルエンザが流行してるらしいから。
しかし……ここのところ私は、明らかに精神によくない影響をあたえるマンガにハマッてしまっております。あぁ~、ヤだなぁ、このマンガぁ。でも、ついつい読んじゃうんです。
読んでいるのは、ちょっと前のマンガです。中山昌亮(まさあき)の『不安の種+(プラス)』。
2007年から翌08年まで『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載していたもので、コミックスが全4巻発売されています。
いや~。嫌なマンガだね、ホントにこれは! でも、それこそがこの『不安の種+』の最大の魅力。「読んでいて実に嫌な気分になる」という感想こそが、この作品に対する最大のホメ言葉となるのです!
要するに、ジャンルでいうと「ホラー」に入るマンガなんですが、作中に登場する恐怖の対象は、「恐い」も充分にありつつ、それ以上に「いたらイヤだ!」という感情にうったえる存在なのです……
『不安の種+』は、「+」とあることからもおわかりの通り、もともとは同じ秋田書店から発刊されているマンガ雑誌『月刊チャンピオンRED』で連載されていた『不安の種』が週刊誌に移籍したというものだったのですが、『不安の種』も『不安の種+』も、ほとんど同じ一話完結オムニバス形式の短編集となっています。
読んでビックリほんとに短編で、1話あたりたったの2~12ページしかありません。2ページで終わってる話もあるんだぜ!? しかし、職人芸的な手際のよさで、猫の額ほどのスペースに恐怖がギッチギチにつまっておる!
内容は完全に「実話恐怖体験の報告」形式で、学生やサラリーマンなどの何の変哲もない一般人が突如として「理屈で説明できない何か」に遭遇してしまうといったエピソードが集められています。
作品がどの程度「実話」でどの程度「作者の創作」なのか。その配分のほどは明らかになっていないのですが、とにかく、いったいどうしてその話の主人公が「それ」に出くわすことになってしまったのか? 「それ」はなぜそこにいるのか? そもそも「それ」はなんなのか? そして、「それ」に見つけられてしまった主人公はそれからどうなってしまったのか? すべてが明らかにされないまま、そのエピソードは終わってしまうのです……
ただし、そのエピソードが確実に伝えているのは、主人公が「それ」に出会った時に感じた「恐怖」と、「いやだな」という生物的に正直な反応! そこだけは毎回毎回、中山先生がおのれの全キャリアをそそいで描ききっています。
つまり、『新耳袋』や『ほんとにあった!呪いのビデオ』のように、ストーリーの流れを丁寧に説明するよりも、まず第一に体験者が感じたショックを伝えることに重心をおいている作品なんだと思います。
ところで、私は今さらになってなぜ、とっくに連載も終了していた『不安の種+』を手に取るようになったのか?
こりゃもう、理由は簡単。「手に取る勇気がなかなかわかなかったから」でございます……超ビビリ。
最初に私がこのシリーズの存在に気づいたのは、数年前に本屋さんで立ち読みをした時でした。
正確には、その時に私が出会ったのは『不安の種+』ではなくその前作にあたる『不安の種』のコミックスだったのですが……
とにかくまぁ1話1話が短いので、パラパラめくってみただけでもオチにあたる恐怖描写がつるべ打ちで目に入ってくるんですね! しかも、絵柄がリアルで恐すぎる~。
私、ギャグマンガがおもしろすぎて立ち読みできないという経験はあったのですが、ホラーマンガが恐すぎて立ち読みできないというのは初めてでした。
その時はもう、「買って家でじっくり読む」という選択肢はなかったですね。家に入れたくもないくらいにイヤだったんです。これはものすごい作品ですよ!
しかしまぁ、いつまでも怖がっているばかりでは何も進展しません。食ってみなけりゃあ、おいしいかどうかはわかんねぇんだ!
かつて、こわくて大嫌いだったホラー映画を克服しようとして『サスペリア』あたりをムリヤリレンタルし、それ以来ホラー映画が逆に大好きになってしまったという経歴のある私の血が再びさわぎました。
「やったろうじゃねぇか! おばけでもなんでもかかってきやがれ!」
つうことで、満を持して今回『不安の種+』を購入したわけだったのですが(前作『不安の種』は残念ながら見あたりませんでした)……
ンギャ~! やっぱこえぇよ~。
もうダメです……いちいち、オチにやってくるビックリ描写に「こわい~!」「イヤ~!」の連発ですよ。
ただ、ここで大事なのは、作者の中山先生の筆が非常にストイックにひとつひとつの「不安の種」と向き合っているというところです。そこにある種の「闘いの姿勢」があるからこそ、およそ100篇はあるこの作品集を最後まで読み通す勇気が、読者である私にもわいてくるのです。
たぶん、作者が「恐いでしょ、ホラ、恐いでしょ?」といわんばかりにズンズン迫ってくるマンガだったら、こっちも怖さの押し売りに早々にウンザリしてしまったかもしれないんですが、中山昌亮という漫画家のペンには、特有の「クールさ」があって、その冷めた距離感が絶妙なんですねぇ。
なんらかの関係があるのかどうかはわからないのですが、私の印象としては、中山先生の絵のタッチは、『ヒストリエ』や『寄生獣』で有名な岩明均に似ているような気がします。特に、人間の顔を描いた時の「眼」と「口」の感じね!
どっかドライなんだなぁ。でも、描く線は岩明先生ほど細くもなく、全体的にもっと少年漫画っぽいあたたかみもあるんですが。そこらへんの温度のバランスがいいんですね。
体験者の日常に寄り添うようにあったかく始めておきながら、非日常の空気が流れた瞬間に冷徹なタッチに豹変する……キィーッ、この、意地悪!
ええーい、このまま「あ~、こわかった。」で終わっては気が済まぬ。こうなったら、『不安の種+』の「こわさ成分」を分析してやる!
ということで、今回読んだ全112話の「オチとなったもの」の描かれ方を分類分けしてみました~。
大きく3種類にわけました。それぞれのエピソードで主人公が体験した「こわ~い不安の種」が、オチで「ハッキリと描写されるパターン」と、「直接には描写されないで雰囲気だけでジンワリくるパターン」、そして「こわくはないが常識では説明のつかない現象と出くわすパターン」の3つでございます。
ことわっておきますが、これは私そうだいがあくまでも主観で判定したものです。他の方が読んだらもうちょっと違う結果になるかもしれません。
それぞれのパターンの横に並んでいる4つの数字は、第1巻・2巻・3巻・4巻での該当するエピソードの話数です。
こわいものがハッキリ描写される話 …… 17・12・11・8
こわいものが直接には描写されない話 …… 11・19・14・7
こわいというより不思議な話 …… 5・1・3・4
いやぁ、調べてみるもんですね! 『不安の種+』の1年にわたる連載の中での、「こわさ」の傾向がおわかりでしょうか?
ちょっと最終の第4巻のトータル話数だけ少なくなっているんですが、全体的に3パターンの配分がほぼ一貫していることがわかりますね。
私がビックリしたのは、あんなに「恐い!恐い!」と感じておきながら、そのこわさの「正体」が実際にコンニチワしているオチの数は、全体の半分にも達していないってことなのね。
やられた! つまり私は、中山先生の創り出した世界の雰囲気に完全にのまれてしまって、勝手に恐いものの「正体」を想像してこわがっていたのです。やっぱビビリだわ、私!!
うーん、調べてなおさらわかった、中山昌亮と『不安の種+』のスゴさ。てぇしたもんだ。
ほんとに全エピソード粒ぞろいなんですけど、私としては、その中でも特に気に入ったものがいろいろありました。
第1巻はやっぱり「おちょなんさん」のヴィジュアルインパクトが反則すぎなんですが、第1話「日課」は想像するだにこわい。第25話「みんない」も、コンビニでアルバイトをしたことのある人なら誰でもゾッとするんじゃないでしょうか。でも、恐くはないですが第9話「時間差?」と第27話「ポスター」の不思議な浮遊感は大好き! 第6話「早朝の珍事」で、『ダウンタウンのごっつええ感じ』の名作コントを想起される方も多いのでは? 恐怖と笑いは紙一重。
第3巻は、約束破りの「あれ?」なラストが秀逸な第71話「催促」がいいですねぇ。第74話「人混み」の強引すぎる力わざ感も素晴らしい。第78話「タクシー」は……なんか、不景気な昨今ホントにありそうな話だったので、恐いというよりむしろ哀しくなってしまいました。第88話「ある朝」は大好きですね。いい顔してるなぁ~、あの人。
第4巻はなんといっても、都市伝説みたいなにおいがプンプンする第96話「目撃証言」がベタすぎていいです。思わず『伝染るんです。』の単行本を思い出してしまった第100話「昨日の目」はおいといて……第102話「留まる」もシンプルな構成がきれい。
でもまぁ、すべてのシメとなる最終話「終章に代えて…」が、私としては全話中もっとも恐かったのには一本とられました。イヤ~んバカんス! 中山先生ってたぶん、「焦点のあっていない眼」が嫌いなんだろうな。
今回、『不安の種+』を通読して感じたこと。
「納得のいかないものごとには、素直に怒りをぶつけよう。」
『不安の種+』の中のいくつかには、明らかに「非日常なもの」がおびえる一般人を見て「悪ノリ」しているケースがありました。
特にひどいのは、第2巻の「ネジ目男」シリーズと第65話「高架下」ね。お前ら、ただの変態じゃねぇか!! どうせてめぇら、好みの女の子じゃなかったら襲わねぇんだろ。差別してんじゃないよ!
ほんとに、おばけと変態はつけあがらせたらタチが悪いです。
要するに「不安の種」は、見る人の心に定着できる土壌があるからスクスク育ってしまうんだな。そんな種、見つけしだい口に入れてヒマワリの種みたいにかみ砕いちまえ!
最後に、私が昔、今以上にビビリだった時になにかの本で読んで「へ~、そんなもんなんだ!」と感心してしまった怪談をひとつ。
ある夜。受験生のTくんは自分の部屋で勉強をしていた。
午前2時をまわり、疲れてきたTくんがふと顔をあげると、正面の窓の外に緑色の顔をした男がいて、Tくんを凝視していた。
一瞬ぎょっとしたTくんだったが、なぜか恐怖よりも先にムラムラと怒りの感情がこみ上げてきた。
「こいつはこの世界にいては絶対にいてはいけないヤツだ。しかもこいつは、勉強で疲れているところにつけこんで出てきて、俺を驚かそうとしている。許せない!」
Tくんは緑色の顔をにらんでこう念じた。
「見てないでお前も勉強しろ、バカヤロー!」
緑色の顔をした男は哀しそうな表情をして消え去り、Tくんはそれ以後、二度と彼に会うことはなかったという……
病は気から!! 気合いだ~、オイ、オイ、オイ~!
今度は、前作の『不安の種』のほうも買ってみーようっと。