《前回までのあらすじ》
そうだいは、応援しているSDN48の小原春香さんが、2ndシングル『愛、チュセヨ』で選抜メンバー第3位に昇格していたことに大喜びしていた。1stシングル『GAGAGA』では第9位だったからなぁ。
小原さん、これからもがんばってくださいね~。
……「チュセヨ」、ねぇ。
8、宇宙人と宇宙怪獣がいっしょにやってきた!
1965年12月『怪獣大戦争』(特撮監督・もちろん円谷英二)
1964年は、かつての宇宙人襲来に続いて、ついに史上初めて本格的な宇宙怪獣が地球に到来した恐怖の年になってしまいました。しかも来ちゃったのは、のっけから宇宙最凶の超怪獣・キングギドラ! キビシ~っ。
その時はゴジラ、ラドン、モスラという地球3大怪獣の団結によってからくもキングギドラの危機をしのぐことはできたのだが、またやって来たらどうしよう……人類の不安はつのる。
しかし! その丸1年後の1965年12月。その不安は現実のものとなってしまいました。しかも、宇宙人と宇宙怪獣というかつてない取り合わせをもって。
1965年の後半。世界中の宇宙開発グループが結束した「地球連合開発局」は、太陽系第5惑星・木星の13番目の衛星「X星」の有人ロケット探査に成功していました。
ちょーっと、ごめんなさい! ここで現実の話をしてしまうのですが、1965年時点では木星の衛星は12個までしか発見されていませんでした。
しかし、その後の宇宙研究のめざましい進展によって、21世紀の現在では木星の衛星は63個、その存在が確認されてしまっているのです。多すぎ!
そうなってしまうと、「13番目のX星!」と言われても「あ、そう。」ってな感じでぜんっぜん怪しげなイメージがしなくなってしまうのですが、まぁ、当時の神秘的な印象は崩さずにいきましょうや!
ちなみに、実際に1974年に発見された木星13番目の衛星は「レダ」というもので、直径わずか20キロという63個中最小のスケールでした。まぁ……宇宙人が棲むには、せますぎるかな。
ちなみにちなみに、63個中最大の衛星は「ガニメデ」で、地球の4分の1、月や水星よりも大きいという威容をほこっています。さすがは木星! 包容力がケタ違いだねい。
さてさて、どう見ても「レダ」には見えない広々としたX星に到着したロケット乗組員だったのですが、地上は月のように荒涼とした岩肌だらけの無人星だったものの、突如として響き渡る、
「地球人よ、早く地下の私たちの避難スペースに逃げなさい。」
という音声メッセージを受け取ります。それとともに、地面からニュッと突き出る電話ボックスのようなエレベータ装置。
乗組員がおそるおそるそれに乗って地下へ行くと、そこには地球人もビックリの超高度文明が!
そしてそこに現れたのは、基本は日本人そっくりであるものの、グレーと黒のピッタリしたスーツに、目には極細のサングラスのような遮光装置をつけた顔色の悪い男たち。「宇宙人です。」と自己紹介する手間のかからない、説得力アリアリの宇宙ルックです。頭にかぶったヘッドギアつきカバーには、ご丁寧にアンテナまでついてます。首のエリにあたる部分も大きすぎてむちうちになった人みたいだし……まさに電波系よ。
さて、そんな怪しすぎる外見にもかかわらず、X星に超高度文明を築いた彼ら「X星人」、そしてそのリーダーである「統制官」の語る事情は切実なものでした。
「我々はもともと地上で繁栄していたのだが、つい最近にX星にやって来た宇宙超怪獣キングギドラのために甚大な被害を受け、今は地下で避難生活をせざるをえない状態なのだ。」
地下基地のモニターには、今現在もX星の地上を我が物顔で飛び回って引力光線を乱射しまくっている黄金の3つ首竜キングギドラの猛威が映し出されています。
それにたたみかけるかのように、地球人に重大な提案を申し出るX星人統制官。
「お願いです。かつてキングギドラに勝利したことがあるという地球の大怪獣、ゴジラとラドンをちょっとだけ貸していただきたい。X星の危機を救うためには、地球の協力が必要なのです!」
なぜモスラは無視……とにもかくにも、なんと大規模なレンタル契約なのでしょう!
レンタル成立、そしてめでたくキングギドラ駆除のあかつきには、地球へのX星先進医療技術の提供を惜しまないと言う彼ら。
まぁ、ちょっと上の者に聞いてみないとわかんないんで……と、地球の乗組員はいったんはロケットに乗って地球に帰還するのですが、なんとX星人はすでに地球にも使節を送っていた。
いやいや、「送っていた」って簡単に言いますけどあなた、地球と木星とのあいだには、6~10億キロもの距離があるんですぜ!?(お互いの公転スピードが違うため、一番近いときで約6億キロ、遠いときで約10億キロ。)
ところが、そこがX星人の科学技術の超絶なところ! X星人の使う「X星円盤」は、形こそ古色蒼然とした「空飛ぶ円盤」といった感じではあるものの、平均スピード「光速の10分の1」で宇宙を駆けることができるという驚くべきスグレモノだったのです。
「光速の10分の1」!? ということは、時速およそ1億キロってこと? 半日もかからないうちに木星から地球にたどり着けるのか……超絶。
さらに超絶なのは、地球人の許可をもらった瞬間に、円盤から発する謎のコントロール電磁波によって休眠していたゴジラとラドンをたちまち捕獲し、そのまんま宇宙のかなたに連れてってしまったこと! あんなに地球にとって厄介者だった大怪獣たちが、なんなくホイホイといなくなってしまうとは……
あいもかわらずX星上で暴れ回っていたキングギドラにゴジラとラドンをけしかけるX星人。思わぬ宿敵たちの登場にキングギドラはびっくりしてしまったのか、宇宙での戦闘というこれ以上ないアドヴァンテージがあったのに彼らしからぬ及び腰でさっさと逃げ出してしまいます。なーんか、話がうまくいきすぎているような気がしないでもありません。
ま、とにかくゴジラたちの勝利だ!……って、ゴジラとラドンって、酸素のない場所でもふつうに戦えるんだ。生物なのか? ちなみに、地球生まれの怪獣が宇宙で闘ったのはこれが唯一のケースになりました。
とまぁ、ここまではX星人と地球人の約束通りに話が運んだわけなのですが……さぁここからが問題だ!
ななんと、なーんと! これまでのX星人の行動は、ぜーんぶ、うそ。
「キングギドラに荒らされて困っている。」というのも、キングギドラを自慢の超絶科学で脳波コントロールして演じていた狂言で、すべては地球を征服する上で最大の障害となるであろう2大怪獣、ゴジラとラドンを自分達の手中におさめるための芝居だったのです。
なんと用意周到な侵略計画か! その後、X星人はキングギドラに使用した脳波コントロール術を地球の2大怪獣にも応用し、3匹もの大怪獣を自分達の手駒にしてしまうことに成功します。
これはいかん! 突然のX星人の豹変と「地球征服宣言」に愕然とする地球人。人の親切心につけこむとは、なんて卑劣な宇宙人なんだ。
X星人はさっそくキングギドラをアメリカに投入して破壊活動を開始させ、一方で富士のすそ野には意のままになったゴジラとラドンを配置。「地球人が24時間以内にX星に全面降伏しなければゴジラとラドンにも大暴れさせる。」と地球側を脅迫します。
しかし、「富士のすそ野」って、ほんとになにかっていうと怪獣に好かれる人気スポットですよね……広いからいいのかな? 誰だ、いま「予算の関係」って思ったやつは!
地球人、絶体絶命の危機! かつて、これほどトントン拍子に地球征服計画をうまくすすめられた宇宙人がいたでしょうか。すべての面で地球人を超えた宇宙人の科学力と、すべての面で地球人を超えた宇宙怪獣の戦闘力! 人類がもっとも恐れていた2つの力の合体が、ここに実現してしまったのです。
しっかーし! やっぱ、悪いことはできないもんですね。思わぬところから、完璧そうに見えたX星人の征服計画は破綻してしまいます。
なんたる奇跡か。日本のなんでもない無名の青年が発明していた痴漢撃退用のアラームグッズの警報音が、X星人の脳波に重大な悪影響を与えることが判明したのです。その音を聴き続けると、最悪の場合X星人は死んじゃう!
そして同時に、X星人の提示した24時間の猶予期間をフル活用して、X星人が怪獣たちをコントロールしている電磁波を徹底研究した地球人側は、地球に派遣されたX星円盤から怪獣に絶えず送信されているその電磁波を遮断することのできる「Aサイクル光線」の開発に成功します。
運命の24時間後。当然のように降伏を断固拒否した人類側に対して、予定通りにゴジラとラドンに攻撃を開始させるX星人。いつの間にか統制官おんみずからも地球に乗り込んできています。
そして、念には念を入れてキングギドラも富士に合流。それまでのキングギドラのアメリカ大暴れ紀行は丸ごとカットされているのですが、24時間も好き勝手にやってたんだからねぇ……さすがの超大国アメリカも相当な被害をこうむったことでしょう。
あっという間に富士山麓を火の海に変える3大怪獣。だが、地球側の切り札がそこに駆けつけた!
今回、地球防衛軍が用意した秘密兵器は、かつて1961年に対モスラ戦に投入された(けど役には立たなかった)パラボラ超兵器「原子熱線砲」を簡易量産化した兵器「熱線砲車(パラボラなしよ)」を、熱線でなくAサイクル光線を発射できるように改造した「Aサイクル光線車」! しかも、ご丁寧にX星人の大嫌いな殺人音波を放送する巨大拡声器もアタッチメント装備。
「やったれーっ!」とばかりに、Aサイクル光線と殺人音波を同時に発射する光線車。頭が混乱してのたうちまわる3大怪獣と、操縦不能におちいり爆破してゆくX星円盤たち。
殺人音波に苦しみながらも、
「我々は、未来に向かって脱出する! まだ見ぬ、未来に向かってな……」
と、ミョ~にカッコイイ言葉をのこして爆死するX星人統制官。人類の勝利だ!
その後、我にかえった3大怪獣は、
「なーんか俺たち、1年前にもおんなじことやってなかったか? モスラはいねぇけど。」
と微妙な気分になりつつもキングギドラVSゴジラ・ラドンの壮絶バトルを展開し、キングギドラは宇宙に逃走、ゴジラとラドンは海の中に消えるという結果に終わります。ゴジラはいいんだけど、ラドンは海に消えちゃあいけないんじゃないの? まぁ、酸素がない場所でも普通に生きてたんだから大丈夫か。
こういった経緯で落着した「X星人侵略事件」だったのですが、計画自体はかなりいいところまでいったものの、最終的にはやっぱり「X星人自身の身体能力面での弱点」がすべてをぶちこわしにしてしまう結果に終わってしまいました。もうこれは、侵略宇宙人の哀しき伝統ですよね……『マーズ・アタック!』じゃねぇんだから。X星人のほうが先輩ですけど。
X星人。怪しすぎる外見とか、女性の顔をみんなおんなじ理想型に統一しちゃう(性格がキツそうなクールビューティ)とか、かなりいいキャラクターだったんですけどね。
結局、X星の全体を支配していた統制官が異国の地に散ってしまったため、X星人が地球への再度侵攻を企てられるまでに復興するには、実に40年もの歳月を要することになります。
しかしまぁ、今回の事件でいちばんワリをくったのはキングギドラさんですよね。
1回目はX星人の策略による出来レースだとは言え、2回もゴジラとラドンに負けちゃったからなぁ。アメリカでの勇姿もカットされちゃったし。
がんばれ、キングギドラ! 1対1だったら、君に勝てる怪獣なんて宇宙のどこにもいないんだよ、たぶん。
余談として、次にキングギドラがリベンジを期して地球にやってくるのは『怪獣総進撃』(1968年)の時なのですが……もうその末路は涙、涙でございます。キングギドラファンはみてられないよ、ホントに!
《次回予告》
「宇宙人+宇宙怪獣コラボ」という最悪の事態を乗り越えることに成功した地球人。
しかし、地球は宇宙からばかりでなく、陸海空さまざまな場所で頻発する超自然災害と対峙していくことになる。
X星人にからくも勝利した人類が迎えた新たなる年・1966年は、まさに「アンバランス・ゾーン」の幕開けをかざるアニバーサリーイヤーとなるのであった!!
もうちょっとだ。もうちょっとで、あの銀色の巨人が……
そうだいは、応援しているSDN48の小原春香さんが、2ndシングル『愛、チュセヨ』で選抜メンバー第3位に昇格していたことに大喜びしていた。1stシングル『GAGAGA』では第9位だったからなぁ。
小原さん、これからもがんばってくださいね~。
……「チュセヨ」、ねぇ。
8、宇宙人と宇宙怪獣がいっしょにやってきた!
1965年12月『怪獣大戦争』(特撮監督・もちろん円谷英二)
1964年は、かつての宇宙人襲来に続いて、ついに史上初めて本格的な宇宙怪獣が地球に到来した恐怖の年になってしまいました。しかも来ちゃったのは、のっけから宇宙最凶の超怪獣・キングギドラ! キビシ~っ。
その時はゴジラ、ラドン、モスラという地球3大怪獣の団結によってからくもキングギドラの危機をしのぐことはできたのだが、またやって来たらどうしよう……人類の不安はつのる。
しかし! その丸1年後の1965年12月。その不安は現実のものとなってしまいました。しかも、宇宙人と宇宙怪獣というかつてない取り合わせをもって。
1965年の後半。世界中の宇宙開発グループが結束した「地球連合開発局」は、太陽系第5惑星・木星の13番目の衛星「X星」の有人ロケット探査に成功していました。
ちょーっと、ごめんなさい! ここで現実の話をしてしまうのですが、1965年時点では木星の衛星は12個までしか発見されていませんでした。
しかし、その後の宇宙研究のめざましい進展によって、21世紀の現在では木星の衛星は63個、その存在が確認されてしまっているのです。多すぎ!
そうなってしまうと、「13番目のX星!」と言われても「あ、そう。」ってな感じでぜんっぜん怪しげなイメージがしなくなってしまうのですが、まぁ、当時の神秘的な印象は崩さずにいきましょうや!
ちなみに、実際に1974年に発見された木星13番目の衛星は「レダ」というもので、直径わずか20キロという63個中最小のスケールでした。まぁ……宇宙人が棲むには、せますぎるかな。
ちなみにちなみに、63個中最大の衛星は「ガニメデ」で、地球の4分の1、月や水星よりも大きいという威容をほこっています。さすがは木星! 包容力がケタ違いだねい。
さてさて、どう見ても「レダ」には見えない広々としたX星に到着したロケット乗組員だったのですが、地上は月のように荒涼とした岩肌だらけの無人星だったものの、突如として響き渡る、
「地球人よ、早く地下の私たちの避難スペースに逃げなさい。」
という音声メッセージを受け取ります。それとともに、地面からニュッと突き出る電話ボックスのようなエレベータ装置。
乗組員がおそるおそるそれに乗って地下へ行くと、そこには地球人もビックリの超高度文明が!
そしてそこに現れたのは、基本は日本人そっくりであるものの、グレーと黒のピッタリしたスーツに、目には極細のサングラスのような遮光装置をつけた顔色の悪い男たち。「宇宙人です。」と自己紹介する手間のかからない、説得力アリアリの宇宙ルックです。頭にかぶったヘッドギアつきカバーには、ご丁寧にアンテナまでついてます。首のエリにあたる部分も大きすぎてむちうちになった人みたいだし……まさに電波系よ。
さて、そんな怪しすぎる外見にもかかわらず、X星に超高度文明を築いた彼ら「X星人」、そしてそのリーダーである「統制官」の語る事情は切実なものでした。
「我々はもともと地上で繁栄していたのだが、つい最近にX星にやって来た宇宙超怪獣キングギドラのために甚大な被害を受け、今は地下で避難生活をせざるをえない状態なのだ。」
地下基地のモニターには、今現在もX星の地上を我が物顔で飛び回って引力光線を乱射しまくっている黄金の3つ首竜キングギドラの猛威が映し出されています。
それにたたみかけるかのように、地球人に重大な提案を申し出るX星人統制官。
「お願いです。かつてキングギドラに勝利したことがあるという地球の大怪獣、ゴジラとラドンをちょっとだけ貸していただきたい。X星の危機を救うためには、地球の協力が必要なのです!」
なぜモスラは無視……とにもかくにも、なんと大規模なレンタル契約なのでしょう!
レンタル成立、そしてめでたくキングギドラ駆除のあかつきには、地球へのX星先進医療技術の提供を惜しまないと言う彼ら。
まぁ、ちょっと上の者に聞いてみないとわかんないんで……と、地球の乗組員はいったんはロケットに乗って地球に帰還するのですが、なんとX星人はすでに地球にも使節を送っていた。
いやいや、「送っていた」って簡単に言いますけどあなた、地球と木星とのあいだには、6~10億キロもの距離があるんですぜ!?(お互いの公転スピードが違うため、一番近いときで約6億キロ、遠いときで約10億キロ。)
ところが、そこがX星人の科学技術の超絶なところ! X星人の使う「X星円盤」は、形こそ古色蒼然とした「空飛ぶ円盤」といった感じではあるものの、平均スピード「光速の10分の1」で宇宙を駆けることができるという驚くべきスグレモノだったのです。
「光速の10分の1」!? ということは、時速およそ1億キロってこと? 半日もかからないうちに木星から地球にたどり着けるのか……超絶。
さらに超絶なのは、地球人の許可をもらった瞬間に、円盤から発する謎のコントロール電磁波によって休眠していたゴジラとラドンをたちまち捕獲し、そのまんま宇宙のかなたに連れてってしまったこと! あんなに地球にとって厄介者だった大怪獣たちが、なんなくホイホイといなくなってしまうとは……
あいもかわらずX星上で暴れ回っていたキングギドラにゴジラとラドンをけしかけるX星人。思わぬ宿敵たちの登場にキングギドラはびっくりしてしまったのか、宇宙での戦闘というこれ以上ないアドヴァンテージがあったのに彼らしからぬ及び腰でさっさと逃げ出してしまいます。なーんか、話がうまくいきすぎているような気がしないでもありません。
ま、とにかくゴジラたちの勝利だ!……って、ゴジラとラドンって、酸素のない場所でもふつうに戦えるんだ。生物なのか? ちなみに、地球生まれの怪獣が宇宙で闘ったのはこれが唯一のケースになりました。
とまぁ、ここまではX星人と地球人の約束通りに話が運んだわけなのですが……さぁここからが問題だ!
ななんと、なーんと! これまでのX星人の行動は、ぜーんぶ、うそ。
「キングギドラに荒らされて困っている。」というのも、キングギドラを自慢の超絶科学で脳波コントロールして演じていた狂言で、すべては地球を征服する上で最大の障害となるであろう2大怪獣、ゴジラとラドンを自分達の手中におさめるための芝居だったのです。
なんと用意周到な侵略計画か! その後、X星人はキングギドラに使用した脳波コントロール術を地球の2大怪獣にも応用し、3匹もの大怪獣を自分達の手駒にしてしまうことに成功します。
これはいかん! 突然のX星人の豹変と「地球征服宣言」に愕然とする地球人。人の親切心につけこむとは、なんて卑劣な宇宙人なんだ。
X星人はさっそくキングギドラをアメリカに投入して破壊活動を開始させ、一方で富士のすそ野には意のままになったゴジラとラドンを配置。「地球人が24時間以内にX星に全面降伏しなければゴジラとラドンにも大暴れさせる。」と地球側を脅迫します。
しかし、「富士のすそ野」って、ほんとになにかっていうと怪獣に好かれる人気スポットですよね……広いからいいのかな? 誰だ、いま「予算の関係」って思ったやつは!
地球人、絶体絶命の危機! かつて、これほどトントン拍子に地球征服計画をうまくすすめられた宇宙人がいたでしょうか。すべての面で地球人を超えた宇宙人の科学力と、すべての面で地球人を超えた宇宙怪獣の戦闘力! 人類がもっとも恐れていた2つの力の合体が、ここに実現してしまったのです。
しっかーし! やっぱ、悪いことはできないもんですね。思わぬところから、完璧そうに見えたX星人の征服計画は破綻してしまいます。
なんたる奇跡か。日本のなんでもない無名の青年が発明していた痴漢撃退用のアラームグッズの警報音が、X星人の脳波に重大な悪影響を与えることが判明したのです。その音を聴き続けると、最悪の場合X星人は死んじゃう!
そして同時に、X星人の提示した24時間の猶予期間をフル活用して、X星人が怪獣たちをコントロールしている電磁波を徹底研究した地球人側は、地球に派遣されたX星円盤から怪獣に絶えず送信されているその電磁波を遮断することのできる「Aサイクル光線」の開発に成功します。
運命の24時間後。当然のように降伏を断固拒否した人類側に対して、予定通りにゴジラとラドンに攻撃を開始させるX星人。いつの間にか統制官おんみずからも地球に乗り込んできています。
そして、念には念を入れてキングギドラも富士に合流。それまでのキングギドラのアメリカ大暴れ紀行は丸ごとカットされているのですが、24時間も好き勝手にやってたんだからねぇ……さすがの超大国アメリカも相当な被害をこうむったことでしょう。
あっという間に富士山麓を火の海に変える3大怪獣。だが、地球側の切り札がそこに駆けつけた!
今回、地球防衛軍が用意した秘密兵器は、かつて1961年に対モスラ戦に投入された(けど役には立たなかった)パラボラ超兵器「原子熱線砲」を簡易量産化した兵器「熱線砲車(パラボラなしよ)」を、熱線でなくAサイクル光線を発射できるように改造した「Aサイクル光線車」! しかも、ご丁寧にX星人の大嫌いな殺人音波を放送する巨大拡声器もアタッチメント装備。
「やったれーっ!」とばかりに、Aサイクル光線と殺人音波を同時に発射する光線車。頭が混乱してのたうちまわる3大怪獣と、操縦不能におちいり爆破してゆくX星円盤たち。
殺人音波に苦しみながらも、
「我々は、未来に向かって脱出する! まだ見ぬ、未来に向かってな……」
と、ミョ~にカッコイイ言葉をのこして爆死するX星人統制官。人類の勝利だ!
その後、我にかえった3大怪獣は、
「なーんか俺たち、1年前にもおんなじことやってなかったか? モスラはいねぇけど。」
と微妙な気分になりつつもキングギドラVSゴジラ・ラドンの壮絶バトルを展開し、キングギドラは宇宙に逃走、ゴジラとラドンは海の中に消えるという結果に終わります。ゴジラはいいんだけど、ラドンは海に消えちゃあいけないんじゃないの? まぁ、酸素がない場所でも普通に生きてたんだから大丈夫か。
こういった経緯で落着した「X星人侵略事件」だったのですが、計画自体はかなりいいところまでいったものの、最終的にはやっぱり「X星人自身の身体能力面での弱点」がすべてをぶちこわしにしてしまう結果に終わってしまいました。もうこれは、侵略宇宙人の哀しき伝統ですよね……『マーズ・アタック!』じゃねぇんだから。X星人のほうが先輩ですけど。
X星人。怪しすぎる外見とか、女性の顔をみんなおんなじ理想型に統一しちゃう(性格がキツそうなクールビューティ)とか、かなりいいキャラクターだったんですけどね。
結局、X星の全体を支配していた統制官が異国の地に散ってしまったため、X星人が地球への再度侵攻を企てられるまでに復興するには、実に40年もの歳月を要することになります。
しかしまぁ、今回の事件でいちばんワリをくったのはキングギドラさんですよね。
1回目はX星人の策略による出来レースだとは言え、2回もゴジラとラドンに負けちゃったからなぁ。アメリカでの勇姿もカットされちゃったし。
がんばれ、キングギドラ! 1対1だったら、君に勝てる怪獣なんて宇宙のどこにもいないんだよ、たぶん。
余談として、次にキングギドラがリベンジを期して地球にやってくるのは『怪獣総進撃』(1968年)の時なのですが……もうその末路は涙、涙でございます。キングギドラファンはみてられないよ、ホントに!
《次回予告》
「宇宙人+宇宙怪獣コラボ」という最悪の事態を乗り越えることに成功した地球人。
しかし、地球は宇宙からばかりでなく、陸海空さまざまな場所で頻発する超自然災害と対峙していくことになる。
X星人にからくも勝利した人類が迎えた新たなる年・1966年は、まさに「アンバランス・ゾーン」の幕開けをかざるアニバーサリーイヤーとなるのであった!!
もうちょっとだ。もうちょっとで、あの銀色の巨人が……