《前回までのあらすじもなにも》
……つ、疲れた。
いったい、いつになったらガッツ星人にたどり着けるんだオイ!?
今あつかっているのは1966年。いとしのガッちゃんが待っているのは1968年。
残すところたったの2年。たった2年だというのに、なぜこれほどまでにゴールに近づいている実感がわかないのだ?
そう。それは、ここからの宇宙人出現ペースが鬼のようなあんばいになってしまうから!
2月で終わんない感じになっちった……大丈夫じゃないマイフレンド。
12、理解不能! 宇宙人が巨大化した
1966年5月『2020年の挑戦』(『ウルトラQ』)
チルソニア遊星人(セミ人間)による、ガラモン軍団東京襲撃事件の余韻も冷めやらぬ1ヶ月後、5月。
今度は、正体不明の発光物体が日本の領空内に侵入し、航空自衛隊のさしむけた哨戒機3機を撃墜して消滅するという事件が発生します。
3機もの軍用機が爆破するという事実はあったのですが、結局、問題の発光物体のその後の動向がつかめなかったため、自衛隊は今回の事態を原因不明の事故と判断し、哨戒機の発進を指令した天野二佐(中佐)を停職処分にしてしまいます。
納得のいかない天野二佐は、「消えた発光物体は必ず存在していて、今現在も日本のどこかに潜伏しているはずだ。」という確信のもとに独自の調査を開始するのですが、哨戒機撃墜事件の直後から、日本では不思議な連続失踪事件が頻発するようになります。
プールでダイビングの練習中だった水泳選手、高級別荘で悠々自適な生活を楽しんでいた青年実業家、高速道路でスポーツカーに乗っていた若者……
失踪する人間どうしにつながりはないのですが、必ず共通している点は、「健康な若者であること」、「失踪する動機が見当たらないこと」、そして、「目撃者が多数いる中で、文字通り一瞬にして姿を消していること」。
う~ん、実にミステゥリアス。たまりませんねぇ!
そして、女性雑誌記者である由利っぺ(レギュラーキャラ)の目の前でも、遊園地のゴーカートを運転していた女性モデルがカメラ撮影中にかき消えるように姿を消す事件が発生!
その女性モデル以外は誰も人がいないはずのコース上で、なぜこんな人間蒸発現象が!? 運転手をうしない、無人のままカラカラと坂道を降りてゆくゴーカート……
由利っぺはこの事件の原因をさぐるために、イイ関係にある星川空港の男前パイロット・淳ちゃん(レギュラーキャラ)のもとに相談に行きますが、そこにはすでに、例の哨戒機撃墜事件の解明を依頼しようと訪れていた淳ちゃんの旧友・天野二佐の姿もありました。
奇遇ですねぇ! それぞれの事件を淳ちゃんに相談する2人だったのですが、連続失踪事件と哨戒機撃墜事件。あまり関係があるようには見受けられません。
しかし! この2つの事件にはなんらかの関係がある!そう確信する人間が3人の会話に割り込んできます。淳ちゃんのパイロット助手をしている一平ちゃん(やっぱレギュラーキャラ)でした。
一平ちゃんの話によると、「空飛ぶ円盤が哨戒機を撃墜して日本に侵入し、宇宙人が健康な若者を誘拐してその肉体を盗もうとする」筋書きのSF小説を、最近読んだばかりだと言うのです。
「ンだよテメェ、小説かよ!」
「アタイらは現実の事件の話をしてんだよ。失せな!」
「きさま、これ以上本官たちをからかったら、国家的陰謀できさまも失踪させるぞ!」
「へへへっ、冗談が通じないお人たちでヤンスね~。おーこわ!」
まぁ、こんな会話はないんですけどね。とにかく、こういった感じで一平ちゃんの名推理は一蹴されてしまったわけなんですよ。
しかし、連続失踪事件の魔手はものすごい勢いで彼ら4人にもせまってきた!
まず4人が集まった直後、哨戒機が爆破した地点にセスナ機で向かった淳ちゃんと天野のうち、セスナを運転していたほうの淳ちゃんが一瞬にして消え去ってしまいます。パイロットが機内から消えた! ていうか、レギュラーキャラがなんのタメもなく退場した! いいの!?
あわててセスナを操縦して空港に帰還する天野だったのですが、彼は失踪する直前、淳ちゃんの背中にくっついていた「謎の半透明の液体」を確かに目撃していました……なんだったんだ、ありゃ?
一方、遊園地で失踪した女性モデルを撮影した写真の中に、なんらかの事件の手がかりが写り込んでいる可能性があると思いついた由利っぺは急いで出版社ビルの現像室に向かいますが、現像室からは2人の人間が失踪してしまうありさま。
なんとかして現像したフィルムには、失踪する直前のモデル嬢におおいかぶさる謎のスライムっぽい液体がはっきりと写っていました。こいつが人間を消しているんだ!
事態を重く見た出版社は、謎の液体が事件の糸口をつかんでしまった由利っぺをつけ狙っていると予測し、警視庁に彼女の護衛を依頼します。
ところが、警視庁が護衛に付けたのは宇田川という50代なかばの老刑事たった1人。大丈夫なのか? しかし、実はこの宇田川刑事は、今回の連続失踪事件との意外な関わりがあったのです……
宇田川刑事のたよりなさを公衆電話から一平ちゃんにグチる由利っぺだったのですが、一平ちゃんはますます興奮して、今回の事件と自分が読んだSF小説『2020年の挑戦』との驚くべき内容の一致をうったえます。
「由利ちゃん、まったく同じなんだよ! すべての事件がこの本に書いてある通りに起こっているんだ。しかも、これを書いた神田博士は、Xチャンネル光波を実験している時にケムール人と交信した会話にもとづいて小説を書いていると言ってるんだ。」
「ケムール人? 一平くん、そんなキチガイ博士の書いたものを読んでるひまはないはずよ。淳ちゃんはどこ行ったのよ! さっさとさがせよテメェ!!」
由利っぺの言うように、一平ちゃんのハマっていたSF小説『2020年の挑戦』を書いた神田博士は、「Xチャンネル光波」という未発見の電波を研究していた最中に「ケムール人」という侵略宇宙人の存在を警告しはじめ、頭がおかしくなったと思った学会から追放されていた人物だったのです。
だが、しかし! そんな由利っぺのいる公衆電話の天井から、例のスライム物体が由利っぺに襲いかかる!
間一髪、公衆電話の中から由利っぺを助け出してスライム物体にタバコの吸いさしを投げつける宇田川刑事。可燃性なのか、あっという間に燃え上がり消滅する物体。
次の瞬間、宇田川の持っていたトランシーバーのような機械が発信音をはなつ! その機械をたよりに、何かを追って夜の街を駆ける宇田川。あの角を曲がったところだ!
そして、そこにいたのは……
「ぶふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっ!」
不敵な笑い声をあげる謎の大男、いやさ、宇宙人! 笑い声が「あの宇宙人」に激似なのだが、ただの偶然かしら?
全身タイツのような、裸とも服ともつかないかっこうのやせた体型。毛むくじゃらの足に妙に細長い手の指。そして頭部ってのが、またすさまじいんだ。
ゴワゴワした顔には鼻も口も耳も見当たらないのですが、ど真ん中に十字のヒビが走っており、裂け目には不気味に光る2つの眼! 実は、頭の真後ろにもも1コ眼があります。気持ちわるい。
もっとも目立つのは、頭のてっぺんからチョウチンアンコウかナイトキャップのようにぴよんと伸びている1本の触覚。
こいつが、神田博士の言っていたケムール人なのか……!
宇田川の横を走り抜け、追跡するパトカーも脅威のダッシュでまいて逃げ切ってしまうケムール人。ここ、『ウルトラQ』でも1、2をあらそう名場面ですよねぇ。
ところで、宇田川がここまで的確にケムール人を捜査できるのは、なぜなのか? 疑問をぶつける由利っぺ。
実は宇田川は神田博士の親友で、博士がケムール人の存在を指摘しだした経緯を逐一見ていたのです。ケムール人を探知できる例の携帯機器も、神田博士から譲り受けていたものだったのである。
神田博士によると、問題のスライム物体はケムール人の操作する「物質転移装置」で、それを使って地球の健康な若者を拉致し、その肉体を移植手術で自分達のものにしようとしているのだという。
小説『2020年の挑戦』には、ケムール人の棲むケムール星は、1966年当時の地球から見て「2020年の時間軸に位置する」文明を有する惑星なのだと記されていました。
まぁ……正直なに言ってるのかわかんねぇんだけど、要するに地球文明を超えた科学技術を持ってるってことなんでしょうね。
ただ、発達しすぎた文明のためにケムール星は超高齢化しており、さらなる延命のためには、他の惑星の移植可能な「健康な肉体」が必要不可欠となっていたのだそうです。
これはつまり、「地球征服」が目的なのではなく、ただただ地球人の「肉体がほしい」だけ! 地球を「家畜のいる牧場」としかとらえていないわけよ。もっと恐いじゃないの~。
とにかく、ケムール人が現実にいてしまった以上、地球側は神田博士の発言を信じるしかありません。
一平ちゃんと天野二佐は神田博士の邸宅に急ぐのですが、時すでに遅し。博士はケムール人に拉致されてしまい研究室はもぬけの殻となっていました。もうダメか?
しかし、一平ちゃんは、邸宅に届けられていた小さな試作品を見て狂喜乱舞します。
「やった! Kミニオードは完成していたんだ!」
Kミニオードとは何か? それは、ケムール人を倒すことのできる「Xチャンネル光波」を発信することのできる回路装置だったのです。
ケムール人が今どこにいるのかはわからないが、すぐにでもXチャンネル光波を発信しなければ、拉致された人たちは戻ってこない。当然、『ウルトラQ』の主人公である淳ちゃんも帰ってこないのよ!
さて、そのころ、当のケムール人はというと……
深夜、とっくに閉園しているはずの遊園地の中で目覚める由利っぺ。いつの間に? なぜ、こんな所に……宇田川さんは、どこ?
突然、メリゴーラウンドのイルミネーションが輝きだしてかろやかな音楽が流れ出す。その入り口には、なぜかいないはずの淳ちゃんが笑顔で立っている。
「淳ちゃん!」
うれしさのあまり、事件の経緯を忘れて淳ちゃんに駆け寄ろうとする由利っぺ。
しかし! 宇田川の機械を頼りにやっと遊園地に駆けつける警官隊のパトカー。宇田川は由利っぺに大喝する。
「いかーん!! 行っちゃいかーん!」
そのとおり!とばかりに、淳ちゃんの顔がゆがみ、黒ずみ、あの恐ろしいケムール人に変貌してゆく。もうちょっとでダマされるとこだった!
しっかし、ただ拉致すればいいだけなのに、淳ちゃんに化けるはメリーゴーラウンドの電源を勝手につけるは……ケムール人はかなりの変態とみた。逃げろ、由利っぺ~!
今度は逃がさん!と、逃げるケムール人に一斉射撃をしかける警官隊。
「頭をねらえ! 頭以外は撃っても効かんぞ!」
ついに宇田川の撃った一発がケムール人の頭部に命中した!
いったんは倒れ込んで動かなくなるケムール人。
しかし、どういうわけか不気味なうめき声をあげながら巨大化! なんと身長30メートル、体重1万5千トンの巨人になってふたたび立ち上がります。
なおも射撃を続ける警官隊に対して、遊園地の観覧車を引き抜いて投げつける巨大ケムール人。
警官隊だけではとてもじゃないが太刀打ちできない。万事休すか?
だがその時、一平ちゃんと天野のKミニオードが間に合った!
2人の駆け込んだ東京タワーから強力に発信されるXチャンネル光波!
え、「東京タワー」?
東京タワーは先月にガラモンにへし折られたんじゃなかったの?
さすがは戦後ニッポンの元気力。東京タワーは1ヶ月後には完璧に修復されておりました。いやー、ケムール人事件に間に合ってよかったよかった。
見事、Xチャンネル光波を頭部にモロにくらってぶっ倒れる巨大ケムール人!
頭のてっぺんから「ぴゅっぴゅぴゅ~!」と液体をとばしながら悶絶するケムール人。気持ち悪いし、なんかエロい。
みるみるうちに縮小し、消滅していくケムール人。最後にはちっちゃな水たまりだけになってしまいました。
と同時に、天から降ってくる不思議な白雲。
白雲が消えると、遊園地のコーヒーカップには今まで拉致されていた人々の眠りこける姿が。淳ちゃんもいる! みんな助かったんだ~。
こうして「ケムール人」事件は一件落着したわけなのですが……
とにかく今回の事件で特筆すべきなのは、宇宙人自身が巨大化して闘った史上初のケースであること!
実際のところ、ケムール人が巨大化した「30メートル」というサイズは、ゴジラやラドンやペギラといった「50メートル」に比べるといささか迫力に欠けるし、警官隊に対しては無敵だったものの軍隊相手だったらどうだったか……だいたい、ケムール人に「巨大化して地球征服を目指す」という意図はさらさらなかったはずです。結局は、警官隊を追っ払うための緊急措置だっただけの巨大化でした。
でも! いつの時代もパイオニア、開拓者は偉大です。史上初の巨大化宇宙人・ケムール人……すばらしいね。
わたくしごとながら、前回に私は『バルンガ』をウルトラシリーズの「そうだいフェイバリット・ベスト8」だと言いましたが、今回に紹介した『2020年の挑戦』は、さらにその上をいく「ベスト6」に輝いております!
まぁ~とにかく、エンタテインメントとして完成してるのね。『バルンガ』は静の名作なんですが、『2020年の挑戦』は息をもつかせぬ急展開が目白押しの動の名作に仕上がっています。
怪獣が街を暴れ回るというスペクタクルはないのですが、サスペンスフルな物語はこびは最高ですね! 恐怖とスリルに満ちた傑作です。
ただ、それだけにオーラスの宇田川刑事の体を張ったギャグオチは……いーらないっかな~!?
《次回予告》
ついに宇宙人まで巨大化して大暴れする時代が始まってしまった! あやうし地球。
しかし、義を見てせざるは勇なきなり!
宇宙の果てから、地球を守るために正義の宇宙人が久しぶりにやって来た。
きたきたきた~。あのお方達がついにおでましになりますわよ~。
……つ、疲れた。
いったい、いつになったらガッツ星人にたどり着けるんだオイ!?
今あつかっているのは1966年。いとしのガッちゃんが待っているのは1968年。
残すところたったの2年。たった2年だというのに、なぜこれほどまでにゴールに近づいている実感がわかないのだ?
そう。それは、ここからの宇宙人出現ペースが鬼のようなあんばいになってしまうから!
2月で終わんない感じになっちった……大丈夫じゃないマイフレンド。
12、理解不能! 宇宙人が巨大化した
1966年5月『2020年の挑戦』(『ウルトラQ』)
チルソニア遊星人(セミ人間)による、ガラモン軍団東京襲撃事件の余韻も冷めやらぬ1ヶ月後、5月。
今度は、正体不明の発光物体が日本の領空内に侵入し、航空自衛隊のさしむけた哨戒機3機を撃墜して消滅するという事件が発生します。
3機もの軍用機が爆破するという事実はあったのですが、結局、問題の発光物体のその後の動向がつかめなかったため、自衛隊は今回の事態を原因不明の事故と判断し、哨戒機の発進を指令した天野二佐(中佐)を停職処分にしてしまいます。
納得のいかない天野二佐は、「消えた発光物体は必ず存在していて、今現在も日本のどこかに潜伏しているはずだ。」という確信のもとに独自の調査を開始するのですが、哨戒機撃墜事件の直後から、日本では不思議な連続失踪事件が頻発するようになります。
プールでダイビングの練習中だった水泳選手、高級別荘で悠々自適な生活を楽しんでいた青年実業家、高速道路でスポーツカーに乗っていた若者……
失踪する人間どうしにつながりはないのですが、必ず共通している点は、「健康な若者であること」、「失踪する動機が見当たらないこと」、そして、「目撃者が多数いる中で、文字通り一瞬にして姿を消していること」。
う~ん、実にミステゥリアス。たまりませんねぇ!
そして、女性雑誌記者である由利っぺ(レギュラーキャラ)の目の前でも、遊園地のゴーカートを運転していた女性モデルがカメラ撮影中にかき消えるように姿を消す事件が発生!
その女性モデル以外は誰も人がいないはずのコース上で、なぜこんな人間蒸発現象が!? 運転手をうしない、無人のままカラカラと坂道を降りてゆくゴーカート……
由利っぺはこの事件の原因をさぐるために、イイ関係にある星川空港の男前パイロット・淳ちゃん(レギュラーキャラ)のもとに相談に行きますが、そこにはすでに、例の哨戒機撃墜事件の解明を依頼しようと訪れていた淳ちゃんの旧友・天野二佐の姿もありました。
奇遇ですねぇ! それぞれの事件を淳ちゃんに相談する2人だったのですが、連続失踪事件と哨戒機撃墜事件。あまり関係があるようには見受けられません。
しかし! この2つの事件にはなんらかの関係がある!そう確信する人間が3人の会話に割り込んできます。淳ちゃんのパイロット助手をしている一平ちゃん(やっぱレギュラーキャラ)でした。
一平ちゃんの話によると、「空飛ぶ円盤が哨戒機を撃墜して日本に侵入し、宇宙人が健康な若者を誘拐してその肉体を盗もうとする」筋書きのSF小説を、最近読んだばかりだと言うのです。
「ンだよテメェ、小説かよ!」
「アタイらは現実の事件の話をしてんだよ。失せな!」
「きさま、これ以上本官たちをからかったら、国家的陰謀できさまも失踪させるぞ!」
「へへへっ、冗談が通じないお人たちでヤンスね~。おーこわ!」
まぁ、こんな会話はないんですけどね。とにかく、こういった感じで一平ちゃんの名推理は一蹴されてしまったわけなんですよ。
しかし、連続失踪事件の魔手はものすごい勢いで彼ら4人にもせまってきた!
まず4人が集まった直後、哨戒機が爆破した地点にセスナ機で向かった淳ちゃんと天野のうち、セスナを運転していたほうの淳ちゃんが一瞬にして消え去ってしまいます。パイロットが機内から消えた! ていうか、レギュラーキャラがなんのタメもなく退場した! いいの!?
あわててセスナを操縦して空港に帰還する天野だったのですが、彼は失踪する直前、淳ちゃんの背中にくっついていた「謎の半透明の液体」を確かに目撃していました……なんだったんだ、ありゃ?
一方、遊園地で失踪した女性モデルを撮影した写真の中に、なんらかの事件の手がかりが写り込んでいる可能性があると思いついた由利っぺは急いで出版社ビルの現像室に向かいますが、現像室からは2人の人間が失踪してしまうありさま。
なんとかして現像したフィルムには、失踪する直前のモデル嬢におおいかぶさる謎のスライムっぽい液体がはっきりと写っていました。こいつが人間を消しているんだ!
事態を重く見た出版社は、謎の液体が事件の糸口をつかんでしまった由利っぺをつけ狙っていると予測し、警視庁に彼女の護衛を依頼します。
ところが、警視庁が護衛に付けたのは宇田川という50代なかばの老刑事たった1人。大丈夫なのか? しかし、実はこの宇田川刑事は、今回の連続失踪事件との意外な関わりがあったのです……
宇田川刑事のたよりなさを公衆電話から一平ちゃんにグチる由利っぺだったのですが、一平ちゃんはますます興奮して、今回の事件と自分が読んだSF小説『2020年の挑戦』との驚くべき内容の一致をうったえます。
「由利ちゃん、まったく同じなんだよ! すべての事件がこの本に書いてある通りに起こっているんだ。しかも、これを書いた神田博士は、Xチャンネル光波を実験している時にケムール人と交信した会話にもとづいて小説を書いていると言ってるんだ。」
「ケムール人? 一平くん、そんなキチガイ博士の書いたものを読んでるひまはないはずよ。淳ちゃんはどこ行ったのよ! さっさとさがせよテメェ!!」
由利っぺの言うように、一平ちゃんのハマっていたSF小説『2020年の挑戦』を書いた神田博士は、「Xチャンネル光波」という未発見の電波を研究していた最中に「ケムール人」という侵略宇宙人の存在を警告しはじめ、頭がおかしくなったと思った学会から追放されていた人物だったのです。
だが、しかし! そんな由利っぺのいる公衆電話の天井から、例のスライム物体が由利っぺに襲いかかる!
間一髪、公衆電話の中から由利っぺを助け出してスライム物体にタバコの吸いさしを投げつける宇田川刑事。可燃性なのか、あっという間に燃え上がり消滅する物体。
次の瞬間、宇田川の持っていたトランシーバーのような機械が発信音をはなつ! その機械をたよりに、何かを追って夜の街を駆ける宇田川。あの角を曲がったところだ!
そして、そこにいたのは……
「ぶふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっ!」
不敵な笑い声をあげる謎の大男、いやさ、宇宙人! 笑い声が「あの宇宙人」に激似なのだが、ただの偶然かしら?
全身タイツのような、裸とも服ともつかないかっこうのやせた体型。毛むくじゃらの足に妙に細長い手の指。そして頭部ってのが、またすさまじいんだ。
ゴワゴワした顔には鼻も口も耳も見当たらないのですが、ど真ん中に十字のヒビが走っており、裂け目には不気味に光る2つの眼! 実は、頭の真後ろにもも1コ眼があります。気持ちわるい。
もっとも目立つのは、頭のてっぺんからチョウチンアンコウかナイトキャップのようにぴよんと伸びている1本の触覚。
こいつが、神田博士の言っていたケムール人なのか……!
宇田川の横を走り抜け、追跡するパトカーも脅威のダッシュでまいて逃げ切ってしまうケムール人。ここ、『ウルトラQ』でも1、2をあらそう名場面ですよねぇ。
ところで、宇田川がここまで的確にケムール人を捜査できるのは、なぜなのか? 疑問をぶつける由利っぺ。
実は宇田川は神田博士の親友で、博士がケムール人の存在を指摘しだした経緯を逐一見ていたのです。ケムール人を探知できる例の携帯機器も、神田博士から譲り受けていたものだったのである。
神田博士によると、問題のスライム物体はケムール人の操作する「物質転移装置」で、それを使って地球の健康な若者を拉致し、その肉体を移植手術で自分達のものにしようとしているのだという。
小説『2020年の挑戦』には、ケムール人の棲むケムール星は、1966年当時の地球から見て「2020年の時間軸に位置する」文明を有する惑星なのだと記されていました。
まぁ……正直なに言ってるのかわかんねぇんだけど、要するに地球文明を超えた科学技術を持ってるってことなんでしょうね。
ただ、発達しすぎた文明のためにケムール星は超高齢化しており、さらなる延命のためには、他の惑星の移植可能な「健康な肉体」が必要不可欠となっていたのだそうです。
これはつまり、「地球征服」が目的なのではなく、ただただ地球人の「肉体がほしい」だけ! 地球を「家畜のいる牧場」としかとらえていないわけよ。もっと恐いじゃないの~。
とにかく、ケムール人が現実にいてしまった以上、地球側は神田博士の発言を信じるしかありません。
一平ちゃんと天野二佐は神田博士の邸宅に急ぐのですが、時すでに遅し。博士はケムール人に拉致されてしまい研究室はもぬけの殻となっていました。もうダメか?
しかし、一平ちゃんは、邸宅に届けられていた小さな試作品を見て狂喜乱舞します。
「やった! Kミニオードは完成していたんだ!」
Kミニオードとは何か? それは、ケムール人を倒すことのできる「Xチャンネル光波」を発信することのできる回路装置だったのです。
ケムール人が今どこにいるのかはわからないが、すぐにでもXチャンネル光波を発信しなければ、拉致された人たちは戻ってこない。当然、『ウルトラQ』の主人公である淳ちゃんも帰ってこないのよ!
さて、そのころ、当のケムール人はというと……
深夜、とっくに閉園しているはずの遊園地の中で目覚める由利っぺ。いつの間に? なぜ、こんな所に……宇田川さんは、どこ?
突然、メリゴーラウンドのイルミネーションが輝きだしてかろやかな音楽が流れ出す。その入り口には、なぜかいないはずの淳ちゃんが笑顔で立っている。
「淳ちゃん!」
うれしさのあまり、事件の経緯を忘れて淳ちゃんに駆け寄ろうとする由利っぺ。
しかし! 宇田川の機械を頼りにやっと遊園地に駆けつける警官隊のパトカー。宇田川は由利っぺに大喝する。
「いかーん!! 行っちゃいかーん!」
そのとおり!とばかりに、淳ちゃんの顔がゆがみ、黒ずみ、あの恐ろしいケムール人に変貌してゆく。もうちょっとでダマされるとこだった!
しっかし、ただ拉致すればいいだけなのに、淳ちゃんに化けるはメリーゴーラウンドの電源を勝手につけるは……ケムール人はかなりの変態とみた。逃げろ、由利っぺ~!
今度は逃がさん!と、逃げるケムール人に一斉射撃をしかける警官隊。
「頭をねらえ! 頭以外は撃っても効かんぞ!」
ついに宇田川の撃った一発がケムール人の頭部に命中した!
いったんは倒れ込んで動かなくなるケムール人。
しかし、どういうわけか不気味なうめき声をあげながら巨大化! なんと身長30メートル、体重1万5千トンの巨人になってふたたび立ち上がります。
なおも射撃を続ける警官隊に対して、遊園地の観覧車を引き抜いて投げつける巨大ケムール人。
警官隊だけではとてもじゃないが太刀打ちできない。万事休すか?
だがその時、一平ちゃんと天野のKミニオードが間に合った!
2人の駆け込んだ東京タワーから強力に発信されるXチャンネル光波!
え、「東京タワー」?
東京タワーは先月にガラモンにへし折られたんじゃなかったの?
さすがは戦後ニッポンの元気力。東京タワーは1ヶ月後には完璧に修復されておりました。いやー、ケムール人事件に間に合ってよかったよかった。
見事、Xチャンネル光波を頭部にモロにくらってぶっ倒れる巨大ケムール人!
頭のてっぺんから「ぴゅっぴゅぴゅ~!」と液体をとばしながら悶絶するケムール人。気持ち悪いし、なんかエロい。
みるみるうちに縮小し、消滅していくケムール人。最後にはちっちゃな水たまりだけになってしまいました。
と同時に、天から降ってくる不思議な白雲。
白雲が消えると、遊園地のコーヒーカップには今まで拉致されていた人々の眠りこける姿が。淳ちゃんもいる! みんな助かったんだ~。
こうして「ケムール人」事件は一件落着したわけなのですが……
とにかく今回の事件で特筆すべきなのは、宇宙人自身が巨大化して闘った史上初のケースであること!
実際のところ、ケムール人が巨大化した「30メートル」というサイズは、ゴジラやラドンやペギラといった「50メートル」に比べるといささか迫力に欠けるし、警官隊に対しては無敵だったものの軍隊相手だったらどうだったか……だいたい、ケムール人に「巨大化して地球征服を目指す」という意図はさらさらなかったはずです。結局は、警官隊を追っ払うための緊急措置だっただけの巨大化でした。
でも! いつの時代もパイオニア、開拓者は偉大です。史上初の巨大化宇宙人・ケムール人……すばらしいね。
わたくしごとながら、前回に私は『バルンガ』をウルトラシリーズの「そうだいフェイバリット・ベスト8」だと言いましたが、今回に紹介した『2020年の挑戦』は、さらにその上をいく「ベスト6」に輝いております!
まぁ~とにかく、エンタテインメントとして完成してるのね。『バルンガ』は静の名作なんですが、『2020年の挑戦』は息をもつかせぬ急展開が目白押しの動の名作に仕上がっています。
怪獣が街を暴れ回るというスペクタクルはないのですが、サスペンスフルな物語はこびは最高ですね! 恐怖とスリルに満ちた傑作です。
ただ、それだけにオーラスの宇田川刑事の体を張ったギャグオチは……いーらないっかな~!?
《次回予告》
ついに宇宙人まで巨大化して大暴れする時代が始まってしまった! あやうし地球。
しかし、義を見てせざるは勇なきなり!
宇宙の果てから、地球を守るために正義の宇宙人が久しぶりにやって来た。
きたきたきた~。あのお方達がついにおでましになりますわよ~。