三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

岩手の古民家再生_2

2006年03月06日 03時22分27秒 | Weblog

岩手の再生住宅その2です。
写真右はジャッキアップされた本体を支える基礎工事の様子。
土間コンクリートでしっかりと作られています。
この家はやや傾斜地に建てられ、基礎の下を地下水の水道~みずみち~があったようです。
そうした湿気を押さえるためにも、面で土間コンクリートが打たれています。
現代の住宅建築がもっとも進化したものは、この基礎でしょうね。
というか、鉄筋コンクリートというもの。
この近代建築が発見した高い強度は、現代建築の「基礎」そのもの。
日本で言えば、それまでは住宅などでは束石が一般的。
それ以上の強度が要求された城郭建築では、大きな石を組み上げ、
粘土質の土をその間に詰め込んでしっかり固めた
「石垣」という大土木工事が必要だったのですね。
それを西欧近代が発見した、この鉄筋コンクリートが
きわめて簡便な工事で、それこそ石垣を遙かに超える基礎を実現するんですね。
すでに百年をゆうに超す時間を耐えてきたこの本体建築は
この現代技術で、さらに長期の保存の基盤を得ることが出来るわけです。

左の写真は、その基礎の上に本体が慎重におろされ
土台が緊結されはじめたところの様子です。
写真が小さいので、ややわかりにくいかと思いますが、柱や梁、土台などの構造材は
古い材料や新しい材料が混合されて使用されていきます。
最終的にインテリアとしてもあらわしにする古い構造材が主役ではあっても
その陰で、必要にして十分な構造強度は新材が支えていくことになります。

今回の再生工事でも、古い構造材を丹念に調べてみれば
何回かの時期に分けてこの建物が修復されてきたことがわかったと言うことです。
構造材の品番の印の付け方が、いくつかのパターンに分けられるのです。
具体的にわかりやすく、建築技術のリレーが、時間を超えて
職人さんたちの技として、こういうかたちで繋がっていく瞬間ですね。
そして、この家を使い、愛着を持って生きてきたひとたちの歴史が重なっていく。
古民家再生の、いちばんコアな意味合いを感じますね。

さてここから次の段階が、まさに現代住宅技術の中心である
「断熱気密化」工事が行われていくことになります。
基本構造工事と並行して、構造材の長期延命と、
同時に現代的快適生活を実現する温熱環境の工事となるわけです。
コメント
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