三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【イギリス人的Japan古民家再生-外観篇】

2017年07月24日 06時08分35秒 | Weblog


きのうからの続篇です。というか、ちょっとニセコ地区の住宅状況を
数日間、シリーズにしてお伝えしようかと思っている次第。

この建物は、きのうもご紹介した英国人Shouya P.T.Grigg氏による
日本の栃木県から移築させた古民家の再生利用レストランです。
ずっと日本の古民家を探してきていたという。
北海道内ではなかなかないので、はるばる栃木まで出向き、豪壮な
柱梁の力感あふれる古民家を購入してニセコに移築再生させた。
かれらには、古美というものへのリスペクト文化が濃厚にある。
たぶん、そういったオールドへの偏愛の方が強くて、
日本文化にある白木の伊勢神宮式年遷宮のような簡素さへの志向は
あんまり強くないように思われます。
で、そういうアングロサクソンの嗜好性から日本の古民家への
思い入れというのも、理解出来ると思っていました。
ただし以前見た、同じアングロサクソンのドイツ人の建築デザイナー、
カール・ベンクスさんが新潟で行っている
日本の古民家のドイツ風改装については、あまり同意しにくかった。
かれの場合には、断熱などの性能向上には興味がないようで
日本の古民家を素材材料として、その古さを故郷であるドイツ風に
デザインアレンジして見ました、という異国情緒の域を出ないように思われた。
それに対して英国人・Shouya P.T Grigg氏は屋根の萱葺きはすっぱり諦めるなど
単純な表面的アレンジではなく本格的な再生利用を志向している。
「このニセコの豪雪地帯では茅葺き屋根はムリ」という合理的判断。
そういう雪対応など建物としての性能への気配りは明確に感じる。
インシュレーション(断熱)工事について詳細は確認していませんが、
外壁はいったん本来の土壁を落としての左官仕上げ。
外壁真壁の柱間に面材として構造用合板が施工されていた。
さらに内側はプラスターボード張り+漆喰仕上げになっているので、
その両方にサンドイッチされて断熱層の確保はされているようでした。
ちょうど洋風真壁構造ともいえるポスト&ビームスタイルの断熱手法か?
また内部床面は土間仕上げされ、温水循環床暖房がパイピングされている。
そういった居住環境性能志向は持っているようでした。
一方、デザイン面ではエントランスに赤サビた厚板鉄板の囲い。
さらに、同素材で床レベルの外周部に水盤が装置されている。
この水盤という発想はあまり北海道ではみられないものだと思います。
冬場にも軒の出でこのまま水が張っているか微妙ですが、
夏場にはこのように水がたたえられていて、室内に反射光を差し込ませる。
古民家の「暗さ」への合理的な対応策とも考えられる装置。

周囲はロックガーデンとして仕上げられる予定。
日本の古民家がロックガーデンの中に浮かんでいるような外観は
あんまり日本人には思い浮かばない発想かも知れませんね。
インスピレーションは、きっと京都龍安寺などの「石庭」があるようだと推測。
屋根やエントランス、水盤外周装置など、
建物本体の素材の古美とモダン&シャープを対置させている。
しかし色合いや素材感で、古民家の素材感とも似合っている。
あしたはこの建物の内観をご紹介したいと思います。
コメント
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