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昨日外観を紹介した北海道ニセコでの栃木県から移築再生日本古民家です。
入って見ると、一部ロフト的「茶室」もありますが1階レベルは移築古民家フロア。
しかし傾斜を見せる敷地なりに、その地下部分がコンクリートで作られている。
上の写真2枚は、その地下部分の様子です。
敷地は窓側が傾斜地になっていて、鋭く崖地で眼下には渓流が流れている。
内部に入ってこの開口部に至るまでこういう周辺環境立地に気付かされなかった。
そういう地形メリットをここで一気に見せるという演出効果はなかなか。
ご馳走は、出すタイミングこそが重要だと言わんばかり(笑)。
こういったロケーションに移設させたセンスも十分に感じさせられます。
考え方としてはこのフラットな床壁天井のRCボックスの上に
古民家の木造架構が乗っかっているイメージです。
開口はその渓流側にだけ1方向に開けられている。
3方向を閉じた構造的にも安定する建築で、
渓流が生み出す四季折々の色彩世界だけに心象が向かうようにデザインしている。
いや逆に、閉じた空間3方向の陰影世界が強調されていると言うべきかも。
1枚目の写真の壁面にはまるで墨絵のような壁面画がありますが、
これは施主、ShouyaP.T.Grigg氏による「墨絵的モノクロ写真」です。
2枚目の写真壁面にも正面にそうした墨絵的表現が飾られている。
かれは、究極的な表現としてモノクロ写真に魅せられているそうです。
侘びサビ、ですが、イギリス人は青い目ながら直感的把握力がある。
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かれ、ShouyaP.T.Grigg氏にはじめて出会ったとき、
かれがDIY的に建てた札幌市西区小別沢の家を見たけれど、
最初からこういった空間への志向性をもったアーティストだと感じていた。
住宅雑誌に対してそのような自己であるというプレゼンテーションをしてくれた。
自己紹介がてら、自宅に来て欲しいということだった。
そういうプレゼンテーションをするのも、ビジネスセンスがあるなと感じた次第。
日本の「オールド」に対しての芸術インスピレーション的リスペクトを持っていた。
聞いたらカメラマンとしての仕事をしたいということだったので、
その場を提供させてもらったというのが、出会いの経緯だった。
雑誌編集者とカメラ表現者という関係が続いたわけだけれど、
ときどきオーストラリアにも帰ることがあり、
彼の地の住宅写真を雑誌に掲載したりもした。
その後、オーストラリア人たちがニセコのパウダースノーを再発見し、
彼の地の資本などによるニセコ地域への投資が盛んになって、
かれは、自らの「表現」の場を大きく拡大させてきた。
ひさしぶりに先日、当社事務所を訪れてくれて、この古民家のことを熱く語っていた。
そんなことから、今回の見学ツアーが実現したのですね。
日本の古民家とかれの表現者的インスピレーションが、
みごとなコラボレーションを魅せていると感じられました。
それにしても、この栃木県にあったという古民家のスケールはすごい。
木造の架構の荒々しい柱梁の力強さには、民族を超えたメッセージ力がある。
こういう日本建築の良さをまっすぐに受け入れてくれるかれの感受性に
たいへんうれしく楽しい気持ちを持っておりました。
建築的にはこういう古民家は採光が最大の問題ですが、
回廊的な渓流側外周を水平的な開口部として開放し、きのう触れたように
軒下外周に「水盤」を装置させての「反射光」の工夫もされていた。
また屋根頂部からの「ほのかな」採光も魅力的でした。
なお、メインテーブルの面材に採用した樹種はたぶん針葉樹素材だと思うのですが、
その使い方の意外さにやや驚かされもしました。
けっこうフラットではなく、木目に沿って凹凸感があったりする。
なんとまぁ大胆な、と思わされた次第です。さすがアングロサクソンですね(笑)。