三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

ドイツパッシブハウス基準クリアの意味合い

2015年09月11日 06時26分57秒 | 住宅性能・設備


きのう新住協総会から、無事札幌に帰還致しました。
最終日になって、ようやく名古屋らしい暑さは多少戻っていましたが、
それまではどちらかというと、肌寒いような天候で終始していました。
さて、総会の最終日は全国の会員からの事例発表。
それぞれに興味深い内容の発表だったわけですが、
最後の、木の香の家・白鳥さんの発表が注目されました。
白鳥さんは新住協の理事でもあり、若い年代の会員を代表するような存在。
東北大学出身で経営的にも先導的な取り組みをされています。

今回、自宅建築に取り組まれるにあたり
ドイツパッシブハウスの基準に合致した住宅を計画されたのです。
写真は、その熱的なシミュレーションを検討したプロセス。
よく、東北のプロのみなさんがこの基準に挑戦されるのですが
みなさん一様に、そのハードルの高さを語られます。
この白鳥さんの検討プロセスでも、
当初の、生活デザイン上の基本的な要望を満たしたプランでは
暖房負荷12.5kWh/m2、暖房用灯油使用量272リットルが
ただただ防御的なプランにしてなんとか基準をクリアさせたプランで、
暖房負荷5.0kWh/m2、暖房用灯油使用量106リットルとなっている。
灯油換算で、年間162リットル削減ということにはなる。
しかし15,000円程度の年間コスト削減、それも太陽熱・光利用など
よりエコロジカルな他熱源選択をすれば簡単に回収可能なコストのために
それこそ死んだようなプランを受け入れるしかない。
まぁ結局、基準を満たすためには、南面以外の窓をなくした
単純なボックスにしていくしかなくなってしまう。
そうすると、基準を満たすためだけに、
その「認定を取る」ためだけの家づくりになってしまう。
そうした自己矛盾と思えるようなプロセスが、表現されていました。
プロセスではドイツ側の方から、基準達成は
「そもそも、岩手県北上では、ムリですね」という指摘もあったとか。
日本では温暖地域しか、達成は難しいのが実際。
そういうことなので、北海道の大多数のみなさんは挑戦しようともされない。
「意味ないでしょ」というのが多数意見。
鎌田先生の発言でも、求めている方向性自体にはまったく賛同だけれど、
そもそもドイツと日本の気候条件の違いや、
ソフト上の気候条件についての判断基準への疑問提起もありました。
多額の「認定費用」を取って、住宅性能を担保する「認証」を与えることで、
より防御的な基準数値にならざるを得ない実態も語られていました。
ドイツは全国一様に、気温条件的には日本の「温暖地」であり、
仮にパッシブハウス基準をスウェーデンに持って行って当てはめると
「無暖房」レベルでようやく基準に合致するともされていました。

さて、このテーマ、
「住宅性能」についての今後の大きなテーマになりそうです。
パッシブハウスは、方向性は正しいけれど、
その地域、生活やデザインに似合ったものの追求というのが、
やはり自然な流れになって行くのではないか。
「原理主義」のような方向性では、やがて行き詰まるのではないのでしょうか?

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新住協総会、そして北海道ガンバロー

2015年09月10日 08時04分48秒 | 住宅性能・設備


さて、きのうは名古屋の国際センターという会場で
新住協の総会でした。
昨年まで新住協(新木造技術研究協議会)はNPO法人でしたが、
今年の大会からは、一般社団法人に組織変更しての
はじめての総会であります。
新住協は、北海道の工務店の結集体と、東大を出られて
室蘭工業大学に赴任された鎌田紀彦先生との出会いが発端の組織。
全国ではじめて室蘭工大に「システム工学」を建築で研究する学部が発足し、
その先鞭を付ける意味で、先生が来道されたのです。
岩手盛岡の出身の鎌田先生が、この同じような積雪寒冷の北海道に来て
当時、北大の荒谷先生などが研究の端緒を開かれていた
寒冷地住宅の研究に立ち向かわれ、「高断熱高気密」の家づくりを
志を共有する北海道の工務店グループの協同を得て、
きわめて現場的に解決する道筋を探って行った。
この場合の「現場的」ということが、ものすごく大切な部分で、
工務店も、理論だけではついて行きようもなかったけれど、
鎌田先生は、具体的な施工プロセスを詳細に、それこそ「システム工学」の
視点から現場工程を観察して、そこから改善すべき問題点を抽出した。
だから、工務店の側も、「そうか、ここをこうすれば、間違いなく良くなる」と
深く納得することができた。
断熱材をタダ厚くしても、さっぱり効果が出なかった事実に対して
気密化施工の重要性を発見し、しかもその手順の細部に至るまで
実践可能な「技術」として工法開発していった。
たぶんこのプロセスは、やがてレジェンドになっていく事なのかも知れない。
しかし、わたしたちはまだいま、ここにいる。
まだまだ、この歩みは終わったわけではない。

北海道が発祥となって生み出されてきたこの革新は
次のプロセスへの踊り場で、いま、立ち止まっているかに見える。
きのうの総会でも、いま、高断熱高気密の工法革新の現場は、
本州地域の方に、その先端部分は差し掛かっているのかも知れない。
そしてそれは、北海道がその契機を生み出したことではあると思う。
懇親会の中締めで、北海道の工務店を代表して武部建設さんが
いみじくも、発言していたけれど、
いま「北海道ガンバロー」という雄叫びが必要なのかも知れない。
それがどのような「目指すべき地点」であるのか、まだ不明に見えるけれど
よりよい家づくり、人間環境の創造に向けて
立ち向かって行く必要があるのだと思う。
・・・多少、酔ってしまった夜でした。



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新住協総会、前日名古屋入りはしたけど・・・

2015年09月09日 06時27分19秒 | 住宅性能・設備

これを予期して早めに名古屋に来たわけではないのですが、
どうも台風の直撃のようであります。
きょうから新住協の全国大会が名古屋を会場にして始まります。
ことしは「前夜祭」が行われないということを、
飛行期チケット予約の時にはわかっていなくて、
例年のように、それにも参加しようと、前日入りしたわけなのであります。
ということで、名古屋に来たのですが、きのうからすでに雨模様。
札幌からなので、あんまり天気のことは無頓着だったのですが
こっちにきてからどうやら台風が近づいているのだとわかった次第。
まことにうかつでありますね。
で、WEBなどで調べて見ていたら、
これはどうやら、その総会の開始時間がまるで直撃されるようなのです。
いまは市内中心部のホテルにいるわけですが、
雨脚は一向に静まる気配もなく、
むしろどんどんと激しくなってきている。
総会の会場まで歩いて10分ほどのホテルなのですが、
そこまでたどりつくにも、持参した旅行用の傘では
やや心もとないような、強く執拗な雨の降りようです。
テレビでは、東海地方各地で土砂災害などの報道もある。



どうやら飛行機は今日の午前中は札幌便、欠航と発表されている。
そういう意味では前日入りは正解とも言えるのですが、
全国から集まってくるみなさんが、無事に到着できるのかどうか、
とくに北海道からきょう到着で予定していた方たちは、
たぶん、時間には到着、無理なのかも知れません。
9月初めの名古屋と言うことで、暑さには覚悟はしてきたのですが、
まったく拍子抜けするほどの涼しさ、というよりも
むしろ肌寒いとでも言った方がいいくらいであります。
着る服も、まさか長袖はいらないだろうと判断して
半袖しか持ってこなかったので、これではちょっと外を歩くのに寒いほど。
南北に長い日本列島、いろいろな条件の変化は見通すべきでしょうが
今回は、そこまでは見通しておりませんでした。
というような状況でありますが、
なんとか、全国のみなさんと情報交流に励んでいきたいと思います。

しかしまぁ、この状況では、ホテルから出歩くのも
相当に難儀しそうであります。
市内中心部なので、タクシーもとても捕まえられそうになさそう。
ということで、やや弱音気味の朝を迎えた次第であります。
みなさんの地方でも、十分お気を付けください。

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雨、ときどきヘンな景色

2015年09月08日 05時12分45秒 | こちら発行人です


どうやら今年の夏は、そろそろ手じまいの感じですね。
北海道にしてみたら、まぁこんなものだろう、という夏でしたが、
本州地区では、ちょっと短い夏だったかも知れませんね。
わたしは、本日から新住協の全国総会が明日から行われる名古屋へ
出張移動するのですが、
あちらは、今日からの3日間とも雨模様という予報。
日程が決まった当初は、あのクソ暑い名古屋の残暑を覚悟していましたが、
どうやら、雨と言うことで、暑さも一服感が強そうであります。
怖いもの見たさが、なんだ、そうでもないな、みたいな
こころなしか、残念感も持っての移動になりそうであります。

雨と言うことでは、北海道も今夏はけっこうな降りようでした。
写真は、わが家が北面して立地している中学校のグラウンドの様子。
ある雨上がりの朝に、ブラインドを開けたら、なにやら、
熱帯の島のマングローブ林のような見慣れない景色が目に飛び込んできた。
いや、金閣のようなきれいな水面からの反射で
緑が2倍になって目に飛び込んできたワケなのです。
なにやら、目の保養をさせてもらっているような、儲けた気分(笑)。
やがて、この光景は、中学校のグランドの「地中排水管」の
許容排水量を超えた「集中的豪雨」で、ため池ができていると
アタマのなかで、了解事項が成立してくる。
数日前の朝のことで、前日は確かに大変な豪雨で、
わが家の排水ドレンパイプも屋上で泥などが詰まっていたので、
屋上がプール状態になっていて、
あわてて夜中にパイプの入り口付近を掃除して排水したりしていた。
どうも最近は天候がゲリラ化しているようですね。

まぁそういう日常の中の非日常が、
こんなみかけないような景色を垣間見せてくる。
水盤という景観装置って、日本人には水田耕作開始以来、
約2000年以上の長きにわたって感受性にきわめて馴染んでいる景色。
きっと、はるかなノスタルジーがこういう景色を見たときに
とっさに、なにかの情念のようなものを沸き立たせるのではないか、
そんな楽しい妄想を、ムクムクとかき立てられておりました。
ということで、本日はごく日常的なブログでした。
さて、それでは、本日から名古屋に向かいたいと思います。
全国の新住協会員のみなさんに、お会いできることを楽しみにしております。
たぶん、明後日以降のブログでご報告致します。
ではでは。





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HONDAリコール発表と企業・国家の安全保障

2015年09月07日 06時40分59秒 | こちら発行人です


さて、きのうは2日目の講演でしたが、
一昨日の講演とは打って変わって、無事にプレゼンのデータを
全部、お話しすることができました。
120枚以上のパワーポイント画像を、88枚まで絞り込んで
MCさんとの掛け合いも、人が代わっていたのですが、
経験も生きて、ポイントのところで活発に掛け合いもできました。
なによりお客様の反応がすばらしく、進行に合わせて、
さまざまに喜怒哀楽感を受け止めていただけて、
その表情が、徐々に打ち解けて納得感も持っていただけたようで、
時間がない中でしたが、会場からの質問もいただきました。
無事にミッション完了であります。
多くのブログ読者のみなさんから、励ましの声も聞かせていただき、
たいへん心強く感じさせていただきました。
本当にありがたいことだと、内心で手を合わせておりました。

で、帰って来たら、
今度は写真のようなアナウンスがHONDAから来ておりました。
わたしのクルマが、先般陥った事態については
このブログでお知らせしていましたが、
メーカーの方で、わたしの遭遇した「エンジン停止事故」なども
しっかりと受け止めてくれたようだと、
やや安心にも似た気持ちを持ちました。
先週、事前に営業の担当者の方からも電話連絡が入っていましたが、
再度、完全な形でリコールしたい旨の通知であります。
どんな大メーカーでも、完璧な商品というのはなかなか難しい。
むしろ、問題が発生したときの対応こそが
生存戦略から考えても、そのメーカーの最重要なことだと思います。
また、国レベルで考えても、天津やうち続いた各地での大爆発事故に、
情報を統制し、まるで戒厳令対応を見せている中国の事例を見るに付け、
どうも危機は徐々に進行しつつある、と思わざるを得ません。
発表されている事態推移と、真実の間には大きな乖離がありそうです。
上海の株式市場への対応とも合わせて
もっと大きな危機が、大きく歯車を回しはじめているのではないかと、
胸騒ぎする部分があります。世界の株価はそれを暗示しているのでは・・・。
第2次世界大戦は、ニューヨークの株価大暴落から始まった事実。
場合によっては、周辺国が巻き込まれていく事態に発展しはしないか、
共産党1党支配体制の13億の国家で、どんどん加速する矛盾・危機。
折しもEUでは、富める国ドイツへの難民認定希望が殺到している。
EUという壮大な実験が、ドイツの経済的ひとり勝ちという事態に
結果しつつあり、そのことが危機を生み出しつつあると思います。
結局ユーロは、ドイツの輸出競争力と経済的成功だけに働いている、
域内各国の今回の事態への対応を見ていると、
危機の根は相当に深いと思わざるを得ないと直感します。

本当の危機を発生させないためには、知性的な対応が不可欠。
いま、そういう知恵のある対応が、企業でも国家でも安全保障に於いて
本当に不可欠になって来ていると思います。



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久しぶり「一般向け」住宅リフォーム講演

2015年09月06日 06時59分43秒 | 住宅取材&ウラ話
きのうときょうの2日間、ある住宅メーカーのイベントで
一般のみなさん向けの住宅リフォームをテーマとした講演を行っています。
まぁ年に10回くらい、講演は依頼されるのですが、
それが本職ではもちろんないので、
困る部分もあるのですが、自社の宣伝にもなるし、
一生懸命に対応するようにしております。
最近は、だいたいがプロのみなさん向けの講演が多く、
普段から用意し、準備を重ねているのはそういう情報ソースが多い。
たぶん、ここ3年くらいはおおむねそういった傾向にあったのですが、
今回は、まったく久しぶりに「一般向け」。
それも集まるユーザーは、その大手メーカーさんの既存ユーザーも
多くいるかもしれないけれど、まったくのフリーのみなさんも考えられる。
っていうような、非常に漠然としたターゲット設定。

考えてみると、このブログも、広く一般向けと言うよりは
どっちかというと、業界のプロのみなさんの読者の方が多い。
雑誌としてのHPは、一般向けとして考えていくのですが、
わたし自身が続けるブログでは、やはり自分自身の興味で書くしかない。
そういうことで自分自身の興味なので、それこそ
歴史ネタやら、時事ネタやら、種々雑多な「わたし発・人間情報」。
そういう普段の情報発信スタイルとは、やや違った角度が、
こういう「一般向け」講演では、意図しなければならない。
ただ、どんなひとが来るのかわからない、というのは難しい。
ということで、なかなか想定がつかず、
どうしても、手探り的な対応できのうの講演に臨みました。
そういうことなので、用意したプレゼンデータは大きく膨らんでしまった。
ふつう頼まれるプロ向け講演でも、データは多くなってしまうのですが
こういった事情もあって、「あれもこれも」と超過剰に詰め込んでしまった。
そこに持ってきて、直前に「MC」の方との打合せまであって、
「そうですね、じゃ、そういうのも入れましょう」みたいな展開になって
いよいよ、60分では絶対無理、120分でも・・・なものになっておりました。
ということで、最後は、集まった人の様子を見て、のお話しスタート。
・・・で、無我の境地(笑)での1時間。
こういうのは、また久しぶりの興奮だったので、動悸が止まらない(笑)。
大体が、多くのみなさんにお話しをするというのは興奮するのですが
いつにも増して、アドレナリンの分泌がハンパない。
興奮を静めるべく沈殿していた日帰り温泉で、自己反省大会・・・。
やはりお話しは、半分もいかないくらいでありました・・・。
その意味では目分量の把握自体は、おおむね正確に作動している(笑)。

で、本日ももう1回講演があります。
土日で2回もやるということで、すごいのですが、
反省に踏まえて、再度、データも大修正してなんとか任務を遂行したいと
ふたたびアドレナリンの静かな点火を確認しております。
再度温泉反省会になるか、汗流しさっぱり大会になるか、
というワクワク感に包まれております(笑)。 さぁやるぞ!
もし、札幌在住の読者の方でお時間のおありの方、
本日午後3時より、札幌市東区北8東10のLIXILショールームにて
その様子をご確認いただけますので、よろしく。

<写真は、無関係のサッポロファクトリーアトリウム>


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出江寛さんの「沈黙」のデザイン論

2015年09月05日 07時13分38秒 | 住宅取材&ウラ話


きょうはあるイベントで1時間ほどお話しする機会があり、
その準備のために、パワーポイントデータを作成しなければならないなか、
JIA北海道支部から、出江寛さん講演のご案内。
何度か、出江さんの講演を聞いて、ファンである身としては
身を切られるようでしたが(笑)、聴講して参りました。
出江さんの講演はもう7年も前にはじめて聞いて
そのデザイン論に、非常に惹かれておりました。

7年の歳月を経て、どのような展開になっているかと、
興味津々で、引き込まれるようでありました。
氏のデザイン論の中核は「沈黙」論。
デザインとして人を沈黙させるものが仕組まれている都市として
京都・奈良・倉敷を挙げられています。
「沈黙は人間の心を癒すものである」とされる。
典型としての、京都は仏の文化の世界として紹介される。
金閣のデザイン論を語られるくだりは、思わず息をのまされる展開。
金閣は、釈迦の骨とされる納骨堂が3階部分にあるそうですが、
黒漆で塗り込められた床板が、
あえて幅も不揃いな寸法のもので構成されているのだそうです。
室内も金泥が天井・壁面に塗り込められた空間で
そこに陽光の移ろいが忍び入ってきたとき、
その床板が微妙に反り返って、ちょうど海面のように「波立つ」。
黒漆で塗り込められた床が、そのとき法悦するような
光の揺らめきを見せるのだそうであります。
出江さんも、その様子は障子からそっと覗き見ただけだそうですが、
いまは名も確認できない、金閣の設計者のデザイン意図が
このような空間体験を創り出していることにリスペクトが伝わってくる。
教えとしての、釈迦入滅から56億7000万年後から衆生を救済することが、
建築デザインとしてイメージ装置として、現出しているのだと。
そういう宗教世界に正面から取り組んできた建築群が
われわれ日本人の精神文化の基底で、沈黙の美を構成していると。

そして、徐々にデザインの哲学論に入っていきます。
「真・行・草」という3つのスタイルへの論考を深めて行きながら、
最期には森侍者という盲目の側女との愛欲に生きたといわれる
一休さんを題材にして、エロスの世界にまで論を広げられていた。
まことに融通無碍、そして自由闊達なデザイン論の炸裂でありました。
そして、国宝の茶室、小堀遠州の「密庵」のデザインについて
繰り返し、詳細に語られていました。
寸法に於いて、基本空間構成に奇跡的に黄金比率が実現している。
天才だけが可能なデザインではないかと。

まさに出江さんのデザイン論が、はるかに時間オーバーで展開して
その迫力に、ひたすら圧倒されておりました。
なんでも、氏の講演としては2回分くらいの中身を
今回は、一気に話されたと言うことで、受け止め側でも、
徐々に沈殿させながら、整理整頓していきたいと思っています。
それにしても、人間は心の若さがすべてということですね。
出江さんの精神の若々しさには、本当に驚愕させられました。
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和風古民家をドイツ風デザインに再生

2015年09月04日 06時26分52秒 | 住宅取材&ウラ話


新潟に、ドイツから来て和風民家をドイツ古民家デザインに変える
そういうリフォームで話題になっている例があると聞いていました。
カール・ベンクスさんという方だそうで、
でもまぁ、ツアーの趣旨とは違うので見学はできないと思っていたのですが
同行の方が熱心にプッシュしてくれたので、見学コースに入りました。
この建築デザイナーさんは、新潟市の賞も受けられている。
以下、HPからその紹介文を。

「第2回新潟市特別賞
カール・ベンクス 建築デザイナー
「古い民家を壊すことは文化を捨てることと同じ。」
ベルリン生まれのカール・ベンクスさんが、築180年の古民家を再生して
新潟県十日町市(旧東頸城郡松代町)に移り住んだのは1993年のこと。
打ち捨てられ朽ちて行く古民家の中に、カールさんは自然環境に
寄り添うような生活の知恵と、日本の職人たちの高度な技とを発見し、
「古い民家を壊すことは、宝石を捨てて砂利を拾っている」
と警鐘を鳴らしてきた。
古い民家をいつくしみ残していくことは、文化を伝えると同時に
世界に誇る職人の技術を伝えることでもある。
遥か9000kmのかなたの国、ドイツからやってきたカール・ベンクスさんの
マイスター魂が、忘れかけていた日本文化の再発見に導いてくれた。
自ら新潟に居を構え、たくさんのメッセージを発信し続ける生き方に
敬意を表し、今後の活動に期待を込めて新潟市特別賞を贈りたい。」
とされています。
その活動の趣旨は共感できるものがあると思っていた次第。
なんですが、訪問したときは事務所は定休日と言うことで
お話を伺うことはできませんでした。
上の1枚目の写真の建物は、松代市街の古い旅館をリフォームした建物。
カール・ベンクスさんの事務所はこちらの2階になるのだそうです。
ということで、直接お話しを聞くことが出来なかったのですが、
いろいろな情報では、デザイン的には確かに東西の文化を越えて
古民家としてのたたずまいに共通性があり、
ドイツ的な感受性も、日本古民家と近似性を持っていることは伝わってくる。
しかし建築的には、ただデザイン的に手を加えているだけで、
断熱などの現代的要件については、無頓着とされていました。
「え、・・・」というところ。
で、ビジネス的には、そのリフォームで生活利便性の低い
山間地の古民家を、わざわざ生活のための住宅として購入するかどうか、
そういった評価が、一般的になっているということだそうです。




住宅建築としてというよりも
どちらかといえば、店舗デザインとしての面で評価されているよう。
ご本人は、旧東ドイツ・ベルリンの出身で、
日本文化に深く傾倒された家庭に育って、こうしたデザインを追求している。
写真のように、柱と梁の接合部の飾りなど、
一般的には宗教施設・寺院の外部で使われる部材を
インテリア空間に持ってくる手法やよく見ると照明のシェードが
お米を炊くお釜だったり(笑)など、キッチュで、
「なんかちがう」けれど、それなりに「似合っている」という印象。
でもこういう風に改装するのであれば、
せっかくだから、ぜひ断熱改修も同時に行えばいいと思うのですが、
そのような志向が無いというのは、まことに残念です。
ちょうど、この空間で現代的な女性書家による展覧会も開かれていましたが、
まことにぴったりとハマっていました。



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手塚貴晴設計・十日町産業文化発信館 いこて

2015年09月03日 06時43分53秒 | 住宅取材&ウラ話


ここのところ、情報がどんどん入力されている一方で
なかなか情報をまとめたり、発信したりすることができておりません。
いろいろな案件があって、忙しいこともあるのですが、
徐々に、整理整頓して情報発信していきたいと思います。
先般、お盆明け時期に訪問した新潟視察出張などはその最たるもので、
いろいろと面白い建築は見てきたのですが、
まったく整理整頓ができていません(泣)。
十日町のフラワーホームさんには、大変お世話になっていたのに、
その面白い建築である、表題の建物について書いておりませんでした。
申し訳ない思いを込めて、とりあえず、写真を掲載しておきたいと思います。

設計は、手塚貴晴さん。
お名前だけは存じ上げてはいましたが、
さてどんな建物を作られているのか、不勉強で予備知識はありませんでした。
この建物は、フラワーホーム創業者の藤田さんが地域への文化貢献を兼ねて
企画し、建設されたものだそうであります。以下HPから、コンセプト。

十日町産業文化発信館 いこて は、
私たちのふるさと、とおかまちで、
継承 と 革新 をコンセプトに歩み始めました。
十日町の伝統を絶やさぬよう、
変化や進化をさせ、チャレンジし続けます。
変わり続けることが伝統になると信じて。

建築としては、雪の多い越後・十日町の風土を表現するような
まるで「かまくら」を彷彿とさせる外観デザインが特徴的。
2枚目の写真のような架構になっていて、木造のドーム構造。
内部には、構造を支えるような柱はありません。
おおらかな空間が広がっていて、つつみこんでくるようなここちよさがあります。
こうした構造なので、明瞭な「外壁」というものは存在せず、
骨組みである木骨アーチ型フレームの立ち上がり部分以外は、
すべて開口できることになる。
で、実際に以下の写真のように、適時、オープンさせています。




まぁ、一種の「滑り出し窓」と言った方がいいのでしょう。
1枚の開閉できる「建具」というか、壁というかは、
かなりの重量、たしか200kgくらいと言われたと記憶していますが、
金物で開閉可能にはなっている。
実際にひとりの力でも開閉はできると言われていましたが、
お料理も食べ、お酒も入ったので(笑)、実験はしてみませんでした。
で、興味を持ったのは、その「屋根」なのか「壁」なのかの防水。
これを板金で処理しようとしたら、開閉の度にいろいろ問題も出る。
ということで、シート防水で処理されていて、それがまた
面白いデザイン要素として、表現構成されていました。
ちょうどわが家のお隣さんでも、既存板金屋根にかぶせるように
シート防水処理の工事をされていたのを見ていたので、
そうか、これで仕上げ、いいんだ、と眺めていただけで、
きちんとそのあたりを調査・確認しておりませんでした。
そんなときにこういった建物を見学できて、興味を深めた次第です。

内部空間は木造の架構が美しく、
かまぼこ形の断面が大きな開口部になっていて、
まことに開放的で魅力的な建物になっています。
なんですが、いっぺんにたくさんの建築を見たので、
個別の建物について、総合的な情報になっておりません(笑)。
昼間も、夜間も両方の時間を体験させてもらいましたが、
それぞれに魅力的な空間体験をさせていただけました。
フラワーホームさんにも、手塚貴晴さんにも深く興味を持った次第です。

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一部「人権派」のヒステリー化を憂う

2015年09月02日 05時37分25秒 | 状況・政治への発言

こうした発言について、この人は、謝らないのだろうか?

8月30日、国会議事堂前での安保法案抗議集会。
山口二郎法政大教授は安倍晋三首相に対し
「お前は人間じゃない」
「たたき切ってやる」
との暴言を吐いたとされる。
権力者とはいえ明らかに、一個人に対する言葉の暴力でなくてなんだろう。
普通に考えれば、こういう発言は言葉のテロと言われても仕方ない。
その場の雰囲気に高揚して、言いたい放題口走っている。
まことに言葉が先鋭化して、ヒステリーが昂進している。
あぶない状況が進展していると思う。

疑問が次々と湧いてくる。
安保法制反対派であれば、なにを言っても許されるのだろうか?
普段から人権を言いつのっている朝日新聞は、たしなめるべきではないのか?
こういうふうに考えるような人間は、「人間じゃない」のだろうか?
人間じゃない⇒殺されても仕方ない⇒たたき切ってやる。
こういう言葉の先鋭化の果てに、
本当にヒステリーと化した人物が現れてこないとも限らない。
それを、「人権派」といつも自認しているひとが公言して憚らない。
そして、こうした公然たる発言事実に対して
「報道しない自由」を発揮しているメディアが多い。
安保法制反対派メディアとして、こういった「騒然たる雰囲気」づくりが大切で
目的のために手段にはすべて目をつぶっているのか?
なにが「人権」か、と思わざるを得ない。
本来、科学的な態度で、冷静な論理で語るべき学者こそが
ヒステリーを煽っている状況。
これが、いまの時代の真実なのだ。
賛成とか反対とか関係なく、こういうヒステリーにだけは毒されてはいけない。







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