ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

パールストリートのクレイジー女たち

2019-02-15 22:37:11 | 読書
トレヴェニアン『パールストリートのクレイジー女たち』





 トレヴェニアンの新刊!

 新しく翻訳本が出るなんて、信じられない。


 表紙はセピア調の写真。

 1930年代と思われるニューヨーク。

 通りを歩く人びとの身なりは小綺麗で、男性は中折れ帽をかぶっている。


 500ページを越える本のストーリーは、表紙だけではわかりようがないものの、良質な物語が詰まっている感じがする。

 帯の「どうしても、これを自分で訳したいと思ってしまった」という江國香織氏の言葉が、さらに期待を抱かせる。

 読み始めて数ページで、オールバニーという街のおかしさにつかまれ、語り手の少年と若い母、妹を身内のように感じていた。

 エピソードのひとつひとつが面白く、いつのまにか心の中に、深く小説の世界が形成されていた。

 もう離れられない。そのくらいに。

 
 子どもの時に好きだったことが、大人になってしまうと、なんでもなくなってしまったりする。

 かつて属していた世界が閉じてしまったと気づいても、哀しさを感じることはない。

 でも、そっとその世界を覗いてみると、どういうわけか涙がぼろぼろこぼれてくる、そんな小説だ。


 装丁は坂川栄治氏+坂川朱音氏(坂川事務所)。(2015)