ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

マーティン・イーデン

2019-02-28 22:05:16 | 読書
ジャック・ロンドン『マーティン・イーデン』





 タイプライターの写真が格好いいカバー。

 大きな身体を折り曲げ、ジャック・ロンドンがこのタイプライターに向かっている姿が浮かぶ。

 「自伝的」なので、本当のジャック・ロンドンの姿ではないはずだが、主人公マーティン・イーデンのほとばしる生命力が、実在した作家の姿と重なる。

 これほど熱量の大きい人物、小説は思い当たらない。

 ときに暑苦しく、鬱陶しいほど。

 でも、パワー全開、全速力が若さなのだ。

 10代で読んでいたら、しばらくは夜も眠れなくなったはず。

 何かに夢中になりたいと焦り、がむしゃらに家の前を走るか、図書館で読み切れないほど本を借りてきただろう。


 どんなに頑張っても結果が伴わず、貧困の底に落ち、周りの人間からも理解されない。

 それでも希望を失わず、成功を手にしたハッピーエンド。と、ならないところが、この作者の心の傷を感じさせる。

 装丁は緒方修一氏。(2019)