ジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男』
1889年に出版されたイギリスの小説。
なんて古い小説だと思ったけれど、夏目漱石がほぼ同時代。
ぼくが持っているのは、筑摩書房の世界ユーモア文庫というシリーズ、その新装版。といっても1977年刊行の古本。
B6サイズの二段組。ビニールのカバーがかかっている。
シリーズ名の通り、ユーモア小説。
130年前の小説のためか、丸谷才一氏の翻訳のためか、格調高い雰囲気。大きな口を開けて笑ってはいけない、手で口元を隠して笑う、そんな上品さ。
過労のため、休息が必要だと信じている三人の男たち。
テムズ河を、キャンプをしながら、のんびりボートで遡上しようと旅に出る。犬一匹を連れて。
まるで引越しのような荷物の多さ。
現代のオートキャンプ並みの優雅な食事。
彼らは、自分たちの行動がおかしいとは、微塵も感じていないらしい。
印象的なのは、語り手が訪れた先で、かつてその地を治めた王に思いを馳せ、歴史を感じ取るところ。
少し風変わりなガイドブックを読んでいるような気分にもなる。
この小説、クセになりそう。
だからいまだに、中公文庫、光文社古典新訳文庫などで新刊が手に入るのだろう。
装画は小島武氏。(2019)