アリス・フェルネ『本を読むひと』
カバーには、おどける少年と澄まし顔の少女の写真。
無邪気な子どもの姿が微笑ましく、つい本を手に取ってしまう。
帯を外し2人の足元を見ると、古い時代なのか、貧しさが感じられる。
ジプシー(ロマ)の子どもたち。
ノンフィクションの雰囲気を出しているが小説だ。
フランスに暮らすロマの大家族と、フランス人女性の物語。
祖母を中心とした家族は、ぬかるんだ土地に許可なく住み着いている。
キャンピングカーと、薪よりもゴミの方が多い焚き火、水は遠くまで汲みに行く生活。
ロマは自由気ままに楽しく生きていると思っていたが、そうではない。仕事をせず、貧しく、また社会から疎外されている。
そんな閉鎖された家族の元へ、図書館員の女性エステールが訪れる。
教育を受けていない子どもたちに、本を読み聞かせようとするのだ。
現実のロマの生活はわからないが、これを貧困家庭の話だと思うと身近に感じられる。
学校へ通ったことのない親の無気力な人生を、子どもに受け継がせていいのだろうか。
エステールの行動を少し理解できる。
彼女は、物語の持つ力を信じている。
やがてそれが、子どもだけでなく、親をも変えていく。
信じることの先に希望があることを、この物語は教えてくれる。
カバー写真はJosef Koudelka、装丁は新潮社装幀室。(2021)
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