ジョージナ・クリーグ『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』
向き合って座る2人の女性。可愛らしいタッチのイラストが表紙に描かれている。
とても長いタイトルは、読み終えてそのままの内容だとわかるのだが、イラストの雰囲気も手伝って、どこか寓話的な物語を想像した。
「ヘレン・ケラー」とは、何かを象徴するようなものであって、本当にあのヘレン・ケラーに手紙を書く形のまま進むとは思わなかった。
読み始めて、ぼくはヘレン・ケラーにさほど興味がないことに気づいた。しかし同時に、ぼくの持っている知識がわずかなものでしかないことが原因だともわかった。おそらく子どもの頃に読んだ偉人伝だ。
この本の中には、偉人伝では決して書かれることのないヘレン・ケラーが出てくる。
ただし、細部のいくつかは著者の想像だ。著者はヘレンに会ったことはなく、資料をもとにヘレンの日常を再現していく。ときには遠慮のない興味本位とも思える部分もあり、ぼくには居心地が悪い。
これが小説のような、はっきり創作とわかるものだったら、もっと素直に受け止められたのかもしれない。
しかし小説だと、著者がこれを書かなくてはならなかった理由がぼやけてしまうのだろう。
デザインは名久井直子氏、イラストはfancomi氏。(2021)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます