ロビンソン本を読む

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私たち異者は

2019-10-25 18:17:57 | 読書
スティーヴン・ミルハウザー『私たち異者は』




 この本の異質な雰囲気は、本を開く前から感じられる。

 カバーには、誰も座っていない肱掛け椅子のイラスト。

 椅子というのは、不思議と人の気配をはらむもので、人の姿がないのに、誰かがいる、またはいた感じが強い。

 さらに、ピンクの帯が、青がかった緑色のカバーにしっくりこない。

 表紙を開くと、見返しに帯と同じ紙が使われていて、何かにつきまとわれているような、先回りされたような気分になる。

 とはいっても、このカバーと帯の組み合わせが、ありえないというわけではない。

 言葉にできないモヤモヤしたものが、漂っているのだ。

 もしかしたら、『私たち異者は』というタイトルと、その手書きの文字に、ぼくは翻弄されているのかもしれない。


 本のタイトルになっている「私たち異者は」は、7つの短編のひとつ。

 ほかの6編には、異者という言葉は使われていない。

 異者とは、ここでは幽霊をさしているが、単に人ではない者、どこか違う者ととらえるならば、ほかにも異者の物語はある。

 さらに異者を異質と広げるのならば、7編すべてがそうだろう。

 異質なものに接しているモヤモヤした感じは、最後まで離れない。


 装丁は緒方修一氏、装画は手塚リサ氏。(2019)


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