カーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』
読み終えたばかりの小説を、また最初から読み始める。
長い物語だと細かい部分を忘れてしまうことがあるが、『心は孤独な狩人』は印象的な文章が続くためか、わりとよく覚えていた。
一度めは物語の進行に夢中になり、ゆっくり歩いていたつもりが、いつの間にか小走りになっている。
二度めは行き先がわかっているので、ときどき止まりながらゆっくり進められる。
同じ文章を読んでいるのに、気づくこと、感じることが違う。
登場人物の一人、シンガーの悲しさ、寂しさは、すでに冒頭に詰まっていたのだと知る。
彼はこの物語の中で、ほかの人たちの心の拠り所となるのだが、彼自身は大切なものを失いつつあり、ずっと不安定な状態だったのだろうかと想像する。
2段組で400ページ近いものなので、読み終えるまでにかなりの時間を要した。
しかし時間がかかったのは、長かったことだけが理由ではない。
この物語に浸っていると不思議と落ち着くのだ。
だから少しずつ読んで、早く終わりが来ないようにしていたのだと思う。
とはいっても、決して明るく快適な世界ではない。登場する誰もが何かしらの不安を抱えて生きている。
一度読んでもなお新鮮さを失わない80年も前の小説は、これからも時折開くことになるのだろう。
装画はジョン・A・ウッドサイド。(2021)
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