ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

デイジー・ミラー

2021-06-06 19:52:38 | 読書
 ヘンリー・ジェイムズ『デイジー・ミラー』




 名作新訳コレクションとして、『デイジー・ミラー』が新たな装丁で書店に並んでいた。

 ジョン・シンガー・サージェントの絵を裁ち落としで入れた表紙は、新しさと古さが絶妙に混じっている。

 気怠そうにソファに横たわる女性の姿が描かれていて、帯の「誰が彼女を殺したのか?」を目にすると、この女性は死んでいるのか? と勘違いする。

 
 気になる女性がいる。

 どうやら彼女もぼくのことを好きなようだ。そんな素振りを見せる。

 それなのに別の男性としょっちゅう出歩いている。

 ぼくの勘違いなのか。

 天真爛漫に見えるけれど、ただ鈍いだけの人なのか。

 彼女の真意がわからず、徐々に距離をおくようになる。


 ウィンターボーンがデイジーを好きなのは、彼女が「目を奪うような、みごとなまでに愛らしい娘」だからだ。

 一度好きになってしまうと、本当の姿が見えにくくなってしまう。

 多少の不都合な事実は、自分自身を誤魔化すことでなんでもなかったことにできる。


 小説に合わせて描かれた絵ではないので、表紙の女性はデイジーではない。

 しかし、この絵はデイジーの一面を示唆しているのかもしれない。

 いつも活発な人でも、気怠いときはある。

 人は見かけだけではわからない。

 デイジーの本当の姿を、ぼくはつかめていない。


 装画はジョン・シンガー・サージェント「無関心(休息)」。(2021)




最新の画像もっと見る

コメントを投稿