ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

ブッチャー・ボーイ

2022-03-29 16:20:12 | 読書
 パトリック・マッケイブ『ブッチャー・ボーイ』



 「いまから二十年か三十年か四十年くらいまえ、ぼくがまだほんの子どもだったときのこと」で物語は始まる。

 この言い方から、これから語られることが、いかにいい加減で信用がおけないものかが推察される。

 すでに中年になったフランシーが、少年時代のことを思い出している形。

 しかし思考は子どものまま。

 現実の出来事の合間に、フランシーの空想が混じるため、靄がかかったような世界だ。

 辻褄の合わないことが表れる。

 少し慎重に読んでみる。

 フランシーの行動は、ぼくには理解できないことが多く、それらは妄想なのだろうと思ってしまうが、実際に行われたことらしいと見当がつくと動揺する。

 時折、句読点のない文章が挟まれる。

 学校へ行くことをやめてしまったフランシーの、学力の低さを思うが、同時に切羽詰まった気持ちも感じられる。

 句読点がなくても読みやすいのは、翻訳の良さだろう。

 フランシーは哀れで同情されるべき子どもなのか。

 こんな怪物のような人間にしたのは、誰なのか。

 
 装画はsanoooo氏、装丁は森敬太氏。(2022)



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