エルヴェ・ル・テリエ『異常』
顔のない黒いマネキンが、隣りのマネキンの首を絞めようとしている。
カバーの写真、と思ったら3DCGのイラスト。
帯を外して見ると、2体は同じ服装。
双子のように見える。
どことなく恐ろしく感じるのは、このわからない状況に加え「アノマリー 異常」というタイトルが目に入るからだろうか。
整然と並べられたタイトル、著者名、翻訳者名、フランス語タイトル、出版社名が、特異な状況を傍観しているようで、表紙を眺めていると落ち着かない。
物語は、複数の人物の日常を描写し並べている。
相互に関係はなさそうだし、特に変わった人はいない。殺し屋以外は。
それぞれ最初に日付が入っているのが気になり注意してみたが、どんな意味があるのかつかめない。
異常は、突然現れる。
日付の意味、カバーの双子に見えた2体の謎がわかる。
あまりに異常な事態なため右往左往する人びと。
そんな状況下でも、愛する気持ちは揺るがない人たち。
老齢の男性が若い女性に恋をし、悲しい結果になるとわかっているのに心が折れない姿は哀愁を誘うが、異常な世界をものともしない強さも感じる。
装画はPOOL氏、装丁は早川書房デザイン室。(2022)
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