ロビンソン本を読む

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ひとり旅立つ少年よ

2019-09-29 11:59:08 | 読書
ボストン・テラン『ひとり旅立つ少年よ』




 カバーには、遥かに延びて行く線路の写真。

 線路を邪魔しない右上に置かれたタイトル『ひとり旅立つ少年よ』。

 これだけを見たならば、十代に向けた金言集や詩集のようにも思える。

 しかし、帯の文言を先に読んでしまったので、そうではないとわかっている。

 〈父の罪を贖うため、地平線の彼方をめざす 危うく、でも強いその姿を見よ。〉

 泣かせようとしているのがわかる。

 きっと感動的な話なのだ。

 ところが、主人公の少年は、たびたび自分の行いをセンチメンタルに反省する。

 そのたびに興が削がれ、冷静になってしまう。


 奴隷制度が残っている時代のアメリカが舞台。

 馬車が走り、銃を撃ち、人が死んでいく、西部劇のようなエンターテイメント小説の体裁。

 そこに少年の成長を織り込んでいる。

 すべては少年のため。

 そのためなのか、少年と関わる人たちが小道具程度の扱いなのが残念だ。魅力的な人たちなのに。

 白人の少年が、黒人と一緒に競りにかけられるなど、意外な展開は楽しめる。

 これも、少年を鍛える仕掛けのひとつに感じられてしまうのだが。


 カバーデザインは石崎健太郎氏。(2019)




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