ロビンソン本を読む

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シンコ・エスキーナス街の罠

2020-01-12 16:33:23 | 読書
マリオ・バルガス=リョサ『シンコ・エスキーナス街の罠』





 血で書かれたかのような赤いタイトル文字は、ところどころ滴り落ちている。

 背景の黒、赤と白の文字は、不気味さを湛えている。

 けれども、怖さを追求した感じがなくて、適度に力を緩めたような印象を受ける。

 怖いものに興味はあるけれど、本当に怖いのは冗談にならないから勘弁してくれ、そんな思いをくむかのように。

 それは、読んでみて納得する。

 本当は、とても怖い実話だけれど、実話だと言ってしまうと読めなくなるので、冗談だとかわすようなものなのだ。

 
 舞台はペルー。

 金持ちのスキャンダルと、そのネタで強請りをするゴシップ誌の編集長。

 そして殺人事件が起こる。

 全体に、大味な小説のように感じながら読んでいたが、ところどころ緊張感もあって楽しい時間だった。

 もう少し膨らませられそうな気配はあるけれど、十分かもしれない。

 何が怖いのかというと、ペルーを支配する闇の権力。

 合間に入っているエロティックな描写が緩衝材のようになり、本当にあることなのか、そうではないのか、曖昧なままになる。


 装丁は水戸部功氏。(2020)





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