ファビオ・スタッシ『読書セラピスト』
窓辺に立って本を読む男性は、たまたま手に取った本が予想外に面白く、つい読み耽ってしまったように見える。
カバーの絵に感じるそんな雰囲気は、小説の主人公ヴィンチェの生き方と重なる。
国語教師としてうまくいかず、試しに2か月だけ読書セラピストとして開業してみるというヴィンチェ。
最初のクライエントは、自分の髪に悩んでいる女性。
ヴィンチェはヘミングウェイの「移動祝祭日」を薦めるのだが、ぼくには彼が何を言っているのかちょっとわからない。
女性は激怒し帰ってしまう。
頭の中にさまざまな本を記憶しているというヴィンチェだが、それを上手に活用できない。
文学は癒しの効果があり、読書が心の悩みを軽減させることもある。
ただし、適切な本を見つけるのは難しい。
医師に処方された薬が、必ずしも自分の体に合うとは限らないように、誰にでも効能が期待できる本はないだろう。
そしてその効力は、読み解く力の有無にも左右される。
読書セラピストとしては冴えないヴィンチェだが、ひとつの謎を解いてしまう。
この小説はミステリーでもあるのだ。
装画はヴィルヘルム・ハンマースホイ、装丁は柳川貴代氏。(2022)
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