ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

読書セラピスト

2022-05-15 19:36:00 | 読書
 ファビオ・スタッシ『読書セラピスト』



 窓辺に立って本を読む男性は、たまたま手に取った本が予想外に面白く、つい読み耽ってしまったように見える。

 カバーの絵に感じるそんな雰囲気は、小説の主人公ヴィンチェの生き方と重なる。

 国語教師としてうまくいかず、試しに2か月だけ読書セラピストとして開業してみるというヴィンチェ。

 最初のクライエントは、自分の髪に悩んでいる女性。

 ヴィンチェはヘミングウェイの「移動祝祭日」を薦めるのだが、ぼくには彼が何を言っているのかちょっとわからない。

 女性は激怒し帰ってしまう。

 頭の中にさまざまな本を記憶しているというヴィンチェだが、それを上手に活用できない。
 

 文学は癒しの効果があり、読書が心の悩みを軽減させることもある。

 ただし、適切な本を見つけるのは難しい。

 医師に処方された薬が、必ずしも自分の体に合うとは限らないように、誰にでも効能が期待できる本はないだろう。

 そしてその効力は、読み解く力の有無にも左右される。


 読書セラピストとしては冴えないヴィンチェだが、ひとつの謎を解いてしまう。

 この小説はミステリーでもあるのだ。


 装画はヴィルヘルム・ハンマースホイ、装丁は柳川貴代氏。(2022)


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