ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

赤い十字

2022-05-06 19:42:47 | 読書
 サーシャ・フィリペンコ『赤い十字』



 カバーの抽象的なイラストや、視点をあちこち移動させてしまう文字の配置には、何かのメッセージが込められているように感じてしまう。

 本心を隠し、伝えたいことはストレートに表現しない。

 それは、この小説の舞台となるソ連では重要なこと。


 ロシアの隣国ベラルーシの首都ミンスクへ、30歳の男性が引っ越してきた。

 集合住宅の隣人は、アルツハイマーを患っているおばあさん。

 自分のことで頭がいっぱいの男は、おばあさんにはまったく関心がないが、おばあさんは無理矢理自分の昔話を聞かせる。

 ソ連で体験した、戦時中の不可解で恐怖の日々。

 男は次第に引き込まれていく。


 80年も昔の戦争の話だ。

 ソ連がどれほど怖い国だったのかは、小説や映画の中で繰り返し触れてきたので驚きつつも、そんなところだったのだろうと、古い話として受け止められる。これが半年前に読んだのならば。

 ソ連と現在のロシアを比べてしまう。

 長い年月を経ても変わっていないことに震える。


 装画はササキエイコ氏、装丁は川名潤氏。(2022)




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