ジェイソン・レイノルズ
ブレンダン・カイリー
『オール・アメリカン・ボーイズ』
アメリカで出版されているこの本の英語版表紙を見たとき、吐き気がするほどの怖さを感じた。
両手を挙げる青年の後ろ姿は、正面のライトに照らされてシルエットになっている。この本を読み終えた後だと、ライトは警察車両だと想像できるし、さらにその先には銃を構えた警察官が何人もいて、少しでも動けば発砲されることもわかっている。なぜなら、彼は黒人だから。悪いことは何もやっていなくても、アメリカでは殺されてしまうことがある。
物語は、黒人少年が白人警察官から暴行を受けたことから始まる。
偶然その場面を見かけた白人少年と、大怪我を負った黒人少年の語りが、2人の作家によって交互に綴られていく。
暴行場面はSNSで拡散され、2人が通う高校で警察に対する抗議のデモが計画される。
現実の世界で、何度も同じようなニュースを見てきた。
この小説は、現実と同じように、問題の解決には至らない。でも、容易に解決できないのだと改めて理解し、さらに考えるきっかけにはなる。
日本語版のカバーは格好いい。イラスト、文字の扱い、色合いすべてがクールだ。持っていてもいいし、10代の友人にあげてもいい。
イラストは岡野賢介氏、装丁はアルビレオ。(2021)
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