ジョゼ・ルイス・ペイショット『ガルヴェイアスの犬』
表紙に描かれた、大きな黒い犬が不気味。
版画特有のインクのかすれが、犬の体から死臭をまき散らしているように見える。
舞台はポルトガル。名も知らない小さな村。
その村の外れに、宇宙から謎の物体が落ちてくる。
衝撃で、カフェの窓ガラスが砕け散ったほど。
村人たちは、恐る恐る巨大な穴をのぞきこむが、強烈な熱と硫黄の匂いで近づけない。
そのうち、彼らは穴のことも、中にいる何かのことも忘れてしまう。
微動だにしない、穴の中の名もない物(生物なのか?)の存在は、読んでいる間、ずっと頭の片隅にこびりついている。
物語は、さまざな村人たちの日常が綴られていくかたち。
前に登場した人が、別の人の生活にちょこっと姿を表して、関係が少しずつ見えてくる。
時間のずれがあるので、途中になっていた出来事のその後が、別の人物から語られたりする。
ところどころに、名もない物が放つ硫黄の匂いが不快、という記述が出てくる。
けれども、名もない物の存在が忘れられているので、住人はその匂いを自然に受け入れている。
村全体が、独特な何かで覆われている感覚になる。
表紙の絵から感じた匂い、文中に広がる硫黄。
文字から匂いは漂ってこないのに、鼻の奥が濁ったような状態が続く。
実在するというこの村・ガルヴェイアスの名前は、匂いの記憶とともに、永遠にぼくの頭から消えることはないかもしれない。
カバーイラストはタダジュン氏。(2019)
表紙に描かれた、大きな黒い犬が不気味。
版画特有のインクのかすれが、犬の体から死臭をまき散らしているように見える。
舞台はポルトガル。名も知らない小さな村。
その村の外れに、宇宙から謎の物体が落ちてくる。
衝撃で、カフェの窓ガラスが砕け散ったほど。
村人たちは、恐る恐る巨大な穴をのぞきこむが、強烈な熱と硫黄の匂いで近づけない。
そのうち、彼らは穴のことも、中にいる何かのことも忘れてしまう。
微動だにしない、穴の中の名もない物(生物なのか?)の存在は、読んでいる間、ずっと頭の片隅にこびりついている。
物語は、さまざな村人たちの日常が綴られていくかたち。
前に登場した人が、別の人の生活にちょこっと姿を表して、関係が少しずつ見えてくる。
時間のずれがあるので、途中になっていた出来事のその後が、別の人物から語られたりする。
ところどころに、名もない物が放つ硫黄の匂いが不快、という記述が出てくる。
けれども、名もない物の存在が忘れられているので、住人はその匂いを自然に受け入れている。
村全体が、独特な何かで覆われている感覚になる。
表紙の絵から感じた匂い、文中に広がる硫黄。
文字から匂いは漂ってこないのに、鼻の奥が濁ったような状態が続く。
実在するというこの村・ガルヴェイアスの名前は、匂いの記憶とともに、永遠にぼくの頭から消えることはないかもしれない。
カバーイラストはタダジュン氏。(2019)
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