ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

ほどける

2022-12-15 20:31:56 | 読書
 エドウィージ・ダンティカ『ほどける』



 長く束ねた髪。

 ほっそりとした体つきの後ろ姿。

 白いシャツは輪郭があやふやで、背景に溶け込んでいきそうだ。

 タイトルの『ほどける』は、表紙に描かれた人の黒髪の上で、ほかを圧倒して白く浮き出ており、繊細なカバーの中で力強い印象を与える。


 両親と双子の姉妹が乗る車が、突然対向車に追突される。

 意識を取り戻した妹のジゼルは、周囲の人たちの会話を理解できるが、体を動かすことも話すこともできない。

 会話の端々から、姉のイザベルだけが亡くなり、自分が姉と間違えられていることを知る。


 ジゼルはイザベルを思い出す。

 生き生きと描写されるイザベルは、活発で魅力的な女の子だ。

 2人でタイムカプセルを作ったとき、イザベルはこんな手紙を入れる。

 「未来さま、

 わたしを茫然とさせてください。

 びっくりさせてください。

 仰天させてください。

 大喜びさせてください。

 驚かせてください。

 驚嘆させてください!」


 亡くなった人を思い出すと、不思議と心が落ち着くことがある。

 振り返る些細な会話の中に、生きているぼくにとって糸口になるような暗示を感じたりする。

 
 ジゼルとイザベルの関係は、双子だっただけにより強いものだったはずだが、時間の経過とともにほどけていく。

 しかし心の中の存在は決して消えることなく、むしろ確固としたものになっていくのかもしれない。

 
 装画は塩月悠氏、装丁は水崎真奈美氏。(2022)




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