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<琉球新報社説>玉城新知事に望む ノーサイドで課題解決を
知事選が終わった。「ノーサイド」だ。もとより県民に敵、味方の区別はない。玉城デニー新知事は、対立陣営との間にしこりを残さず、全県民の代表として山積する諸課題に取り組んでほしい。
振り返れば、2013年に政府に提出した垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備撤回と普天間飛行場の閉鎖・撤去を求める建白書は県議会、全市町村、全市町村議会などの連名だった。
12年の衆院選では、西銘恒三郎、国場幸之助両氏を含む自民党の県選出・出身衆院議員も全員が「普天間飛行場の県外移設を求める」と公約していた。党幹部から辺野古移設を容認するよう促されるなどして翻意している。かつては玉城氏と方向を同じくする時期があった。
公明党県本は党本部と一線を画し、普天間飛行場の県内移設に反対する立場だ。今回の知事選では、基地問題だけでなく総合的な判断から相手候補を推薦したという。玉城氏と共同歩調を取る余地は十分にあるだろう。
本土の側が沖縄に分断の種を持ち込んでいることがよく分かる。
沖縄の面積は国土の0・6%にすぎない。そこに在日米軍専用施設面積の70%が集中している。負担軽減のため、普天間飛行場を返還する代わりに、新たな基地を名護市に造ると政府が決めた。なぜまた県内なのか。
沖縄は、太平洋戦争で本土防衛の時間稼ぎに利用され、国内で唯一、おびただしい数の住民を巻き込んだ地上戦が行われた。住民の4人に1人が犠牲になっている。
沖縄を占領した米軍は、銃剣とブルドーザーによって強制的に土地を接収した。今に続く広大な米軍基地はいや応なしに造られた。
普天間飛行場がなくなったとしても嘉手納基地をはじめ広大な基地は依然として残る。普天間の返還は、抱えている負担の大きさから見ればささやかな要求でしかない。
小野寺五典防衛相は「辺野古移設が唯一の解決策である」と繰り返している。果たしてそうだろうか。
石破茂元防衛相が指摘したように、1950年代に本土から沖縄に海兵隊が移ったのは日米が反基地運動を恐れたからだ。政治的に解決できる問題といえる。
玉城氏は辺野古の新基地建設を巡り国と協議する考えを示した。菅義偉官房長官は会う用意があるという。
安倍晋三首相は4年前、知事に就任したばかりの翁長雄志氏との面会を4カ月も拒み続けた。新基地反対の強い県民意志が再び示されたことで、聞く耳を持たない姿勢を改めるのなら、歓迎したい。
民意をバックに、玉城新知事が求める普天間返還と新基地建設の断念は、決して法外な要求ではない。県の埋め立て承認撤回に対し、法的対抗措置ではなく、県と協調する選択肢を模索してほしい。