◆「何かいいことがあるのだろうか」
坂本さんは「人々の記憶は薄れているかもしれないけれど、いつまでたっても原発は危険だ」と強調。「事故の汚染水・処理水も増えるばかり。事故のリスクはこれからも続く」と訴えた。
岸田文雄首相は、震災後に封印されていた原発のリプレース(建て替え)や、60年超の運転容認を国会で十分な議論をしないまま決定した。坂本さんは「なぜ未完成で最も危険な発電方法を推進しようとするのか」と岸田政権の対応を問題視する。
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分問題が解決されていないことにも触れて「何かいいことがあるのだろうか」「そこまで執着するのはなぜだろう」と疑問を連ねる。
◆直腸がんで今も闘病
坂本さんは2011年の東日本大震災後、被災地出身の子どもらによる「東北ユースオーケストラ」を創設し、代表・監督を務めるなど被災者を支援してきた。環境保護や脱原発に強い関心を持ち、13年には本紙記者約100人と、震災・原発と報道をテーマに意見交換。討論をまとめた「坂本龍一×東京新聞 脱原発とメディアを考える」(東京新聞)が刊行された。
21年1月に直腸がんを公表し、今も闘病中。昨年12月には、事前収録した無観客のピアノ・ソロ・コンサートを日本や欧米、アジアなど約30の国や地域に配信し、体調面から「これが最後になるかもしれない」とコメントしている。
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