白井明大『日本の七十二候を楽しむ―旧暦のある暮らし―』(東方出版)という本を買いました。帯には「日本には二十四の節気と七十二もの季節があることを知っていますか」とあります。私は旧暦に興味がありますから、副題の「旧暦のある暮らし」に惹かれましたし、帯の最後には「旧暦は心と体で感じる日々の楽しみに満ちています」とあります。
開きますと春・夏・秋・冬の4部に分かれ、例えば今頃の秋ですと項目が立秋、処暑、白露、秋分、寒露、霜降の6つに分けられ、それぞれがさらに初候、次候、末候に細分されています。初候、次候、末候はそれぞれ見開き二ページまとめられ、まず「候のことば」があり、その後は「旬の魚介」「旬の野菜」「旬の草花」「旬の野鳥」「旬の行事」などが素朴で美しい絵(有賀一広画)とともに簡潔に解説されています。全編このスタイルで統一されていて、作者の工夫が窺われる楽しい本です。
今頃の季節に関する記述を拾い上げてみますと、秋の項の最後「霜降(そうこう)」の末候は「楓蔦黄なり(もみじつたきなり」で、「草木が黄や紅に染まることを、もみつと言ったのが語源だそう。(新暦ではおよそ十一月二日~十一月六日ごろ)」とあります。「候のことば」は「山装う」が解説され、旬の魚介は「かわはぎ」。「フグに勝るとも劣らないおいしさのかわはぎ。旬はは秋~冬。シコッと締まった食感味わい深い旨味です。茹でてしょうゆに溶かした肝を刺身にからめて食べると、舌がとろけるよう。煮ても焼いても美味なりです」といかにも味覚をそそります。(以下「旬の野菜(さつまいも)」、旬の草花(紅葉)、「旬の行事(鹿児島県曽於の弥五郎どんまつり」と続きますが解説は省略します。
このように簡潔な語り口がよく、読み物としてもなかなか面白いものです。旧暦好きの人にはお勧めです。