「この写真、キヤノネットで写ってん。」
「ふーん。」
「昭和36年製で、当時の値段が二万円を切ったちゅうんで、他の会社の反発を食うたぐらいのカメラなんや。」
「へえ。で、今いくらなん?」
「よく聞いてくれました。これはですね。Canonetの文字が消えかかってて、レンズとファインダーにわずかにカビがありまして、シャッター羽根が少し粘っていて、シャッターが切れたり、切れなかったりして、低速シャッターが遅い。」
「げっ。」
「おまけに絞りが、F16くらいで一定で、モルトは傷んでいるけど、セレンは作動してるちゅうのをオクで買うたんや。」
「そんなん、どうすんの。」
「これをですね。レンズを開けてシャッターと絞りをジッポライターのオイルで洗います。」
「で。」
「で、どんどん洗って、モルトを張り替えて、キヤノネットの文字には墨入れします。」
「ふんふん。」
「で、やっとこ撮れるようになるんや。ま、オクで買うたんで、安かったけど。」
「今のやつ、買うた方が良いんちゃうのん。」
「・・・・・。」
Canonet SE45mm F1.9