暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ(堀川惠子 講談社)
日本から大陸などに兵士や兵器の輸送を担ったのは海軍ではなく陸軍で、その主要な根拠地は広島市の南部、宇品にあった。
宇品の船舶輸送司令官:田尻昌次はキャリアの大部分を船舶輸送に費やした。輸送船から上陸地まで兵員を運ぶ大発は、彼が宇品の司令官だった頃に民間の技術陣に開発させたもので、当時としては画期的なアイディアだったという。その大発を活用した(上海事変の)七了口の敵前上陸戦は成功し、市街地付近で苦戦していた局面を打開した。
さらに田尻は大発などを大量に運搬できる船艇母艦:神州丸も建造させている。今でいう強襲揚陸艦みたいなものだろうか。
田尻は中央から疎まれて罷免されてしまうが、次の次の司令官:佐伯文郎もすぐれた業績を残した。
軍は自前の輸送船はほとんど保有していなくて、大半が民間から徴用したもの。日米開戦前、需給は非常に逼迫していたが、船舶輸送司令部は調整力を発揮して、日米開戦時のマレー半島上陸戦のための大量輸送を成功させたという。
佐伯は関東大震災後の救援任務を担当したこともあり、原爆投下後の被害者救護に力を尽くしたそうである。
日露戦争で、日本軍が恐れたのはロシア海軍による日本ー大陸間の輸送妨害で、バルチック艦隊を迎えうつにあたって殲滅戦を計画したのもそのためだ。つまり日本海軍の根本の目的は海上護衛だったのに、日本海海戦で完勝してしまったせいか、太平洋戦争の頃には艦隊決戦を至上の目的とするようになってしまったようだ。
一方、アメリカ軍は正規空母まで投入して本格的な通商破壊を行っており、日本のシーレーンはガタガタになってしまった。本書にも記述があるが、そのために南方では原油をはじめとする物品が(日本に輸送できずに)溢れていたらしい。やっとこさ日本に運んできても今度は港湾周辺のインフラが不足していて港に山積されたままになっていたそうだ。
もしも、海軍が海上護衛を主目的に据えてシーレーン確保に全力をあげていたら・・・もしも、大発や神州丸開発に続いて田尻が構想していた頑丈で武装した輸送船を開発し、戦艦なんかを後回しにして量産していたら・・・そんなタラレバが頭をよぎった。
船舶輸送司令部を描くとしいう本書のテーマからは少し外れるが、ガダルカナルへ決死の輸送業務を完遂した民間船:鬼怒川丸とその船員たちの上陸後の悲劇を描いた部分もとても感動的だった。
日本から大陸などに兵士や兵器の輸送を担ったのは海軍ではなく陸軍で、その主要な根拠地は広島市の南部、宇品にあった。
宇品の船舶輸送司令官:田尻昌次はキャリアの大部分を船舶輸送に費やした。輸送船から上陸地まで兵員を運ぶ大発は、彼が宇品の司令官だった頃に民間の技術陣に開発させたもので、当時としては画期的なアイディアだったという。その大発を活用した(上海事変の)七了口の敵前上陸戦は成功し、市街地付近で苦戦していた局面を打開した。
さらに田尻は大発などを大量に運搬できる船艇母艦:神州丸も建造させている。今でいう強襲揚陸艦みたいなものだろうか。
田尻は中央から疎まれて罷免されてしまうが、次の次の司令官:佐伯文郎もすぐれた業績を残した。
軍は自前の輸送船はほとんど保有していなくて、大半が民間から徴用したもの。日米開戦前、需給は非常に逼迫していたが、船舶輸送司令部は調整力を発揮して、日米開戦時のマレー半島上陸戦のための大量輸送を成功させたという。
佐伯は関東大震災後の救援任務を担当したこともあり、原爆投下後の被害者救護に力を尽くしたそうである。
日露戦争で、日本軍が恐れたのはロシア海軍による日本ー大陸間の輸送妨害で、バルチック艦隊を迎えうつにあたって殲滅戦を計画したのもそのためだ。つまり日本海軍の根本の目的は海上護衛だったのに、日本海海戦で完勝してしまったせいか、太平洋戦争の頃には艦隊決戦を至上の目的とするようになってしまったようだ。
一方、アメリカ軍は正規空母まで投入して本格的な通商破壊を行っており、日本のシーレーンはガタガタになってしまった。本書にも記述があるが、そのために南方では原油をはじめとする物品が(日本に輸送できずに)溢れていたらしい。やっとこさ日本に運んできても今度は港湾周辺のインフラが不足していて港に山積されたままになっていたそうだ。
もしも、海軍が海上護衛を主目的に据えてシーレーン確保に全力をあげていたら・・・もしも、大発や神州丸開発に続いて田尻が構想していた頑丈で武装した輸送船を開発し、戦艦なんかを後回しにして量産していたら・・・そんなタラレバが頭をよぎった。
船舶輸送司令部を描くとしいう本書のテーマからは少し外れるが、ガダルカナルへ決死の輸送業務を完遂した民間船:鬼怒川丸とその船員たちの上陸後の悲劇を描いた部分もとても感動的だった。