蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

辺境メシ

2022年06月11日 | 本の感想
辺境メシ(高野秀行 文春文庫)

著者が世界各地(除く日本以外の先進国)のゲテモノ料理を食べ歩く体験記。

アジアの(どちらかというと先進国に近い)国に出張した時、現地の日本人同僚から「水は未開封のボトルのみ可、火が通ってないものは食べないこと。生の果物もダメ」ときつく注意された。「え、果物もダメなの?」とちょっと意外だった。
私はもともと胃腸が弱いのでおとなしくアドバイスに従った。まえがきによると著者も胃腸が弱くてしょっちゅう腹をこわすそうだが、とても信じられない。
生の豚肉や血を飲んだり、(誤ってだが)未調理の虫を食べたり、年中現地の人が食べるそのものを摂っていて、胃腸が弱い人が生き続けているのだから、結局は慣れというものなのだろうか。

本書の中で、どんなにおカネをもらってもこれだけは食べたくないと思ったのは、韓国のエイを発酵させた「ホンオ」(ずっと掃除されていない小便器のようなアンモニア臭がするそうだ)と中国の胎盤餃子(彼の国では胎盤は万能の?特効薬とされている。もちろん人間の胎盤)。

逆に食べてみたいと思ったのは、日本(石川)のフグの卵巣のぬか漬けとアマゾンのピラルク、チョウザメの炭火焼。

著者は長期間ミャンマーの奥地のワ族の村に滞在していたが、この村では3食とも菜っ葉がはいった塩味の雑炊(モイック)のみの食事とのこと。婚礼の時などに家畜をつぶして食べるそうなのだが、その時も肉を雑炊に入れて食べるそうで、著者は、たまには焼肉にしたらいいんじゃないかと、お別れの時に焼肉料理をふるまってみたら、不評だったそうである。
考えてみると、お米自体は味がしないが、日本人ならちょっと塩をまぶしたオニギリを嫌い人がいないのと似たようなもので、人間の味覚は経験によってのみ定義される、ということだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弓組寄騎仁義

2022年06月11日 | 本の感想
弓組寄騎仁義(井原忠政 双葉文庫)

植田茂兵衛は家康の先手弓組:松平善四郎の寄騎(副長格)に出世する。
三方原で信長の意向に反して野戦にでたために家康は不興を買っていた。
武田勝頼が長篠城を囲むが、信長は家康に自重を求めた。やがて長篠城から救援を求める使い(鳥居強右衛門)が来て、信長も西方の情勢が落ち着いたことから、信長家康同盟軍は設楽原で決戦を企図する・・・という話。

主人公は茂兵衛なのだが、本巻の読みどころは彼とあまり関係ない次の2つ。
①信長と家臣団にはさまれて悩む家康
②鳥居強右衛門のエピソード

信長に命じられれば(後に最愛の息子すら殺してしまうほど)盲信的に従ってしまったかのような家康の苦悩が(本人に語らせるのではなくて)家来の目で描いたところがよかった。

ただの足軽にすぎないのに、「とりい」の変換候補に出てくるほど(歴史読み物上)有名な鳥居強右衛門のエピソードは、有名なだけに後世いろいろと脚色されているが、本書はわりとリアルな感じに描かれていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする