蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

帝国の弔砲

2022年06月07日 | 本の感想
帝国の弔砲(佐々木譲 文藝春秋)

明治28年、小篠登志矢の父は沿海州に開拓農民として入植する。露日戦争が始まり日系の入植民は収容所で拘束される。
戦争終結後、解放された登志矢は鉄道技師となるが第一次世界大戦のために徴兵され西部の戦線に赴く。戦線の奥にいたオーストリア大公を拉致する特殊作戦などを経験して兵士としてのキャリアを積むが・・・という話。

「抵抗都市」に続く、日露戦争で日本が敗れたという設定のシリーズの第二弾。
なのだが、「抵抗都市」とは舞台も登場人物も全く異なる話。
沿海州への入植や戦争中の強制収容といった事件、あるいは、滑空艇(エンジン付グライダー?)や浮揚船(水中翼船?)といった兵器とかが史実に基づくものなのか、それともシリーズ内でのフィクションなのかが、本作を読んだだけではわからない。
こうした史実と創作の間で微妙に揺れ動く世界観の構築が狙いなのだろうか?

「抵抗都市」では、露日戦争後ロシアの属国となった日本で、東京の大通りにロシアの人名がつけられている等の設定が魅力的で、ダイナミックな歴史改変モノのシリーズになるのかと思っていたが、本作では普通に?ロシア革命が起きて、日本はロシアの軛を逃れてしまう(シベリア出兵とかしてる)など、実際の歴史に戻ってしまったかのように見えて、ちょっと残念だった。
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